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第1話:10年前の過去

 10年前。

 当時6歳の僕は9歳離れたお姉ちゃんと、お父さんとお母さんの4人で神社の夏祭りに来ていた。

 僕にとっては始めてのお祭りで、たこ焼きやわあたあめなどのいろんな食べ物の屋台、

金魚救いや射的などのゲームの出店、どれも僕にとっては新鮮で一生思い出に残るいい思い出だ。

 でもそのいい思い出は、一瞬の内につらい思い出に変わってしまった。


 お父さん達とはぐれ、お姉ちゃんと2人っきりの時に、ちょうど境内の中心で大きな爆発が起こった。

「お姉ちゃん、何この大きな音」

 その時の僕は周辺に太鼓やみこしの担ぎ声同様、この爆発はごく自然なことだと思った。

「和樹、逃げるよ」

 お姉ちゃんに強引に手を引っ張られ、人波と同じ方向に走った。

 皆も一斉に爆発と反対側に走り、僕はお姉ちゃんの手を握っとくだけで精一杯だった。

「クッカッカッカ、焼き尽くせ、この中にの何処かに裏切り者がいるはずだ」 

 鳥居の上で60〜70歳くらいの老人が両手を挙げて立っていた。

 再び爆発起こり、今度は入り口の方からだった。

「逃げ道が塞がれた」

「お姉ちゃん?」

 僕はその時初めて危機感というものを知った。

 これはお祭りのアトラクションみたなじゃなくて、事件なんだと。

「綾乃、和樹、こっちよ」

 人波にはぐれた所からお母さんの声が聞こえ、お姉ちゃんとともに、その人波から這い出た。

 お母さんのいた場所は、木々に囲まれていて割といろんな方向からの死角になっていた。

「綾乃、和樹、時間がないの。お母さんの最後のお願い聞いてくれる?」

「最後って・・・?」

「時間がないの。和樹、あなたはこれを肌身離さず持っていなさい」

 僕の質問に答えず、お母さんは、50センチほどの割と大きい短剣を僕に渡した。

「これは?」

「それは私達代々伝わる3大家宝ソウルイーターよ。あなたにはこのソウルイーターの短剣、綾乃には紋章を託すわ」

 そう言って、お母さんはお姉ちゃんのほうに向き直した。

「綾乃、その紋章を使えばあなたたちは生き残れるはず。急いで、綾乃だけが頼りなんだからね」

「お母さん」

 爆発はすぐ近くまで来ていた。

 この神社全てを爆破させるつもりみたいだ。

 生き残った人たちももうほとんどいない。

「綾乃、和樹を頼んだわよ」

 そう言って、お母さんは森から抜け出し、あの鳥居の上に立っていた老人のほうに向かって行った。

「和樹こっちよ」

                【ソウルイーター・契り】


 半径3メートルほどの紫の球体に包まれ、その球体から出られなくなった。

 その瞬間大規模な爆発が起こり、僕の周りの森も一瞬で一掃され、周りはごく平坦な焼け野原になっていた。

 人ひとり残っておらず、遥か地平線上全て平面で、この世界には僕とお姉ちゃん2人だけかと錯覚するぐらいだった。

 でもそれはただ1つの地域がなくなっただけしか過ぎなかったけど、僕の生まれた町は幽霊タウンになってしまった。

 お父さんとお母さんの行方は知れず、僕とお姉ちゃんは親戚の家で居候することになった。

 最初は『あの爆発で生き残った子供』と呼ばれ、ちょっとした有名人気分だったが、日に日に不気味がられ、今では悪魔呼ばわりだ。


 それから5年後、成人したお姉ちゃんは、お父さん達を探す旅に出た。

 僕も行きたかったけど、最低中学は卒業しなくてはいけないらしいので、それを理由に断られた。

 でもそれから1ヶ月ごとにお姉ちゃんから手紙が来るようになった。

 最初は他愛もない手紙だったけど、ある日あの事件に関しての情報が書かれた手紙が来た。

 その内容はお父さんもお母さんも既に他界していたこと。

 そしてあの鳥居に立っていた老人はお父さんとお母さんを探していたこと。

 最後にあの老人の正体。

 でも正体がわかったとだけ書いてあって、名前とかは書いていなかった。

 その内容の手紙以来、全く手紙が届かなくなって、お姉ちゃんの行方もわからないままになった。

 

