第10話;連盟本部救援戦【前半】
薫たちの任務の救援を頼みに来た和樹だが、反魔女狩り連盟本部でも大変なことがおきていた。
俺たちの居室に戻る際には必ず連盟の本部を通らないといけないのだが、その本部から戦火が上がっていた。
本部に急襲をかけるのは魔女狩りしか考えられない。
「救援を呼びに来たのに、これじゃあ救援所じゃねぇな」
本部を見渡せる丘の上で佇みながら考えていた。
俺も加勢したい所だが、本部は包囲されていて、既に戦いは中で行われていた。
背後をつくにしても、俺一人じゃ飛んで火にいる夏の虫状態で意味がない。
「中と連絡をとれたらなんとかなりそうなんだけど」
っと周囲を見渡すけど、何もない。
抜け道とか本部にはあるはずないだろうし、例えあったとしても俺が知らなきゃ意味はない。
こうなったら残った敵を俺のほうにひきつけるしかないだろう。
「待ちなさい」
ソウルフレイムを敵の背後から放つため、チャージしていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「穂多琉、なんでこんな所にいるんだ」
「和樹か薫のどちらかが救援を求めにくるんじゃないかと思ってね」
なんでもお見通しってわけか。
「でもいいのか?穂多琉が抜けたら、本部のほうも厳しいんじゃないのか?」
「だから今から追い払うのよ」
「誰が」
「私と和樹」
無謀にも程がある。
向こうは本部全体を包囲するほどの兵がいるのに、こっちは2人じゃ殺されにいくようなものだ。
「麻生様、準備が整いました」
知らない鎧を来たおっさんが、俺たちの前に敬礼してきた。
「誰だこいつ」
「連盟長から預かった、兵長さんと500人の兵士よ」
どっからわいてきたんだこいつら。
「本部からここに抜けれる抜け道があるのよ。外から中には入れないようになってるけどね」
やっぱりどこでもそういう抜け道があるんだな。
でも500人じゃ全然足りないだろ。
「私達で補えばいい。さぁ作戦会議も兼ねて、陣営の中に入りましょ」
中はテントだらけで、1つだけふた周りぐらいでかいテントがあった。
多分大将用だろ。
俺の予想通り、穂多琉とその兵長はでっかいテントの中に入って行き、俺もその中に入った。
中には椅子と机だけと言ういたってシンプルだ。
まぁ長居はしないんだし、十分だろ。
っと穂多琉は上座に座り、俺と兵長のおっさんは下座に座った。
「和樹にはまだ話してないから最初から説明するわ」
っと本部周辺の地図を机に広げて、今回の作戦を話し始めた。
「敵の数はおよそ1万。そのうち中に入ってきてるのは1000〜2000人。
将は誰一人出陣してきてないから被害はまだ少ないわ。因みに敵の大将は武田毅よ。副将は足利夏樹と相馬和。
3人とも相当な腕の剣士よ。今分かってる敵の情報はこれだけ。何か質問は?」
「こっちの兵はどのくらいなんだ?」
「本部の中に5000人弱、そして我ら500人だ。しかし本部にはあのお方がおられるから大丈夫だ」
穂多琉に聞いているのに、兵長がしゃしゃり出てきた。
ってかあのお方で誰だ。
「英雄王で有名の足立謙一様よ。あの人は百戦錬磨で負け知らずの男」
そんな奴がいれば一人で全員相手できるんじゃねぇか?
まぁそんな危ないことしねぇよな。
「歳が70近いのが問題だけどね」
そんな歳でよく頑張るものだ。
「話がそれたけど今回の作戦の説明をするわね。今日の夜敵軍に夜襲をかけ、本部の兵と共に挟み撃ちにする」
「挟み撃ちってこっちは500しかいねぇのに、挟み撃ちもクソもねぇぞ」
「不足分は私達で補います」
そんなに俺の力を期待するな。
その前にこの兵長の力がどれほどなのかが疑わしい。
「っということで質問は?ないわね?それじゃあ時間まで待機」
その言葉でその場は解散したが、俺は穂多琉を追った。
あのことを聞くために。
「穂多琉」
本部を見渡せる丘で佇んでいる穂多琉に声をかけた。
「和樹か。なんだ?薫たちのことか?」
「それもあるが、ソウルイーターのことをもう少し知りたい」
穂多琉の横に立ち、目をあわさずお互い本部と敵陣を眺めながら話した。
「そのことは全て話したはずだけど」
「いや、俺が例外っていう話は途中で終わっている」
「あれは今はまだ話す機会ではない」
こいつは一体何を知ってるんだ?
