暗黒迷宮
その迷宮はまだ誰も抜け出たものはいない。
そう、出口と思って走ると何故か元いた場所に戻ってくるのだ。
途中様々な恐怖を連れて…。
「なんだよ。まだ出られないのか?」
「そんなこと言ったってな。」
僕と友人は潰れた遊園地の中に入っていた。
その中にある迷宮は心霊マニアには有名だったのだ。一度入ったら出られないと…。
冗談半分で入ったやつが何時間経っても出てくることが無く、消えてしまったことがあった。
それはもう大騒ぎになった。
新聞にも大きく報じられ、【心霊迷宮】とさえ言われた。命知らずはいない。皆怖がって入るのをやめたほどだ。
10人の救援隊が結成され、紐を頼りに中に入ったこともあったのだが、戻ってきたのは紐だけだったという恐怖の場所なのだ。
それなのに今僕たちはここにいる。
僕は友達に連れられて、そういう場所ではないと言われて入った場所だったのに。
騙されたと怒ったが、今はもう何としても出口から出るという強い目的を持って歩いている。
目印になるものもつけて歩いているはずなのに同じ場所をグルグルと歩いている感覚しかなかった。
「なぁ〜、なんかこうグルグル回ってるだけの感じしかしないけど…。」
「……お前もか?」
「な、なんだよ。どうしたらいいんだよ。ったく、お前らについてきた僕が馬鹿だった。ここを出たら2度と一緒には遊ばないぞ!」
「ここを…出られたら…ね。」
引きつる僕を置いて仲間達はどんどんと前を歩いて行く。その後を僕は必死になって追いかけるのだ。まるでそれが最後の命綱のように。
腕時計をちらりと見たが時間はあまり経っていない。そう、ゆっくり過ぎるのだ。まるで時間の感覚が麻痺したかのようだ。
このまま朝になれば出られるんじゃないかと期待していた僕だったが、仲間の1人がボソッとつぶやいた。昼間でも関係ないんだよ。この迷路は。
そう、そうなのだ。
捜索隊が入ったのは昼間の明るい時間帯。迷子になるなんて思わない。だとすると…。
引きつる僕は1人にならないように仲間について行くしかなかった。
迷路なら非常口でもありそうなのだが、この廃墟迷路は…ない。
あったのかもしれないが、廃墟と化した後廃材などで塞がれて出口の役割をなくしているようだ。
そんな時ふと仲間の1人が言った。
「なんか人数増えてね?」
数えてみた。
1人、2人、3人、4人、5人、6人、…11人。
おかしい…。確か10人だったはず。
「だ、誰だよ、何度も数字いうやつ。出てこいよ。」とは言っても誰も出てこない。
皆それぞれがみんなの顔を見ている。
震えだした仲間がいた。
「や、やっぱヤバイよ。ここ。早く出ようよ。」
「それができたらとっくにそうしてるって。出来ないからこうして歩いてるんだろ?」
「ならさ、みんなバラバラになって探さね?その方が早く見つかるかも。」
「お前はアホか?そんな事してもし誰かがいなくなったらどうするんだよ。お前が責任取れるのか?」
「あ、…う〜〜ん。モゴモゴ。」そう言って黙ってしまった。所詮無理なのだ。ここから出られた人間はいない。そうこうしているうちに夜になっていく。
ポタッ、ポタッと雨の音がし出した。
本格的に雨になりそうだ。
傘を持っていないのでみんなびしょ濡れは覚悟した。
その時目の前が一瞬だけ明るくなった気がした。それを見た僕はそこに向かって歩いて行く。その様子を見ていた友達が我先にとついてくる。
それでも1人で動くよりはいいと思いあえて何も言わずにいた。
しかし、どれだけ歩いてもさっきの明かりのそばにはなかなか近づけないでいる。何故?
分からない。それは霊が見せている現象なのか、はたまた幻覚でも見ていたのか…。
しばらくぐるぐると歩いていたが、その光が大きくなってきたように感じた僕は足早に走り出した。それを見ていた仲間達も同じく走り出している。皆ほとんどくっついている状態なのだが、誰も文句を言うものはいなかった。そして…ようやく明かりが見えた。
出口の看板もある。
「やったー!これで出られる。」
皆疲れ切ってはいたが足を止めるものはいなかった。
そこに立っていたのは年老いた老婆だった。
何故こんなところに1人で立っていたのか聞いてみたくなった僕は声を掛けてみた。仲間は「やめとけ。」て言ってたけど興味の方が勝ってしまったから。
そこで話して聞かせてくれたのは…過去のことだった。そもそもこの遊園地、出来たのは今から50年前。
迷路も初めは大したものではなかったそう…。それで当時のオーナーが財産を注ぎ込んで増築してったらしい。今でも頑丈なのはその時のせいかと軽く納得してしまう。
しかし、謎だ…。
何故ただの迷路が心霊迷路と言われるようになったのか?
聞いてみたらやっとわかった。
初めはただ面白おかしく宣伝していただけだったのだが、戦時中この迷路に逃げ込んで入り込み、出られなくなった兵士がいたそう。しかも傷を負った状態だったので助かることなく亡くなったらしい。遺体はその後たまたま見つけた係員によって連絡が行き、軍が引き取って行ったらしい。
それからだ。不可解なことが起きるようになったのは。
迷路の中に入った時、ふと誰かに見られてる感じがしたり、人数が増えたり、人影らしきものがちらりと見えたり…数えだしたらきりがない程だ。
今ではその遊園地も廃墟となり、廃れた迷路が残っている。他にも残っている遊具はあるが、殆どはその場で解体され放置されている。唯一手を入れられなかった迷路はそのままを残していた。
話を聞きお婆さんに礼を言おうとしたが…。
目の前から姿が消えていた。
お婆さんは見た感じ腰が曲がり早く歩けるような感じではなかったが…。
皆不思議な顔をしていたが徐々に引きつった顔に変わっていく。
そう、それは迷路の中だったからだ。
ちょうど中心にみんな立っていた。
雨は止んでいた。
出たと思ったのに出られていなかった。じゃあ、あのお婆さんは?…。
「うわー!!」
僕たちは出られるのか?




