第3話:北条薫との出会い
今日はやけに気が重い。
本当は休みたかったが、昨日の夜、家に先生から電話があったらしい。
まぁ学校に行っても言われることは大体わかってるけどな。
っへ、俺と喋ると呪われるか。
これでますます俺の周りには誰も寄ってこねぇな。
学校近くになると、生徒の数が増えていき、妙に視線が痛い。
しかも所々俺の名前が聞こえるのが嫌になる。
俺は学校までの道のりを早歩き行った。
ここまで事が進むともう誰も何もやってこないと思っていたが甘かったか。
靴箱に人殺しやら地獄に帰れやら書かれている。
ついで言うと、上靴にもそう言うことが書かれていた。
「帰るところあるなら、俺も帰りたいぜ」
教室に向かう途中、昨日の件を新聞部が大きくとりあげ、掲示板にでっかく掲載していた。
全治6ヶ月の重症、殺した動機は虐めが原因、過去にも前科あり。
などなど色んな事がデタラメに書かれていた。
「重症だったら死んでないだろ。何が殺した動機だ」
しかも昨日提出した反省文も載ってやがる。
先生もグルってことか。
普通反省文とか生徒には出回らないだろ。
まぁ、これで退学とかになったら、姉ちゃん探しの旅にでも出るか。
こんな町魔物に滅ぼされろ。
その場を立ち去ろうとした時、誰かに呼び止められた。
「あなた、こんなこと書かれて悔しくないの?」
相手は女だ。
俺が振り返って返事をすれば、あの女もあいつと同じ末路になる。
俺は無視をして、教室まで足を進めようとした。
「あなたのことよ。聞こえないの?」
その女は俺の肩に手をかけ、呼び止めた。
「俺に触れると死ぬぞ?」
女など少し脅してやれば、すぐに退くものだと思った。
「何それ?そんなの私の知ったことじゃないわ」
ただのアホなのか、それとも肝っ玉の据わった女なのか、とにかくこいつは全然俺のことを恐れていなかった。
それに制服のリボンが青ってことは、この人2年生か。
因みに1年は赤で3年は黄色だ。
しかも今時珍しい眼鏡っ子ときた。
「それでどうなの悔しくないの?」
「もう慣れた」
こういう正義感が強い奴は嫌いだ。
何かと首を突っ込んできやがる。
俺はそいつの手を払いのけて、自分の教室に向かった。
こんな所にも新聞部の新聞を置いとくか。
俺の机の上に1部、後ろと前の黒板に1部づつ張られている。
「今、気づいたが、あいつって捨て駒だったとか?」
昨日の奴が黒幕だとしたら、もうこんな事は起きないはずだ。
あいつがいなくなっても尚、こんなことが続くってことは、まだ親玉は残ってるってわけか。
「おい、陸奥。お前は今から生徒指導室に来い」
ドアから担任が俺に向かって叫び、そそくさと消えていった。
そんなに俺に話し掛けるのが嫌なら、誰かに頼めよ。
でも授業サボれるし、別にいいか。
もしかしたら停学処分とかで帰れるかもしれないしな。
「お前がやったんだろ?」
先生の第一声はそれだった。
生徒指導室で俺一人に対して、6人の先生が俺を囲んで、まるで拷問みたいな感じだ。
「やってません」
「しらばっくれるな。生徒一同口をそろえてお前がやったと言ってるんだ」
それもおかしな話だろ、ちょっとはそっちを疑えよ。
「やってませんって」
こういうことが何百回も延々とループし、昼休みが来た。
「とりあえず、今日はもう帰れ。お前は明日から一週間停学処分だ」
そう言い残して、ゾロゾロと生徒指導室から出て行った。
一人じゃ何もできないくせにえらそうに・・・・。
まぁ、これで帰れるし、夜まで休もう。
昨日はロクに眠れなかったし、もう誰がやったとか関係ないね。
「お疲れ様」
また朝の女だ。
どうやら生徒指導室の前でずっと待ってたみたいだ。
なんでこいつは俺に関わってくるんだよ。
「厄介なことになる内に消えろ。俺の噂知らないわけじゃないだろ」
朝と同じような文句を言い、立ち去ろうとしたが
「ううん。知らないよ。だって私この前転校してきたばかりだもの」
この前?今はもう11月下旬だぞ。
なんでこんな中途半端な時期に転校してきてるんだ、この女。
「ねぇ、ちょっと付き合ってくれない?どうせ今から帰る予定なんでしょ?お昼ぐらい付き合ってよ」
まぁ、帰っても寝るだけだし、別にいいか。
「食堂でいいか?」
「ううん。君がいつも食べてる校舎裏でいいよ」
!
こいつなんで俺がいつも校舎裏にいること知ってるんだ?
まさか今回の黒幕がこいつとか?
