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第13話:薫奪還

何処か身を隠す所がないか、探してるうちに無意識に非公式魔術研究会があった場所に来てしまった。

 この高校に来て一番最初に来た場所。

「薫と耕介はどこいっちまったんだよ」

 燃え落ちた痕跡ぐらい残っていてもおかしくないのだが。

 建物だけが綺麗さっぱりなくなってることを、改めて再確認した。

「お前も魔女狩りハンターの一員か」

 なっ・・・・。

 背後から知らない男が俺に話し掛けてきた。

 でも魔女狩りハンターのことを知ってるってことは、こいつも関係者だ。

「だったらどうする?」

「っふ、ついて来い、お前の仲間に会わしてやる」

 仲間って言ったら、薫か耕介のことか

 でも明らか罠ってまるわかりなんだが、ついていっていいものなのか。

「そんな警戒するな。俺たちでもちゃんと場ぐらいわきまえる」

 敵の言う事など信じられるはずがない。

 でもこのままずっとこの場にいても同じだ。

 俺は罠だと分かっていても、そいつについていくことにした。


「1つ忠告しておいてやろう」

 足の動きは止めず、急にそいつが口を開いた。

「ほいほいと敵の言う事聞くもんじゃねぇぞ」

 やっぱり罠か。

 俺はそいつとの距離を空け、戦闘態勢に入った。

「忠告だって言っただろ。今回は罠じゃない。本当に仲間に会わしてやる」

 歩みを止め、振り向かずそいつは喋りつづけた。

「信じられるか。それに仲間って誰のことを言ってるんだよ」

「北条薫。今俺の支部で捕らわれの身となっている」

「だから何だって言うんだ。いちいち俺に会わさず解放すればいいじゃねぇか」

「そのつもりだ。お前に直に引き取ってもらうために、ついてきてもらっているんだ。

別に信じられないのだったら、そのまま帰ってもいいんだぜ」

 そう言って、そいつはまた歩き始めた。

 俺もまたそいつに小走りで近づき、やや後ろからついていくことにした。

「でも勝手に解放していいのか?」

「俺はここの支部長官だ。捕らえた敵を殺そうが逃がそうが俺の勝手だ。

まぁ、逃がせとうるさい仲間がいてな。殺さず今まで置いといたわけだ」

「支部長官ってお前、烏丸鋭霧か?」

「あぁ、そうだ。知らなかったのか?てっきり知ってると思ってたぜ、陸奥和樹」

 こいつ俺の名を・・・・。

「本部はお前を捕らえたがっているが、まだこっちには命令が出てないから見逃しといてやるよ」

 ますます意味がわからない。

 俺を捕らえたがっているって、俺は魔法使いでもなんでもないんだぞ。

「ここだ。いくらお前でも敵の拠点に一人で入りそうにないから連れてきてやるよ」

 っと入り口で待たされた。

「ここが魔女狩り南支部」

 町から5キロぐらい離れた所に、高々と立っている古びた塔。

 ここからだと見えないが、最上階まで登れば町が見えそうだ。


「一体どういうつもり?」

 奥から薫の声が響いてきた。

「だからお前を解放するって言ってるだろ」

 そう言って、まだ手首に縄が縛られたまま、俺のところに突きつけてきた。

「それじゃあそいつは返すぜ」

 その一言だけ言い、烏丸は塔の中に入って行った。

「薫、大丈夫か?」

 俺はとりあえず、薫の手首に縛られている縄をほどいた。

「一体何が目的なの?」

「え?」

「魔女狩りよ。私を解放する意味がわからない。ちゃんと説明してよね」

 突然薫は立ち上がり、塔に向かって叫びだした。

「こんなことして、そっちには全く得なことがないじゃない。むしろ損のほうが大きいんじゃない?」

「薫、別にいいじゃないか。薫が戻ってきたことこっちにとっては嬉しいことなんだしさ」

「納得いかないの」

 薫が小さな声で呟いた。

「納得いかないのよ。何も知らずにいいように踊らされるのが」

 いいように踊らされるって何を言ってるんだ?

 俺がいない間に何かあったのか?

「魔女狩りにはかなりの策士がいるわ。それだけは和樹も覚えておいて」

 そう言って、薫はスタスタと町のほうへ歩き出した。

 確かに無条件で薫を釈放するのもおかしいが、これにどんな意味があるのか今の俺には全くわからなかった。



「お〜坊主探したぞ。薫も一緒か。耕介はどうした?」

 町に入った途端、猛と出くわし、肩に手を回された。

「そのことで話があるの。後は誰が来ているの」

「俺たちAクラス全員勢ぞろいだぜ。そこの空家を使わして貰ってる」

 っと猛が指を指した。

 家がいっぱい並んでいて、どれかわからなかったが、よく見ると美咲が手を振ってくれてたから辛うじてわかった。

 俺たちはその空家に入り、とりあえず薫の帰りを祝い、そのまま気持ちよく夜を明かすはずだった。

「みんなに話しておきたいことがあるの」

 薫が急に険しい顔になり、皆をテーブルを囲むように椅子に座った。

「穂多琉、急いで本部に戻って、軍を借りてきて。できるだけ全軍を率いてきてちょうだい」

「わかった」

 穂多琉はその言葉だけで、全てを察したのか、すぐに家を出て行った。

 流石は穂多琉、話の一だけ聞いて十まで理解したらしい。

 当然俺たちは何で軍など必要なのかわからなかった。

「さて、まずあなたたちにはどこから話せばいいかしら」

 っとわざとらしく聞いてきた。

「じゃあ俺がいなくなってから」

「耕介はなんでいないんだ?」

 俺と猛が同時に喋った。

「それじゃあ和樹が援軍を呼びに行った後から話すね」

 っと重たそうに口を開いた。




「とりあえず、今日は家に帰るぞ。ここに残っていても仕方ない」

 耕介が、座っている薫に手を差し伸べ立ち上がらせた。

「和樹たちが戻ってくるまでは、私達は待機ね」

「そのことだが、俺に1つ策がある」

 っと耕介は得意げに言い、学校を出て行った。

「策って、また無茶な策じゃないでしょうね」

 耕介の後を追い、薫は耕介の横に並びながら歩いた。

「ごく普通の策だ。急いで本部には半日、戻ってくる時間をいれても1日だ。

本部からの許可がでるまでさほど時間がかからん」

「何が言いたいの」

 遠まわしに言う、耕介の策に薫は全く理解できなかった。

「明後日、魔女狩り南支部に夜討ちをかける」

「なんでそんな急ぐ必要があるの?援軍が来てからでもいいじゃない」

 あまりにも危険すぎる策だったので薫は必死にそれを止めようとした。

 たった2人で魔女狩り支部を落とすなど、無謀にも程があるからだ。

 例え援軍が来ると分かっていたとしても、幹部や神兵が出てきたら、1時間もてばいいほうだ。

「何も真正面から突撃するわけではない。援軍がきたらすぐに中に入れるように、入り口を開放しておくだけだ。

そうすれば、うまく事は運び、魔女狩りは統率がとれないまま、南支部は崩壊ってわけだ」

「そんなうまくいくかな」

 薫が不安げに言って、耕介は家の前で振り返った。

「まぁ、見てろって。不可能を可能に変えるってのが男ってもんだぜ」

 っと誇らしげに言い、家の中に入って行った。





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