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§3 vsドラゴン

ちなみにこのドラゴンは某国民的RPG[ドラ○ンク○○ト]のそれをモチーフとしています。

 3日後。

 俺はサーベルドラゴンとの戦闘を控え、目的地に急いでいた。旧アルガス共和国と国境沿いであるここは首都周辺に比べてかなり暖かく、夜間迷彩としても防寒用としても愛用しているフーデッドローブは今は脱いでいる。

 依頼内容は至って単純明快。

[依頼主:オルヴァーナ公国北部貴族、及び現地領民]

[指定地域:ホルム山地」

[内容:サーベルドラゴンの討伐]

[概要:北部のホルム山地にサーベルドラゴンの襲来があった。最近どうも幻獣による被害が増加しているが、ホルム山地のすぐ近くは首都との交通の要。破壊される訳にはいかない。なんとしても討伐を頼む。撃退でも構わない]

[報酬:5000サンツ(撃退ならば4000サンツ)]

 サーベルドラゴン相手にこの報酬は少し安いが、恐らく聖騎士団の規則が何かしら絡んでいるのだろう。

 頭を振って意識を依頼へ、--戦闘へと移行させる。

 山からは何度かドラゴン特有の地響きにも似た咆哮が響き渡っていた。

 チェインメイル(鎖帷子)を纏い、その上から軽装のアーマー、ガントレット、レガ―スを着けた。動きやすさを優先しつつ、それでいて防御面もかなり高めの聖騎士団印の優れ物だ。俺の嗜好で飾り気は必要最低限にまで留めてある。左手のガントレットには防御面を考慮して流線型を描いた小型のシールドと一体化している。

 かちゃかちゃと鎧同士が擦れ合う音を立てながら俺はサーベルドラゴンがいそうな場所に検討を付けた。

 まずは登山だ。ホルム山地は周りの山地に比べると比較的低い山が連なる。登山自体は随分と楽なものだった。


 周りに気を配りながらさっさと山を登っていく。

「サーベルドラゴンやーい、どこにい……ッ!」

 とっさに近くにあった岩の陰に潜む。

 いた。開けた所で横たわっている。

 報告から少し時間が経ったのか、外皮が少し紅に近づいた以外はすべて報告通りのサーベルドラゴン。

 サーベルドラゴンに限らず、ドラゴン類は成熟するにつれその色を変えていく。生まれたばかりの頃は白いが、段々と桃、赤、紅……と赤みが増していき、最後には黒くなる。紅まではギリギリ聖騎士団だけで相手できるが、黒になると聖騎士団と軍の連合部隊が動員される。最悪、国家の戦力を総動員しての戦闘が行われることもある。

 そんなサーベルドラゴン類でも、他のドラゴン類に比べては比較的戦いやすい幻獣でもある。俺のサーベルの鞘の装飾にも使われているウィングドラゴンは翼竜だが、サーベルドラゴンは翼のない陸竜だ。翼竜とは銃火器類、特に弾丸が潤沢に使えるならば対等に戦えるのだが、首都から離れた場所ではそれは叶うことがとても難しい。聖騎士団が主に刀剣等の近接武装を用いる理由はそこにある。俺も対魔術師戦闘を考慮して6連発短銃を持っているのだが、サーベル1振りで事足りる事や弾丸の流通ルートが不備だらけなこともあって使うことはほとんどないに等しい。

 紅のドラゴンを相手取って戦った事はない。だが今の段階なら恐らく、赤の段階のままだ。紅や黒に見られる、体表の剣のような棘を発射することはないだろう。


 気づかれていないのか、動きは実に緩慢なものだ。今なら先制攻撃も出来るだろう。意を決めた。懐から呪符を取り出し軽く念じると、呪符が燃え上がった。四肢に力が行き渡るのが認識できた。

 深呼吸をし、体勢を整える。腰のサーベルの柄に手を添え、隠れていた岩から立ち上がり、尻尾側からそろり、そろりと近付く。

 音を立てずに抜刀、サーベルを両手で持って上段に構える。そのまま渾身の力を込め、尻尾めがけて降り下ろした。

「ゴァァァァアアアアアァァァッ!」

 綺麗に入ったその一撃は、僅か一発で堅い鱗を切断し、尻尾を切り落とした。まだ赤であることは明らかだ。ドラゴン特有の蒼い血が噴射する。

 丁度うたた寝でもしていたのにいきなり叩き起こされた時に似ている。安寧の時を邪魔されたサーベルドラゴンは、その不届き者を潰すべく、全身に生えた刃を一度大きく振るわせた。

