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2. 1人じゃない夜

 お金稼ぎと言っても大きく分類して3つの方法があるらしい。

 

 1つ目、魔物を討伐し素材を売る。

 俺が冒険者を思い浮かべて最初に思いつくのはこれだ。とはいえただの配達員だった俺が戦闘をできるかと言われれば少し怪しいが…。


 2つ目、薬草採取。

 これも一般的だろう。1つ目と違うことは薬草の知識がなければならないことと、途中で魔物と遭遇する可能性があることだ。危険な場所でしか採取できないものほど報酬が高いらしい。


 3つ目、個人依頼のクエスト。

 これは普段はあまりないらしいが、迷子になったペットを探したり、下水処理や庭の手入れと様々だ。


 この3つから選ぶとして、1番安全なのは3つ目の個人依頼のクエストだろう。ものによっては戦闘も起きないだろうし。


 しかし、受付の人に聞いたところ個人依頼のクエストは現在ないらしい。危険がないクエストだから人気なのか?と思ったが、初日から下水処理などはあまりしたくなかったためちょっとだけ安心した。


 悩んでいたところ、別の冒険者が来たようでその人は受付の人に話しかけた。

「嬢ちゃん、討伐完了したぞ!素材の鑑定を頼む!」

 この建物全体に響きわたりそうな声の元を見れば、2メートルはありそうな背丈の男性がいた。顔や体の傷を見るに冒険者だろう。元の世界では頭にヤのつく自営業をしていそうな強面だ。元の世界だったら関わることは無い人種だろう。

「エルダさん!ちょうどいいところに来てくれましたね」

 受付の人がその男性と話しているあいだ、依頼を物色しようかと離れようとしたが止められた。


 振り返れば受付の人は俺を紹介するような形で話し始めていた。

「実はこの方、新規の冒険者希望の方なんですよ。そこで良ければエルダさんにちょっとした御教授の方をお願いしたくて」

 どうやら先輩冒険者に依頼の手伝いをして貰えるか聞いていたらしい。とはいえ、初対面の、しかも素人の手伝いを快く引き受けてくれるかどうか…。


 と考えていたが、どうやら杞憂だったらしい。エルダと呼ばれた冒険者は快くそれを受け入れてくれた。

 もっとも、俺が頼んでいた訳では無いが、こちらとしても喜ばしいことだ。受付の人の紹介ならいわゆる初心者狩りとは違うだろうし。


 軽く自己紹介をしてわかったことがいくつかある。

 まず、この人はベテランの冒険者ということだ。名前はエルダで冒険者ランクはC、妻子はおらず冒険者歴は30年以上との事。なぜこの街にいるかを聞いたが、それははぐらかされてしまった。正直、先程様々な依頼を見たがどれもそこまで難しいようには見えなかったし、ベテランがここに残る理由があまり見当たらない。だが、初対面で詮索するのもあれだろうし、深く聞くことはしない方がいいだろう。


 とまぁ軽く互いの自己紹介をした後に街から少し離れた草原らしき場所に来た。今回受けた依頼は薬草採取、その中でも比較的安全な場所のものだ。


 まぁ初めはそんなもんだろう。


 エルダの言う見分け方は「雰囲気!」と言っていて参考にならなかったが、葉の裏に模様がないものが今回の依頼の薬草、似たような見た目で裏側に模様があるものは微弱な毒があるとの事で間違えないようにしなければならない。それに加え、依頼の数以上に採取することは禁止されているらしい。


 そうしてエルダの手伝いもありつつ、多少時間がかかったが薬草の採取を終えた。途中、魔物が出ていたようだがエルダが処理してくれていたらしい。


 集めた薬草を持ちギルドに戻る。受付の人は薬草の状態を見て少し驚いていた。

 初めてだったから丁寧にと思ってやったからか、かなり状態が良かったらしい。まぁその分時間をかなり使ってしまったのだが…。


 何はともあれ初依頼を達成した俺は報酬を受け取ることが出来た。報酬は本来銅貨4枚だったが、今回は色をつけて銀貨1枚を貰うことが出来た。丁寧にやれば報酬が増えるのか?と思ったが、どうやらエルダが討伐した魔物の素材分を上乗せしてくれたらしい。この人には頭が上がらないな。


 報酬を片手にギルドを後にした俺達は冒険者御用達の宿屋に来た。いちばん狭い部屋なら1泊銅貨3枚、朝食も着いてくるらしく、薬草採取だけでも半永久的に暮らせる計算になる。


 エルダもここにお世話になっているようで一緒に宿屋に入った。

「空き部屋が…ない…?」

 女将さんに詳しく聞けば、どうやら昨晩他の冒険者が酔った勢いで壁に穴を開けてしまいいくつかの部屋が使えなくなっているようだった。修理には少なくとも3日はかかるらしい。


 転生初日から野宿か…と肩を落としていると一緒に宿屋に戻っていたエルダが一つの提案をしてくれた。

「お前さんさえ良ければ、俺の部屋に泊まるか?そうすりゃ宿代も浮くだろうし、野宿する必要もねぇしな!」

 外の暗さ的に他の宿を探す時間は無いし、ここはお言葉に甘えることにした。そっちの気があるタイプなら貞操の心配をしなければならなかったが、少し一緒にいた感じや周りの人との雰囲気を見る限りそっちの気があっても合意無しではしてこないだろう…。


 部屋に入るとこじんまりとした空間が広がっていた。ベッドは一つしかなかったがどうやら譲ってくれるらしい。


 申し訳ないと言っても「初めての依頼で疲れたろ?お前さんが使え!」と譲ってくれた。


 宿屋に来る前に買ったパンを食べながらエルダから様々な話を聞いた。


 硬貨の価値は銅貨100枚と銀貨10枚と金貨1枚が同等で、1食銅貨1枚ほどとのこと。


 あとは冒険者ランクについても聞いた。


 冒険者ランクは7つに分かれているらしく、Sランクが最高レベル、Aランクが超ベテラン、Bランクがベテラン、Cランクが一般的、Dランクが駆け出しをぬけたレベル、EランクとFランクが駆け出しとのこと。

 その他にも雑談をしたが、エルダ自身のことは聞くことは出来なかった。話したくないことがあるんだろうと察した俺は深くは聞かず、この世界について色々話した。


 夜も老け、明日のために寝ようとなって布団を被る。異世界に来て初めての夜。電気のない世界はこうも静かなものなのか。孤独感はあったが、人と話したからか寂しさはあまり無かった。


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エルダさん良すぎて泣いた。強面なのに優しすぎる…
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