今までまったく気にしてなかったが、少しは警戒したほうがいいな。
「はい、今日は私のおごりでいいよ。私から誘ったしね」
そう言って、パン3つと牛乳が入った、袋を手渡された。
ここはありがたく頂いておこう。
毒が入ってたら入ってたで、こいつも道連れにして死んでやる。
俺はいつもの場所に腰をおろし、彼女は俺の右隣に座った。
「何か話があるんだろ?言っとくがこういうのは昔からあって、今更止めようがないぞ」
「ん?止める気なんかさらさらないわよ」
この虐めを止めるのが目的じゃないというと、やっぱ黒幕はこいつか?
「何?その疑い深い目。言っとくけど私はあなたの件には全くの無関係よ。話があるのは別の件」
別の件?まさかここで愛の告白とか?いや、それはねぇな。
第一シチュエーションが悪すぎる。
しかも会ってまだ間もないし名前も知らない・・・・あ。
「お前名前なんて言うんだ?まだ聞いてないけど」
「あれ?言ってなかったっけ?私の名前は北条薫。よろしくね」
そう言って握手を求められたが、俺はそれを無視した。
「さっさと用件を言え。さっさと言わねぇと帰るぞ」
もらったパンを一気に口に詰め込み、牛乳で流し込んだ。
「せっかちね。まぁいいわ、単刀直入に言うとあなた登用しにきたの」
「登用ってなんだよ」
「う〜んどこから話せばいいかな。私達はね、今ある組織と戦ってるの。でもまだ私達はまだ微弱でその組織に対抗できる力を持ち得ていないの。
あなたのその戦闘能力と今まで耐え抜いた精神力は称賛に値するわ。貴方がもし私達に協力してくれるなら、私達も全力で貴方の魔物退治に協力するわ。
それに貴方は近々殺されるわ。気づいてないと思うから教えるけど、目つけられてるわよ」
おいおい、聞きたいこと山ほどあるからその辺で区切ってくれ、っと心の中で呟いたら
「何か意義を申し出たそうな顔ね」
むこうから聞いてきてくれた。
「聞きたいことは全部で4つある。1つ、北条がが戦ってる組織っでどんな組織なんだ?」
「魔女狩り。名前の通り魔法使いを狩る組織よ」
魔法使いを狩る?その前に魔法使いなんかいるのか疑うところだ。
「じゃあ2つ目、その魔女狩りと戦っている北条達のグループ名はなんだ?まさかお前一人ってわけじゃないだろ?」
「私達が属する組織は反魔女狩り連盟。その特殊部隊の魔女狩りハンターよ。クラス的にはS〜Fまで分かれているわ。
因みに私はBランク。貴方の腕だったらDかEには入るはずよ」
はぁ?俺がお前より弱いっていうわけか?納得いかねえな。
ここはそんな誘いを断って、帰りたかったが、謎がまだふたつあるから、怒りを納め平常心を保った。
「3つ目、俺が目をつけられてるってどういうことだ?しかも近々殺されるって何故わかる。
「え?本気で聞いてるの?」
マジでビックリされた。
そんな殺されるって気配全くしなかったし、ちょっとエスカレートしてきたかな?ってぐらいだし。
「貴方が毎晩魔物退治するのを嫌がってる人がいるの。その人が貴方の件の黒幕と言っても過言じゃないわ」
「待てよ。魔物が現れる前から俺は悪魔の子って呼ばれてたぜ」
「最初は追い出そうと思っただけで、害がないと判断し、そのままほっておいたんでしょ。でも現にそいつは昨日行動を起こしたでしょ」
「そいつって・・・黒幕の正体を知ってるのか?」
「正体まではわからないけど、大体検討はつくわ」
検討ぐらいなら俺もついてる。
「じゃあ最後だ。お前は俺を今まで監視してたのか?昼休み、毎日俺がここにいるのも知っているし、夜魔物退治をしているのも知っていた。
お前がここに転校してきたのも俺をその反魔女狩り連盟に誘うためか?」
「ここに転校してきたのはたまたまだけど、監視してたのは認めるわ。だからこの前から、私もちょっと魔物退治手伝ってあげてたでしょ?」
通りで魔物の数が減ってたわけだ。
「どぉ?悪くない話でしょ?貴方の地位も保障するし、魔物の件もすぐに解決できるわ」
「俺だけだったら無理ってみたいな言い方だな」
「ええ無理よ。あなたの今の腕じゃあせいぜい悪あがきしてる程度よ」
頭きた。人を登用するとか言っといて、俺の腕じゃあこの町は救えねぇだと?
「よし、わかった。俺一人でも全て解決できる所を見せてやるよ」
「何いってるの?そんなこと不可能に決まってるんだから・・・・」
「うるせぇ、今日中に魔物の件は決着をつけてやるぜ」
っと北条に指を指しながら啖呵を切った後、俺は学校を後にした。