それを知れば何かが変わるとでもいうのか?
まぁ、もう1つ聞きたいことがあるし、このことはまた今度にしよう。
「あと、ソウルイーターの紋章を持ってる奴に会った」
「そうか」
あまりにも素っ気無い返事が返ってきた。
「そいつは俺の兄弟でも従兄弟でもなんでもないはずなのに、何でソウルイーターが宿っている?
それにあの紋章は姉ちゃんの物だったはずだ」
「・・・・・」
わからなかったらだんまりか。
「もういい。自分で調べる。この戦いが終わったら、俺たちのほうも手伝ってくれよ」
そう言い残し、去ろうとした時
「その紋章を宿している奴は、お前の姉ちゃんと面識があるはずよ」
「え?」
振り返った瞬間、穂多琉は俺とすれ違い、そのまま返事をすることなく陣営に戻っていった。
「さぁ、時間だ。お前たち存分に暴れまわれ」
時刻は深夜0時。
兵長の合図とともに500の兵士達は魔女狩りの本陣に突撃した。
「和樹、将の相手を兵にはさせちゃだめよ。兵達の命が無駄になるから。将は私達で抑えるのよ」
穂多琉が2メートル弱ある大きな鎌を、右手で持ち右肩に乗せて、上空から敵陣営に切り込んでいった。
「かっこいい。よし、俺も」
っとソウルイーターを手にかけるが、途中で踏みとどまり、武術だけで戦うことにした。
でもこんなに多勢相手に戦うのは初めてだぞ。
最初のうちは向こうも混乱していて、調子がよかったが、今はもう壊滅寸前だ。
その時ちょうど兵長が奮闘していた。
「おい本部のほうはどうなってるんだよ?」
「必ず間に合うからもう少し耐えろ」
間に合うって、こっちは壊滅状態で、耐えることもままなら・・・・・
【氷点】
「痛ってー」
「っぐ」
背後から豆鉄砲みたいのが俺と兵長の身体全身に襲ってきた。
しかも服の上に氷がへばりついていて痛い。
【辻斬り】
「がはっ」
「おっさん」
茶髪でセミロングの少女が兵長に刀で切りかかり着ていた鎧は真っ二つに割れ、兵長はその場に倒れた。
「あとはあなただけね」
背後にはあの豆鉄砲みたいのを飛ばしてきた2刀流の女の子がこっちにむかってきた。
太ももぐらいまで伸びる紺色のサラサラの髪の毛で、両肩に髪の毛をたらしていて、かなり美人な人だ。
ってかこいつらまさか大将か副将か?
