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第9話:二つのソウルイーター

 高校生の魔女狩りなんかいるのか?

 まぁ高校生である俺が言える立場じゃないけどな。

「ここよ」

 ごくごく普通の高校だ。

 こんなところで魔女狩りらと戦ってるなんてうそみたいなぐらい平穏な学校だ。

「それでこれからどうするんだ?生徒でもないのに入れないだろ」

「大丈夫よ。ばれなきゃいいのよ」

 バレなきゃなんでもやっていいのかよ。

 っと俺たちは不法侵入し、その川辺耕介というやつを探した。

 ってか今授業中だろ?クラスとかわからねぇと探すのは至難のわざだぞ。

「あそこにいれば絶対くるわ」

 向かった先は非公式魔術研究会の部室?

「魔術研究会ってなんだよ。こんな堂々と公開していいのかよ」

「研究って書いてるでしょ。それに非公式なんだから許可なんか当然おりてないでしょう」

 でも部員は結構いそうだぞ。

 部員表にも3ページくらいにわたるほどの部員の名前が書かれていた。

「多分耕介が素質のあるやつを引き込んだのね」

 こんなにも素質があるやつがいるものなのか。

「とりあえず耕介が来るまでここにいましょ。いろいろ動き回るのも危ないし」

 それもそうだな。知らないやつに見つかり通報でもされたら、後々ややこしい。


 しばらくしてチャイムがなり、学校から生徒があふれ出してきた。

 その中の一人が俺たちがいる部室のほうへやってきてドアを開けた。

「薫が来てくれたのか、悪いな」

 どうやらこいつが川辺耕介というやつらしい。

 赤髪で額にバンダナを巻いて、髪の毛を尖らせている。

 制服の着方は中途半端でネクタイもゆるみきっていて、いかにも問題児って感じだ。

「こいつは誰だ?新入りか?」

「えぇ、新しく入った陸奥和樹君」

「ども」

 俺は軽く会釈をした。

「足手まといにならないようにだけは頼むぜ」

 この瞬間俺はこいつとは全く馬が合わないと確信した。

「それにしても今日来てくれるとはうれしい限りだぜ」

 っといいながら、耕介はいすに腰をおろした。

「奴らは今日の夜絶対に動く。もし薫らが明日にでも来てたら手遅れだったぜ」

「それはよかったわ」

「手遅れってお前にはこんだけの仲間がいるだろ」

 俺は部員表を耕介に突きつけた。

「あぁ、そいつらはもういねぇ」

 いないってどういうことだ。

 あまりの非現実的な出来事についていけなくて辞めちまったのか?