 俺もそれに答えるようにサーベルの柄をより強く握りしめ、サーベルドラゴンに斬りかかった。

 サーベルの刃と鱗が激しくぶつかり合い、火花が散った。

 ドラゴンの放った火球をサーベルで斬り裂く。炎の臭いが身体の紙一重を通り過ぎた。少し髪が焦げた。構わずに相対する。

 振るわれた刃根に対してほぼ垂直に等しい角度でシールドを当て、軌道を逸らす。身体強化の呪符をかけていなければ、例えどれほど鍛えていたとしても、左手が悲惨な事になっていただろう。そしてそろそろ、呪符をかけていた筈なのに左手の動きがにわかに鈍い。限界が近づいているのは明らかだ。

 最も厄介な尻尾を最初に切り落として正解だった。尻尾は振り回されたりたたきつけられたりするだけで十分な威力を発揮する。鋭い棘も生えている為、当たる事は御免被りたかった。

 時折サーベルを振り、その鱗を、肉を少しずつ削っていく。

「このままなら……いける!」

 俺は動きが大きく阻害されるような負傷もないが、サーベルドラゴンは既に流血でその鱗を血の色で蒼く染め上げている。

 だが、手負いの獣ほど何をしでかすか分からないし、あちらの攻撃が一発でもクリーンヒットすれば負けるのはこちらだ。俺は気を更に引き締めた。

 自然とサーベルを持つ手にも力が入る。ゆっくりと前に重心を移動させてある程度傾いた所で大地を踏み、爆発的な加速を得た。サーベルで断ち切るようにして振るった。

「だりゃあぁっ!」

「ゴアアアアアァァァァァァアアアアアッ!」

 左目を斬られ、その痛みに悲鳴を上げるサーベルドラゴン。大きく体を仰け反らせ、鱗に覆われていない柔らかい腹を露わにした。ドラゴンの腹は鱗にも、まして骨にも守られていない弱点である。

 ここで俺は一気に畳み掛けることにした。チャンス刃今しかないのだから。

 腹にサーベルを突き立て、捌く。内圧に耐えきれず、臓物が飛び出た。構うことなく更に臓物を出させるように斬り捌き、飛び出た臓物を斬った。

 鮮血が散り、更に傷を増やされたサーベルドラゴンはようやく気付いた。

 かつてのように(・・・・・・)また人に負けると。だが、かつてとは違い、人一人に負けると。

 だがサーベルドラゴンは引かなかった。只の獣であればここで引いただろう。だがこの身は既に敗北を知り、獣以下の奴隷――スレイヴだ。マスター――あの少女からのオーダーはこの地での陽動。北の地と彼の地を結ぶこの地に居座り、マスターやその連れの移動を彼の地の者達に悟らせぬ事。

 マスターは涙ながらに我に命令した。この地で敵対者を倒せ、自分達が彼の地へと行けば後は自由にしていいから、と。その姿は年齢相応の物だった。

 我をスレイヴとした者はあの少女一人だけだった。だがそれでも一つ言える。あのマスターは優しすぎる。それに加えて、欲がない。

 人という物は欲にまみれた存在だと、時の流れに消えた者をマスターにもった奴から聞かされていた。底を知らぬ欲に底冷えした、と何度も言っていた。

 だが、あの少女にそれは見受けられなかった。我をスレイヴにしようと言い出したのはあの少女の連れだった上に、我と戦い、その身を喰らわれた。我欲が具現化したのか、喰える様な味では無かった。その時で我も深手の傷を負っていたが、それでも抗って、負けた。


 目の前の人が剣を振りかざす。狙いは我ら竜種の生命の権化である角。既に自身も死に体であるため、角を折る事はたやすいだろう。


 済まぬ、マスター。主の願いの成就に、付き合う事は出来そうにない。


 角に刃が通り、今までに受けたどんな痛みをも上回る激痛が走ったが、それを全て確認しない内に意識が消えた。


現在、本来サブヒロインあたりが関の山だったはずのキャラがメインヒロインまがいの状態に。


これは、メインヒロインにそいつを据えたほうがいいのか……?

(頓挫速いな、と思った方。それが理雄なのです)

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