ダイアナの回想2
小鳥のさえずりが聞こえます。
朝です。
両親の話を盗み聞きしてしまってからどうしても寝つけず、こうして朝を迎えてしまいました。
我が家は辺境の伯爵家です。
大した広さもない領地を細細と耕してまいりました。
税を納めたら領地内で食べていくのがやっと、と言った状況でございます。
たまの贅沢に胸を弾ませる。
そんな程度の土地でございます。
しかし、思っていたよりもずっと我が家の状態は悪化しておりました。
どうやら夏に日照り続きだった期間があるために、領地で食べていくにも困る量しか収穫が出来なかったようです。
今までもギリギリで保ってきたのです。
ですから、備蓄を出来るような余裕がある訳もございません。
我が領地は冬を越すのも危うい有り様でございます。
そんな中、とある公爵様から縁談が持ちかけられました。
なんでも何にも口出ししない大人しい伴侶が欲しいらしく、我が家の窮地を聞きつけ、援助をするから聞き分けの良い娘を差し出せ、とのこと。
今までどんなに貧しくとも飢えで領民を死なせずに来たことが誇りである我が家。
しかし今度ばかりは春を迎えることすら怪しい。
そんな中、差し伸べられた救いの手を振り払えるほど伯爵夫妻の心は冷酷ではありません。
たとえ愛しい娘を酷い条件の中、手放すことになろうとも。
心優しい娘なら分かってくれるだろう。
娘1人で、多くの領民の命が助かることを。
彼女の両親が、可能ならば愛しい娘を手放したくなかったことを。
ダイアナには家を継いで貰わなくてはならぬ。
少し若いが姉に勝るとも劣らぬ聡い娘だ。
きっと皆を助けてくれる。
そんな両親の話を聞いてしまった私は叶わぬ恋を昇華させることを決心いたしました。