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17. 凡人配達員と天才料理人〜ネコ耳娘を添えて〜

 いきなり話しかけてきてなんだこいつ…。

 というか、心が読めてるのか?

 ミントはこの人を知ってそうだし有名な人の可能性もある。

 とりあえず話は聞いてみるか。


「えっと、あなたは?」

「ユージ、あのキルバスのこと知らないの!?」


 そう言われても俺は数日前までこの世界にいなかったしな。

 ただ、有名な人ってことだけは理解できた。

 とはいえ俺に協力をもちかける理由がわからないな。


「そこのお嬢さんが言うように、僕はキルバス。料理の高みを目指す者さ。キミはどうやらこの世界の人ではないらしいね」


 やっぱりこの人、心が読めてるみたいだ。

 となると全部正直に話すべきだな。

 ここじゃあれだし、どこかに移動するべきだろう。


「じゃあ僕の家に行こう。調理器具とかもろもろ揃ってるし、そっちの方が好都合だろ?」


 何がどうなってそうなったんだ?と言った顔をしているミントも連れてキルバスの家に行くことに。


 有名な料理人というのは本当らしく、着いた家を見てみてば他のものより大きな家だった。

 キルバスは門の鍵を開け、俺たちを中に誘う。

 ついて行けば立派な玄関があり、中に入れば綺麗かつ広い内装が広がっていた。


「そこのソファにでも腰をかけてくれ。飲み物を用意しよう」


 奥の部屋へと行くキルバスの背中を見つつソファに腰掛ける。

 大きな家に驚いているのかミントの口が少し開いていて面白かった。


 コップを3個持ってきたキルバスはそれを机に置き、話し始める。


「とりあえず意思確認だ。キミは僕と協力する、ということでいいのかい?ニホンショクのスシにカツドン、それ以外にもピザにラーメン、僕が聞いた事のない様々な料理がキミの脳を駆け巡っている!僕はそれを作りたいんだ!」

「1個だけ質問いいですか?」

「もちろんだとも!キミが僕と手を組む、ならね?」

「もちろん、ありがたく協力をお願いさせていただきます。その上で聞きたいことが…」


 聞きたいことの1つ目、心を読んでいることについてだ。

 これについてはスキル、読心というものらしい。

 鑑定と同じように、対象の心を読もうとすると読めるらしい。

 俺の心を読んでいたのは料理大会なら奇抜な発想を持つ者がいるとの考えだったそうだ。


 2つ目、協力してキルバス自身になんのメリットがあるのかについてだ。

 お金が欲しい俺が優勝賞金は貰うとして、それだと彼は何の得もない。


 と思っていたが、対価に元の世界の料理を教えろとのこと。

 元配達員だしそんなに詳しくないぞ?と言ったが、材料や味がわかる人がいるなら再現できると自信げに言っていた。


 断る理由がないな。


「ぜひ協力してください」

「交渉成立だ!これから我々は仲間だ、気楽にしてくれ。…ということで、早速だが何を作るかの話をしようじゃないか!ある程度の食材は揃ってはいるが、新鮮なものも欲しいだろう?僕は戦いは得意ではなくてね。そこら辺はキミたち2人に任せようと思っているんだ」


 あ、ミントも頭数に含まれているんだ。


 ちらっとミントの方を見ればよく分からないけどOK!と言った顔をしている。

 手伝ってくれる人が多いだけありがたい。


 となると…まずは候補を絞るところからだ。


 寿司、カツ丼、ピザ、ラーメン、etc…、

 様々な料理について話した。


 キルバスは少し悩んだ末に口を開く。


「まず、スシとカツドンについては却下だ。キミの言うコメというのは鬼族が好む固有の食べ物だからね。入手が非常に困難で僕でも貯蓄してたりはしない」


 まじか、米が使えないのか。

 確かにこの世界に来てから米を見た事はなかったな…。

 鬼族、米も食べたいしいつか会えるといいな。


「そうなると…ピザとかラーメン辺りを選ぶべきって感じか?」

「そうだね、それらが材料的に現実的だ。と言っても一度試してみなければわからない。とりあえずこの中から1つに絞ってやってみようじゃないか」


 1つに絞る…。

 だったら、食べたいものがある。

 元の世界で1番食べていたあれが食べたい。

 …1番食べていたと言っても、簡単で早く作れるからという理由だが…。


「ラーメンにしよう」

「ラーメンか!では材料を細かく教えてくれたまえ!」


 それからキルバスとラーメンに使用する食材について話し合った。

 麺とスープは確定。

 あとは煮卵とチャーシューも欲しいな。

 コーンとかワカメ、ネギだったりもあっていいかもしれない。


「ではそれぞれ食材を集めることにしよう!キミたちはチャーシューとスープに使う材料を集めてきてくれたまえ。僕はメンやその他のトッピングを考えよう」


 そういうとキルバスは颯爽とキッチンへと消えていった。

 その場に取り残されたミントと目を合わせ、とりあえず行くかと立ち上がる。


 チャーシューは豚肉だし、キルバスの家にあるのでは?と思ったが、ミント曰く

「キルバスは魔物を使った料理がすごく上手いの」

 との事。

 ということはオーク狩りか…。

 あれを食べるのか?

 まぁキルバスを信じよう。


 あとはスープについてだ。

 必要な材料についてミントに伝えると魚系は港の市場に行ってみて、なかったら自分で釣ればいいと伝えてきた。


 とりあえず今日はもう遅い。

 宿で休んで、朝イチで魚市場にいく。

 そこ次第でその後オーク狩りに行くか釣りに行くか考えよう。


「とりあえず今日は解散しようと思うんだけど、この街の宿屋ってどこにあるかわかるか?」

「もちろん!私と一緒のとこに泊まる?案内しよっか!」


 明日も一緒に行動するんだ。

 一緒の宿の方が都合がいいかもしれない。


「ならお願いしようかな」


 そういうとミントは耳をピョコピョコさせて前を歩く。

 しばらく歩くと宿屋が見えてきた。

 貿易が盛んだからか、はたまた料理大会が近いからか、宿屋にはそれなりに人がいるように見えた。


「女将さーん!泊まり2人で!」


 そうミントが言うと宿屋の女将さんから鍵を1個貰っていた。

 そして振り返りこちらに声をかけてくる。


「じゃあ行こっか!」


 …ん?

 今こいつはなんて言っていた?

 泊まり2人…え?同じ部屋?

 さすがに別の部屋の方が…と言おうとしたが、別に一緒の部屋でもいいじゃないか。

 宿泊代がかからないのも高ポイント。

 うん、ヤラシイ事は決してない。


 そう思いながらミントの後に続くことにした。

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