プロローグ
母は私が生まれて間もなく流行り病で死んだため、思いではない。父はどうしようもない人間で、私が5歳になる頃には800万Gもの借金を抱えており、その全てを私にへと押しつけどこかへと消えた。両親を早くに失った私を親戚が仕方なく預かったが、目つきが悪く不愛想で、社交性が全くなく可愛げのない私を鬱陶しく感じたのだろう。もののひと月で当時孤児院であった山奥の教会にへと私を預けた。
その教会が魔物たちの焼き討ちになったのは9歳の頃である。教会の神父は爪の長い、獣に身体を切り刻まれ大量に血を巻き上げていた。シスターは人間と見抜きもつかない、豚の顔を持つ醜悪で巨体なモンスターに身体を好きなように弄ばれたあと、動かなくなってしまった。私と共に育った他の子供たちは、斬殺、焼殺、刺殺、ありとあらゆる殺され方をして命を散らしていった。恐らく私以外で生き残った子供は一人としていないだろう。
私はその時ちょうど近くを通った屈強の男に助けられ、命からがらその教会を逃げ出した。
私を助けた男は、とてつもなく強かった。私をもちあげた腕はがっしりとしており逞しく、大地を蹴り歩くその足はまるで丸太のように太く、当時下から見た彼はまるで巨人に見えた。彼が一太刀剣を振るえば、空気が裂け魔物は刃に触れてもいないのにも関わらず、その衝撃のみで肉片を散らし、彼が火の魔法を唱えれば敵は骨すら残さず炭となった。
私は人間よりも優れた力を持つ魔物が蔓延るこの世界で生きていくには、強くならなければならないと思った。
故に彼を師として、この世界で一人でも生きていけるよう、あらゆることを学んだ。
生きていくために必要な知識、力を身に着けた私は、彼から独立し、この広い世界を歩いて回った。
ちょうど、それから5年の月日が経った頃であっただろうか。魔王討伐を掲げ旅に出た、百戦錬磨たる強さを誇る勇者が、死んだという話を聞いたのは・・・。