22. 海はキケンがいっぱい
海賊船はこちらにどんどん向かってくる。戦闘は避けられないと見て、アメリアも戦闘準備をしている。
俺も、船の上で剣を構える。魔物以外との戦闘は初めてだな…とかそんなことを思っている間に、海賊たちは船に突撃してきた。
衝撃が船全体に襲いかかる。頑丈な作りなので、問題はないそうだが、海賊たちはそのまま船に乗り込んできた。
ざっと5人くらいだ。
「サンダーランス!」
最初に仕掛けたのはザンダーだった。雷の槍が大柄な海賊に直撃する。
「チっ、痛えなあ何すんだよ!」
さっきの攻撃を食らった海賊が大きな声を上げる。それにしてもコイツ、直撃したのになんで立ってるんだ…?
そう思いながら鑑定をしてみた。
ジェット(39) 種族:人間
HP:220/431 MP:220 攻撃力:442 防御力:360 素早さ:151
普通にステータスが高い。ザンダーと同じくらいの実力はありそうだ。
「こいつは私に任せてください! 他の人を頼みます!」
「俺とやるってのかぁ?」
「海賊が、この船になんの用があってきたんですか!」
「フン、生きてたら話してやる。ブレイズショット!」
ジェットが放つ炎魔法をザンダーは軽々と避けていた。
二人の戦いを見ていたら、俺のところにも一人の海賊が向かってきた。
「おいおいよそ見は行けないぜぇ?」
海賊が短剣を振ってきたのを咄嗟に魔法剣で受け止める。そして鑑定。
グランツ(24)種族:人間
HP:229 MP:120 攻撃力:242 防御力:120 素早さ:110
ジェットほどじゃないがこいつも強い。今の俺と五分五分くらいのステータスをしている。戦って勝てるかどうかわからないが、俺には魔法剣だってある。ここで異世界生活を終わらせるのは嫌だ!
俺は魔法剣に炎を纏わせ相手に向かって勢いよく振り下ろす。
しかし、俺の攻撃は避けられてしまった。
「いいもの持ってるね! 俺がもらいたいくらいだ」
ただの大振りじゃダメだ。もっと狙わないと、魔力には限りがあるんだ。
剣を振る準備はしているが、相手も様子をうかがっているようだ。炎を纏った剣に迂闊に近づけない様子だった。距離を取られているなら魔法が効くだろう。俺はそう思ってじゅもんを唱えた。
「ファイアボール!」
「おっと! 危ないなあ!」
相手が少しよろけている隙に距離を詰める。そして剣を振る。しかし、今度は短剣で受け止められてしまった。
…いや、剣の性能ならこっちのほうが上だろう。魔力を込めれば押し切れる…はずだ。
「アースリクイド!」
聞いたことのある呪文だった。咄嗟にその場を離れた。俺の足元が少しだけ沼に変わっている。船の上でも発動するのか、気付けてよかった…
「やっぱ船の上じゃ効きにくいか…ロックブラスト!」
グランツは今度は岩を飛ばしてきた。かろうじて剣で防げたが、それでも衝撃が体に響いていた。
「ファイアボール!」
俺も牽制しているが、大したダメージになっていないように見える。魔法剣のこともあり魔力の消耗が激しいし、そろそろ動けなくなるかも知れない。
それでも相手を倒さない限り俺に未来は無い。相手の唱えた呪文の一つは中級魔法だったはず。そんな連発はしてこないだろう。
相手の残りMPを見たところ、40となっていた。俺は残り50ちょっとだ。おそらく魔法剣を振っただけで切れそうだな。次で決めるしか無い。そう思いながらじっくりとチャンスを伺っていた。
「…動かないからこっちからいかせてもらうよ!」
グランツが走って近付いてきた。落ち着いて、タイミングを合わせて振るだけだ。
「ロックブラスト!」
俺が剣を振るより先に相手の呪文が飛んできた。直撃は避けたが、その衝撃で俺は吹き飛ばされた。
「とどめを刺させてもらうよ!」
「ユージ!」
もう終わりだと思ったその瞬間、ミントの声が聞こえた。
知らない間にグランツの背後に回っていた。
「くそっ、お前…」
「今だよ!」
ミントはグランツを思いっきり突き飛ばした。
「うおおおおお!!!」
俺は魔力をこめて思いっきり剣を振り下ろした。今度はしっかりと感触があった。人を斬った。真っ二つに斬られていた。もう動いていない。
人を殺したのは初めてだ。襲ってきたとはいえ。
「ユージ、大丈夫だった?」
「ああ…」
…ミントには助けられてばっかりだな。こいつも他の盗賊の相手をしていたはずだが、もう片付けてきたらしい。流石だな。
あと気になるのは…ザンダーの方だな。
様子を見に行ったら、もう戦闘は終わっているようだった。倒れている大男と立っているザンダーの姿があった。
他の船員たちも、船長も戦闘を終えたようだった。
「話してもらいますよ!」
「チッ…」
ザンダーはジェットを問い詰めているようだった。
「んな大したことじゃねえよ、俺はただこの海で強さを示したいだけだったんだ」
「…もっと別に方法あるでしょうに」
「見かけた船を手当たり次第に襲ってるわけじゃねえ。強い魔力を感じたんだ。負けたけどな」
「はぁ…」
ザンダーがため息をついた。その時だった。
ドゴオォォン!
見張り台の方で大きな音が聞こえた。
「巨大な魔物です! クラーケンが!」
「クソッ、こんなときに災難ばっかりだな!」
どうやら航海はまだまだ波乱なことになりそうだ。