俺一人で二人相手も無理だぞ。
「名前ぐらい名乗ったらどうだ?いきなり襲い掛かってきやがって?」
とにかく時間稼ぎだ。なんとか時間さえ稼げば穂多琉か本部の助けが来るはず。
「いきなり襲ってきたのはそっちよ。夜襲など卑劣な真似をしおって」
聞く耳もたず。
茶髪の女の子は刀で俺に襲い掛かり、俺はそれを必死にかわしつづけた。
「やめなさい、夏輝」
もう一人の女の子がそう言うと茶髪の子の攻撃が止まった。
危ねぇ、死ぬかと思った。
ってか周りは魔女狩りの信徒ばっかで、味方が一人もいねぇし。
「和、何故止める?」
茶髪の子が夏樹で紺色の髪の美人の人が和か。
っということは二人とも副将だな。
「無駄な殺生は好まないの。貴方おとなしく投降するなら命まで取らないわ」
「またそんな勝手なことを。毅の命令は皆殺しよ。一人も残さず・・・・っち」
っと夏輝は急に舌打ちをして、バックステップで俺から離れた。
その瞬間、今まで夏樹がいた地面に亀裂が走った。
「残念、もう少しだったのに」
パタパタと倒れる魔女狩りの信徒の前に穂多琉が現れた。
「やるわねあんた」
夏輝は刀を構え直し、穂多琉に切りかかろうとしたが、間合いを詰められる前に穂多琉が横に鎌を振り払った。
しかもその振り払った場所の空気が一瞬歪んだ。
「あの武器、少々厄介ね」
夏輝は和の横に移動し、距離を取られた。
「武田毅自ら先陣をきっているとは流石ね。でもこの二人をここで足止めさせとくだけで充分戦果はあげられるわ」
その前に死んだら終わりだけどな。
「あの二人の持っている刀、各地に知れ渡る名刀よ。気をつけて」
穂多琉が俺に忠告してきた。
「あなたの武器も普通の鎌じゃないでしょ?」
「えぇ、神をも殺す死神の鎌よ。切られないように気をつけなさい」
神をも殺すってどんなのだよ。
まぁ見ため的に雰囲気がやばいけど。
「それじゃあ私の正宗の錆になりなさい」
っと再び夏輝が襲い掛かってきた。
正宗って俺でも知っている名刀中の名刀じゃねぇか。
なんでこんな奴がそんな貴重な刀を。
「この人の相手は任せて」
鎌の柄の部分を地面に叩きつけて、土ぼこりをまき散らした瞬間、上空から夏輝と穂多琉が飛び出していった。
残ったのは、俺と和という女だ。
しかも戦いづらそうな2刀流ときた。
「あなたは丸腰で戦う気?」
俺だってできればソウルイーターを抜きたい。
でもそれじゃあ強くなれない。
「遊びじゃないのよ。死にたくなかったらその剣を抜きなさい」
そう言うだけ言って、刀を構えた。
クソ、やっぱりこいつに頼ることになるじゃねぇか。
「それも普通の短剣じゃなさそうね」
「あぁ、世界で最強の短剣だ」
「へぇ、だったら私のコレクションに加えてあげる。名刀雪月花、雪ウサギ。切られたら凍傷を起こすわよ」
切られなかったらいいんだろ?
向かってくる和の攻撃を俺はソウルイーターで受け止めた。
その瞬間、刀を伝ってソウルイーターが凍りだした。
瞬時にバックステップで和から離れ、ソウルファイアで氷を溶かした。
「何驚いてるの?まだこんなの序の口よ」
クスクス笑いながら、和は俺の隙をうかがっている。
魔女狩りってこんな強い奴ばっかりなのか。
次元が違いすぎる。
「次は殺す気で行くからうまく避けてね」
さっきと同じパターンで右から刀を薙ぎ払ってきた。
これをソウルイーターで受け止めたらさっきと同じだ。
だったら避けるしかないな。
後方を確認し、バックステップで一振り目を避けたが、左に握られていた刀が、突き出てきた。
咄嗟にソウルイーターで防いだものの、先ほど空を切った右手に握られていた刀が左から襲い掛かってきた。
「う、うわ」
俺は体勢を崩し、尻餅をついたが、一瞬で横へ飛び上がり体勢を立て直した。
「最後だけちょっとかっこ悪かったかな」
こいつ遊んでやがる。
「さぁ、今度はもうちょっと攻撃回数を増やすわよ」
っと次は刀を八双に構え、突撃してきた。
俺だって無駄に避けてたわけじゃない。
さっきの攻撃でひとつ分かったことがある。
左手に握られてる刀に触れても凍らないことだ。
っということは右手に握られている刀にだけ気をつければいいだけだ。
「俺も次からは反撃させてもらうぜ」
っと叫び、自ら和の懐に向かって行った。
最近暑いですねw
執筆中頭がぽ〜として一時思考回路が切断されますw
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