7. 険しい道のり
二日目の朝を迎えた俺は、その3人と一緒にスィートピィへと向かうことになった。まあ一人で旅するよりもこっちのほうが賑やかだし、助け合えるし、いい事ずくめだろう。まぁ俺が助けてもらうばかりになると思うが…
いや、それにしても不思議だ。ここまで魔物と一匹も出会っていない。見張り番の時も、俺が担当している間は見ていない。さすがに一日ずっと外の世界を歩いていたら見つかると思うんだが…道なりに来てるとはいえここまで出会わないものなのか?
とりあえず、この話題を3人に持ちかけることにした。
「この辺りって全然魔物がいませんよね。」
「…ん?魔物なら昨日から結構見かけているけど…」
予想外の返答が来た。おい、俺は一匹も魔物の姿なんか見えなかったぞ。
「そうよ!結構な量がいて倒すの大変だったんだから!」
「おかげで、素材も結構集まったけどな!」
全てがつながった気がした。俺は、この3人が通った後の道を通ってきたのだ。つまり、魔物は全て3人に倒されている。素材も回収済み、全部が使える素材じゃないと思うが遺体も残っていない。まぁそういうことだろう。つまり…
「ほら、早速魔物が来ましたよ!」
フロストがそう言うとそこには群れを追い出されたであろうゴブリン一匹がいた。
「任せて!」
リリアはそう言って思いっきり弓を引いた。放たれた矢は見事ゴブリンの頭を撃ち抜き、ゴブリンは倒れた。
結構な距離があったが、さすがは弓使いだな。頼りになる。
「それにしても魔物と一匹も出会ってないなんて、どんな確率なの?」
「いや、もしかしたら私達が魔物を倒していったから…」
フロストが説明してくれた。
いや、まあ謎はもう一つあるんだけどな。見張り番の時も誰も来なかったんだ。この3人が先に倒した可能性は考えられない。
「でも、見張り番をしてたときも見てないっていうのよ? まあ私もほとんど魔物は見かけなかったけど…」
「それは私の結界魔法が…って、いつもやってるでしょう?」
「…あ!」
…どうやら全て解決したらしい。俺が魔物に出会わなかったのは偶然じゃなかったのだ。
「結界魔法って…?」
「ユージもしかしてそれも知らないの? 本当に冒険者?」
「まぁまぁ…そういう人がいたっていいじゃねえか。」
「ええと、結界魔法っていうのは基本的な魔法で、一定の範囲に魔物を寄せ付けない結界を張ることができるんですよ。効果は8時間ほど、一晩寝るのに丁度いいので旅だとものすごく便利なんですよ。」
「ああ、むしろパーティに一人は使えるやつがいないとまともに旅もできねえからな。」
「でも、結界魔法が使えない人用に同じく8時間だけ結界を貼れる魔道具が売ってたりもするわ。」
「俺でも習得できるか?」
「うーん、鍛錬次第ですかね。生活魔法は使えてるみたいなので、ちょっと頑張るだけでも一晩過ごせるくらいの結界は貼れるようになると思いますよ。」
という感じだ。一応結界魔法にも位はあるらしく、旅をするのに使えてほしいのが初級結界。こちらは、大した適性がなくとも使えるようになるらしい。中級、上級になると範囲や結界の性能が上がるらしく、こちらはかなりの鍛錬が必要とのこと。そして、王級、神級となるともはや天才にしか使えないらしく、街や国にかけられている結界はこれだそうだ。そんな色んな街に結界を貼れる人がいるとは思えないが、どうやら『結界師』と呼ばれるランクA冒険者が各地を周ってかけたものらしい。3人は噂でしか聞いたことが無いようだが…
まあそんなこんなで先に進むことになった。昨日とはうってかわってゴブリンやスライムなどの魔物と結構出会う。まあ大したことはない。心強い仲間がいるからな。素材も少し分けてもらった。
と、何事もなく俺達は先に進んでいった。そのまま1時間くらい歩いた頃だろうか。ゴブリンの群れが現れた。数は遠くでよく見えなかったが、7匹くらいいそうだ。
「みんな、来るよ!」
「腕の見せ所だぜ!」
「私に任せなさい!」
俺も負けてられないと思い、クレイブと一緒に前に出た。ちょっと危ない気もするがまあ良い。俺は思いっきり剣を振りゴブリンを一匹斬った。
「アイシクルランス!」
フロストが放った氷の槍はゴブリンを二匹ほど一気に貫いていった。リリアは弓を使ってゴブリンを順調に倒している。最前線で頑張っているのはクレイブだ。ゴブリンの攻撃をものともせず、剣を振り回しゴブリンたちをなぎ倒している。
あっという間にゴブリンの群れを倒してしまった。
「すごいですねクレイブさん!」
「ユージもなかなかやるな!」
と、二人で褒め合っているのも束の間、次の脅威はすぐに俺達に襲いかかることとなる。
「みんな、強い魔物が近づいてきてるわよ!」
「なに!?どんなやつだかわかるか?」
「えーと…この感じはD…いや、Cくらいあるかもしれないわ…」
「逃げますよ!今の私達じゃ勝てるかわかりません!」
そう提案してすぐだった。眼の前には大きな影があった。それは、オーガの姿であった。
「くっ、俺が時間を稼ぐ!だから逃げろ!」
「やめて!いくらクレイブの体でも長くは持たないわ!」
「クレイブさん、離れてください!」
フロストがそういった。
「アースリクイド!」
その魔法を唱えた瞬間、オーガの足元に泥沼が生成された。
「今のうちよ!ウィンドステップ!」
リリアはみんなに移動速度が上がる魔法を使った。オーガが沼に足を取られている間に俺達は逃げ出した。
数分くらい走っていただろうか。リリアのかけた魔法が切れた頃、もうオーガの姿は見えなくなっていた。
「危なかったわね…」
「ああ、助かった」
「もう…無茶しないでよね!」
オーガから逃げ切った俺達は、そのまま街へ少し急ぎながら向かった。オーガが追いかけてくるかもしれなかったから休憩はできなかった。
そのおかげか、太陽が沈みかけるくらいの時間には街が見えていた。街の後ろから夕日が差している景色はどこか幻想的でもあった。
「ついたわね!」
「ああ!」
「3人ともありがとうございました!」
俺はそうやって感謝を伝えた!
「こちらこそ!ユージがいなかったらここまでたどり着けなかったわ!」
「お前もこの街に滞在するんだろ?また会ったらよろしくな!」
「ユージさん!食料と旅のお供ありがとうございました!おかげで楽しかったですよ!」
そんな会話を交わして、俺達は門をくぐり、街の中へ入っていった。