「和樹、これは本当の戦いなの。命を落とすことだってありうるわ」

「それに今回はそんなのがいなくても十分だ。使えない奴は最初からいないほうがマシだからな」

「だったら何でこいつらを誘ったんだよ?使えるから引き入れたんじゃねえのか?」

「時間稼ぎの捨て駒」

「!」

「さっき言っただろ?使えない奴は最初からいないほうがマシってな。そいつらは使い道があったから引き入れただけだ」

 じゃあこいつら全員もう・・・・死んでいるのか。

 俺は怒りがこみあげてきて、今にもこいつを殴り倒しそうだった。

 そのとき薫が俺の腕をつかんできた。

「人にはいろんなやり方があるの。認めたくなくても、今はそんなことしてる場合じゃないわ」

 っと薫に耳打ちされた。

 怒りで相当腕が震えていたのだろう。

 薫はずっと俺の腕を離そうとしなかった。



 辺りは暗くなり時計の針は9時をさしていた。

 電気もすべて消えていて、学校にはもう人一人残っていないだろう。

 その時、この部屋の外から物音がした。

「ネズミが入り込んできたみたいだな。コソコソした真似しやがって」

 耕介は部屋を飛び出し、物音がしたほうへ走っていった。

「和樹、別行動は危険よ。一緒についてきて」

「あ、あぁ」

 俺は言われるがまま、薫についていった。

「そっちに行ったぞ」

「和樹、上」

 耕介の声が聞こえ、薫の言うとおり上を見ていると誰かが上空を飛んでいた。

「任せろ」


            【ソウルフレイム】


 ソウルイーターからその上空にいる人に向かって、巨大な火の玉がほとばしった。

 やべ、あれほど抜くなと言われたばかりなのに、また抜いちまったが仕方ないか。

 俺たちはその落ちた奴の所へむかった。

「明日香」

「明日香じゃねぇか」

 二人が声を合わせて叫んだ。

「知り合い?」

「私の仲間だった子。こんな所にいるってことはあの人も・・・」

 薫が明日香と呼んだ少女を背負い、部屋のほうへ戻ろうとした。

「ちょっと手当てだけしてから行くわ」

 っと言い残して、薫は部室に入っていった。


「和樹、不意打ちを食らわすぞ。ついてこい」

 その言葉に不意打ちをくらい、薫たちと一緒に残りたかったが名残惜しく、耕介のほうへついていった。

「不意打ちをかけるってそいつらの居場所わかるのか?」

「さっきの女が飛んでいった方向から考えれば大体は見当がつく」

 その明日香が飛んでいった方向は、体育館。

「奴らは絶対にこの中にいるはずだ」

 壁に背を向け、そっと体育館の中をのぞくが誰もいない。

 でも気配はする。

「気づいたか?あの倉庫の中が怪しい」

 確かにこの時間まで学校に残るためには倉庫とかに隠れる必要がある。

 だが俺の気配が感じるのは・・・・

 っと体育館から目を離した瞬間、目の前の手すりの上に青髪の男が立っていた。

「とうとう尻尾を出したな」


             【サーベルレイン】


 剣の雨が俺らに降り注ぎ、俺は中庭の方へ逃げ、耕介は体育館の窓を突き破り、中へと逃げ込んだ。

 やべ、分かれちまった。別行動は危険だっていわれたばっかなのに。

「お前ここでは見ない奴だな。川辺を助けに来たハンターの仲間か」

「そういうお前は魔女狩りか?」

 やばいくらい怖い。今までの魔物退治の時と比べ、かなりの緊張感が走った。

「そこまで知ってるなら話は早い」


              【バースト】


 その男がそう言った瞬間、紫色に輝き姿を消した。

「うしろだ」

「がはっ」

 何が起こったのか全くわからず、背中に激痛が走り、学校の3階まで吹き飛ばされた。

 っく、めちゃくちゃ早ぇ。

 立つ暇も与えられず、その男は俺の足を掴み、思い切り回した後、外へ振り飛ばした。

 痛くて言葉もでねぇ。ってか痛いだけじゃ表現ができないほどの激痛が体中に走っている。

 そして、その男は俺の目の前に立ち、しゃがみこんだ。

「魔女狩りハンターから手を引け。そしたら命だけは助けてやる」

 ありがたい。命あってのものだからな。

 薫には悪いが・・・

 その時、体育館のほうから戦いの音が聞こえ、部室のほうからも爆音が聞こえた。

 こういうことって、前にも・・・そうだ、初めて猛と戦った時だ。

「命を粗末にするもんじゃない。魔女狩りから手を引けば助けてやるって言ってるだろ」

 あんな情けない想いをするのはもうごめんだ。

「寝言は寝てから言え。あんなの毎朝猛の起こし方に比べたら痛くもかゆくもねぇぜ」

 フラフラになりながら立ち上がり、ソウルイーターを抜いた。

 この時ぐらいはいいよな。切り札を使う前に死んだら意味ねぇからな。

「本当にハンターは頭が固い奴ばっかだな」


              【裁き】


 待て、なんであいつがその技を。

 よく見ると右手にソウルイーターの紋章が宿っていた。

 バカな、それは姉さんが宿してるはずなのに。

           

            【ソウルドレイン】


 とりあえず、あいつの裁きが発動するまえに吸収しといた。

 ソウルイーター同士だと発動する前に吸収されるから、使っても無意味だ。

 っということは俺のソウルイーターではソウルイーターを宿しているあいつを傷つけるのは不可能ってわけだ。

「お前なぜソウルドレインを使える」

「その同じ質問をお前に返してやる。なぜお前がソウルイーターを宿してる」

 そのあとお互い一言も質問の問いに答えず、そいつと俺は対峙しあい、しばしの沈黙が続いた。

「ひとつだけ聞かせてくれ。お前の名前はなんだ」

「人に聞くならまず自分から名乗れ」

「悪い。俺は鬼庭隼人(おににわはやと)

「陸奥和樹だ」

「そうか、また会えるといいな」

 そう言ってそいつは逃げていった。

 普通なら追うのだが、今の俺にとってはあいつは強すぎる。

「鬼庭隼人か。なぜ陸奥の血を引いてないやつがソウルイーターを・・・」

「おい和樹、無事か」

 耕介が体育館からボロボロの姿で出てきた。

 まぁ、俺のほうがひどいけど。

「なんとかな」

「薫が心配だ。早く行くぞ」

 っと部室へ急いだ。


「がんばったんだけどね。取られちゃった」

 部室は見事に崩壊していて、薫はほぼ無傷だったが、捕らえていた明日香という少女は奪い返されたらしい。

「まぁ、薫が無事でなによりだ」

 それよりもどうするんだこれ?俺の学校もほったらかしにしてきたけど、ここはやばいだろ。

「今度は本格的にぶつかるべきね。穂多琉達にも救援を呼ぶわ」

 薫はもう次の作戦を立てている。

 後始末はほったらかしの傾向に近いだろう。

「っで明日は俺達から仕掛けるってことだな」

 耕介もやる気満々だ。

 もしかしたら穂多琉にあの隼人って奴のことを聞けば何か教えてくれるかもな。

「そのためには指令変更の手続きをしないとね」

「それ俺に行かせてくれないか?」

 こんな所で待っておけなかった。

 あの隼人が持っていたソウルイーターの紋章、それと穂多琉があの時行っていた『俺が例外の一人』という言葉、なにかが繋がっている気がした。

「これは直属に連盟に組してる人しかいけないの」

 そういえば、俺は連盟にははいっていなかったんだっけな。

「委任状を使えばいいだろ。俺にもこいつより、薫に残っていてほしいし」

 たまにはこいつもいいこと言うな。

「そうね、じゃあこれを穂多琉に渡して、多分あなた一人じゃ手続き済ませれないと思うから」

 っとA4の茶封筒をわたされ、ずっしりとした重さに少し驚いた。

 その後、2人に夜が明けてから行けといわれたが、その時間ももったいなかったから、すぐにその高校を後にした。




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