第11話:連盟本部救援戦【後半】
【氷点】
【ソウルイーター・誓い】
激戦とはいかないが、数太刀交えた後は技の出し合いになり、不利な状況に追い込まれた。
剣士のくせに、遠距離攻撃をバンバン放つとか反則だろ。
「守ってばかりだとやられるわよ」
そんなこといわれなくてもわかっているつもりだ。
【ソウルイーター・裁き】
和の頭上に円を描くように8本のソウルイーターが現れ、一直線に貫く・・・はずだったが
貫く前にすべてのソウルイーターを叩き落した。
ってか叩き落すとかありえない。
「あなたにはまだこの雪ウサギの能力を見切れてないのね」
雪ウサギとは和の左手に握られている刀だ。
確かに雪月花の能力はわかったが、もうひとつの刀の能力は未だわからない。
名刀と呼ばれるからにはそれなりの能力があるはずだ。
それを見切れなければ確実に負ける。
「もっと近づかなきゃ、わからないわよ」
何も考えなしで突っ込んでも、返り討ちにあうだけだ。
でもそれだと・・・・
っち、考えるのは性にあわねぇ。
「うおおおぉぉぉ」
「これが雪ウサギの能力よ」
っと俺の頬に雪ウサギがかすめた。
「い?」
よく見ると、雪ウサギから青いオーラが発していた。
「別に傷つける必要はないんだけど、この波動に触れたものは、動きが鈍くなるの。当然人以外の動きも鈍らせることができるわ」
これでさっきの俺の『裁き』のスピードを殺して、叩き落したってワケか。
和が俺の首筋に雪ウサギを当ててきた。
今、刀を引かれれば、俺は即死だろう。
しかもこの鈍い動きが取れることがない。
ただ鈍いだけで、抵抗はできるものの、速度が全くないため、相手には蚊が止まったぐらいの感覚しかない。
この状況を打破できる力は俺には残ってないってわけだ。
「うおおおおおぉぉぉぉ」
信徒を自慢の十文字槍でなぎ払いながら、猛が助けに来た。
「新手ね」
和は2度俺に蹴りを入れて、標的を猛に変えた。
俺はその蹴りにダメージはほとんどなく、ただ突っ立っているだけだった。
最初はどういうことかわからなかったが、数秒後その意味がわかった。
雪ウサギの能力が消えた途端、吹き飛ばされた。
さっきのダメージが今まで蓄積されて、さっき開放されたってわけか。
「隙あり」
俺が倒れている間に信徒が一斉にかかってきた。
「雑魚相手にやられる俺じゃねぇよ」
その場を一旦離脱し、包囲網から抜けた瞬間、信徒を各個撃破していった。
素手でもなかなかできるものだ。
さっきの戦いの中で、たまたま見つけたソウルイーターを拾い、猛の援護に向かった。
「どけ貴様」
「っな」
長い赤髪を後ろに束ねた3刀流の男がすごい勢いで俺に襲い掛かってきた。
【漣】
見えない斬撃がすごいスピードで襲い掛かってきた。
「太刀筋をしっかり見ろ」
どこかからおじいさんっぽい声が響いた。
太刀筋なんか見ても・・・・そうか軌道か。
今まで避けていた斬撃を次は叩き落そうと身構えた時、一緒にそいつも突っ込んできた。
やばい、このままじゃ、たたき落とせたとしても、あの男に追撃されやられる。
避けてもあの男が持ってる三本中一本はすごいリーチが長くて、避けきれない。
こうなったら・・・
「!!!」
飛んでくる斬撃をわざと受け、その男の攻撃を全力で防いだ。
「よくやった、あとは任せろ」
白ひげ胸まで伸び、白い短髪の老人が横から赤髪の男に切りかかり、逃げる男を追撃していった。
「あの声、さっき俺にアドバイスしてくれた人・・・・」
「和樹、私達の勝利よ」
穂多琉が血のりがべっとりとついた鎌を肩に乗せ、俺に近づいてきた。
周りを見ると魔女狩りは退却し始め、大将の武田毅を始め、副将の相馬和も足利夏輝の姿もなかった。
「坊主よくやった。俺たちの勝利だ」
猛が勢いよく、俺の肩に乗っかかってきた。
「そうか、小僧もハンターの一人だったか」
さっきの老人が俺に話しかけてきた。
その老人を見て、猛は頭を深く下げた。
「えぇ、未来の鍵を担う子よ」
穂多琉がその老人に親しく話しかけた。
「この老人誰だ」
「英雄王を知らんのか。この方は英雄王足立謙一様だ」
猛がやや怒り気味でそう言い、無理矢理俺の頭を下げさせた。
この人が百戦錬磨の英雄王か。
確かに強そうだが、威厳とかが全くないやさしそうなおじさんって感じだ。
かなりの重装備をしているが・・・・
このあと、その英雄王の進言で俺たちは王から予想外の褒美をもらい、居室で一息ついた。
「今からは無理よ」
そして今、その居室のリビングで俺と穂多琉は対峙していた。
今すぐ薫を助けに行きたいのが俺の意見だ。
でも穂多琉は明日にしろ聞かない。
俺だけでも今すぐ、薫のところに行きたいが俺だけ行っても意味がない。
「坊主、半日早く着こうが着くまいがそんな変わらないって」
真ん中にいた、猛が仲介してきた。
「今は皆さん早く休むことが先決です。こんな言い争いしてないで、明日に備えてもう寝ましょ」
猛と一緒に美咲も俺たちの真ん中に立った。
「和樹の気持ちもわからなくもない。でも今私達ではあまり戦力にならない」
そういい残して、穂多琉は自分の部屋に戻っていった。
「あぁ、見えてもあいつ疲れてるんだぜ。表には全く見せねぇけどな」
俺の肩を叩き、猛も自分の部屋に戻っていった。
「すいません。私の治癒魔法でも傷は治せても疲労までは・・・」
「いや、美咲のせいじゃねぇよ」
そう言って俺も自分の部屋に戻った。
「鬼庭隼人、支部の神兵か」
部屋に戻った俺は、魔女狩りの上級クラスのリストを見ていた。
「相馬和、こいつも支部の神兵か。支部の神兵であの強さとかありえないだろ」
「足利夏輝、穂多琉と戦った相手だけど倒せたのか?穂多琉の鎌にはすごい血がついていたけど」
「この赤髪・・・・武田毅、支部長官。通りで強かったわけだ。英雄王が助けに来てくれなかったら確実に死んでたな」
「光明寺大和、魔女狩りの中で1,2を争うほどの強さ。そんな強そうに見えなかったんだけどな」
俺はリストを閉じ布団の上に寝転がった。
そういえば、音葉達は今はどこにいるんだろ。
あの3人に会うために入ったっていうのに、今は魔女狩りを潰すため・・・・。
いや、最初はお姉ちゃんを探すためが目的。
その手がかりはあの鬼庭隼人が。
とにかく今日は明日に備えて休もう。
俺はそう考え、眠りに着いた。