 そして今、俺、陸奥和樹(むつかずき)は16歳。

 中学をでて、姉ちゃんの後を追ううもりだったが、ある厄介なことが起きて、まだこの町に留まっている。

 それはこの町には魔物が現れる。

 毎日その魔物の被害にあうのは100を超えているらしい。

 その魔物退治するのが、俺の役目だ。

 一応育った町でもあるからな。

 普通の人間の俺が何故そんな魔物と戦えるかはこの短剣のおかげだ。

 母さんから貰った短剣ソウルイーター。

 後から姉ちゃんから聞いた話だと、このソウルイーターは陸奥の血を引くもの以外は扱えないらしい。

 例えば俺の短剣だと、他の人だと持てないらしい、お姉ちゃんの紋章だと継承できないらしい。

 全部で3大家宝というくらいだから、3つあるらしいが、あと1つは俺も知らない。

 多分お父さんが持っていってそのままなのだろう。

 まぁ、例え誰かがそれを見つけても、どうすることもできないけどな。


 昼休み、校舎裏で昼寝中に予鈴がなった。

 俺は昼食の残骸をゴミ箱に投げ捨て、教室に向かった。

 あ〜そういえばめんどくさいコトがあと一つ残っていた。

 俺の席は教卓から、直線状のちょうど真ん中の席だ。

 今はそこの席だけ、机と椅子がなく、ぼっかりと空間になっている。

 いつものことだけど、窓から運動場を見たら、案の定、机と椅子がぽつんとど真ん中に置いてある。

 まぁ、いつものことだけど、毎日あそこに持っていく奴も大変だよな。

 本鈴が鳴っても、気にせず俺は自分の机と椅子を取りにいった。

 これがどういうことかわかるだろうか?

 俺は昔から『悪魔の弟』と呼ばれ気味悪がられている。

 しかも学校内では、俺と喋れば呪われるとか、俺に触れると死んだら地獄行き確定とかそんな噂が腐るほどある。

 まぁ、別にそんなことはどうでもいいけど、それだったら俺を虐めたら死ぬとかそんな噂を流して欲しい。

 体育の授業中の生徒とか気にせず、堂々と運動場を横切り、机と椅子を持ち、自分の教室に運んだ。

 あと先生も俺のことは断固無視をする。

 今のように遅れて、しかも机と椅子を持って教室に入ってきても何も起きてないかのように授業を進める。

 学校が終わると、別に喋る相手も友達もいないし、家か近くの神社に寄っていく。

 この神社はあの事件とは無関係の神社だ。

 じゃあ何故寄っていくかというと、唯一の話相手がいるからだ。

「瞬さん、こんにちは」

「おぉ和樹、今日もきたか」

 この人は片桐瞬(かたぎりしゅん)さん。

 黒髪でスポーツ狩りの男の人で、ネックレスやらピアスなどアクセサリーをハデにつけてい

て、見た目はかなり怖い。

 っが話してみると、意外といい人だったりする。

 人は見かけで判断するなとはこのことだな。

 瞬さんは妹を探している最中、飢え死に仕掛けてる所を俺が助けて、この神社で寝泊りしている。

 神社といっても神主もいない、小さい神社だ。

「今日も魔方陣書いてるんっすか?」

「あぁ、なかなかいいのができなくてな」

 用途は全くわからないけど、この人は毎日働きもせず、魔方陣の書き消しを繰り返している。

 魔法でも使う気か?この人。

 その日は挨拶だけして家に帰った。

 家にといっても当然一人暮らしではなく、10年前から居候している親戚の家だ。

 最初は居候の身のくせに手伝えだのうるさかったが、今は断固として無視に徹している。

 毎月に部屋に3万だけ置いて、あとはそれっきりだ。

 要するに金と寝る場所だけはやるから、あとは勝手にしろ状態だ。

 でも俺にしてはそっちの方が助かるけどな。

 さて、暗くなってきたし、そろそろ行くか。

 行くとは日課の魔物退治のことだ。

 これ以上被害がでるのはごめんだからな。

「さて、まずはどこから片付けるかな」

 場所は大きく分けて3つある。住宅街、商店街、学校の3つだ。

 住宅街での被害が一番多いが、雑魚ばかりだ。

 商店街の魔物は雑魚からごつい魔物まで豊富に揃っている。

 一番難関なのは学校だ。

 昼間は全く大丈夫なのに、夜になると大型の魔物がうじゃうじゃいやがる。

 居残りとかしたら、即あの世行き確定だ。

「じゃあ今日は住宅街から行きますか」

 腰にソウルイーターをかけ、のんびりと住宅街に向かった。

魔女狩りシリース第2章の一つ目です。


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