15. 港町の光と影
港町ヴェルマリーナの料理屋に向かう途中に海を見た。あまりにも綺麗だったため見惚れてしまう。
「ユージは海見るの初めて?」
「ああ、つい見惚れてしまった」
前の世界でも海は見た事がある。だがこの世界の海はそれを凌駕した綺麗さだった。
「さて、食べに行くか。飯」
「もうお腹ペコペコだよー。こことかいいんじゃない?」
ミントが海沿いに位置している料理屋を指差す。
おお、海鮮メインの店らしい。いや、近くに海があるんだから海鮮なのは当たり前か。この世界に来て肉ばかりしか食べていなかったから丁度いい。
店内に入ると主に冒険者たちで賑わっていた。
早く海鮮が食べたい。
店員に席を案内され、2人席に案内される。
俺は魚介のスープと白身魚のグリル、ミントは大エビの丸ごと焼きを頼んだ。
料理が来るのを待ちながら、雑談でもすることにした。
「ミントもゼファーノスに行くんだよな?何か目的があるのか?」
「いや、私はゼファーノスには行かないよ。特に目的はなくて、色んなところを旅するのが好きなの」
なんだ、ゼファーノス直航では無いのか。
だが、船に乗っている間は仲間がいて安心だ。
他にもどこから来たのか、なぜゼファーノスへ行くのかなどを話しているうちに先に魚介のスープが運ばれてくる。
湯気が立つ赤みがかった黄金色のスープ。中には白身魚の切り身や、小さな貝、野菜がゴロゴロ入っている。魚介の濃厚な出汁の香りと爽やかなハーブの香りが鼻腔をくすぐる。
その次に、白身魚のグリルが運ばれてくる。
白身魚は皮がパリパリに焼かれ、ジュージューと音を立てている。付け合わせはレモン?のようなものだけ、とシンプルだ。
一方、ミントの前には俺の腕の3倍ほどの大きさがありそうな大エビの丸ごと焼きが運ばれてくる。この大エビを見てミントは耳をピコピコしながら、目を輝かせている。
ミントはすぐに大エビを両手で掴み、豪快に頭からかぶりつく。殻も一緒に食ってる。てか、素手で持って熱くないのか?
「んー!ミソも殻も身も美味しい!」
美味しそうに食べていて、なんだかこっちも幸せな気分になった。
さて、俺も食べるとするか。まずは魚介のスープから。
スープを1口飲むと、口いっぱいに魚介の旨味が広がる。スィートピィで食べたロールキャベツとも、イシュリアで食べた獣肉ステーキとも違う、海が凝縮された味だった。ガチで美味い。
次に、白身魚のグリルをいただく。
ナイフを入れると、パリッとした身の下からフワフワの白い身が現れる。口に入れると海の塩気も感じるし、自然の旨味があって美味い!レモンの様なものを身に絞って食べても良い!最高だ!
こうして俺たちは海の幸を堪能した。
値段は2人合わせて銀貨2枚だった。高すぎだろ!
まあ、味を思い返してみると値段相応に美味しかったから良しとする。ヴェルマリーナに来る前、ミントにお世話になったし、俺がミントの分も払うことにしよう。残りの銀貨は13枚だ。
「いやー美味しかったね!さ、ユージ!船に乗ろうよ!」
「ああ、そうだな。チケット買ってくるよ。てか、ミントはもうチケット持っているのか?」
「うん!チケットはもうあるよ。じゃあ、ここで待ってるから!」
俺はチケット売り場へと向かう。窓口へ行き、冒険者カードを提示する。
「はい、Dランク冒険者のユージさんですね。チケットは金貨50枚となります」
ん?聞き間違えか
「はい。銀貨10枚、これでお願いします」
「いえ、金貨50枚ですよ」
終わった。
そんな金は無い。というか、なぜ今まで俺は気づかなかったんだ。船に乗るのが安いわけないだろ。どうしたものか。
俺はチケットを買うことを断念し、ミントに報告することにした。俺は金がない、と。
「ミント、俺は金がない。金貨50枚なんて聞いてないよ」
「ええ?ユージ、知らなかったの?えーどうするの?」
「まあ、しばらくこの町に滞在して、依頼を受け続けて金を貯めればいいさ」
時間をかけずにお金を稼ぐ方法、無いのかな。
あるわけないか。ミントには悪いから先に行かせよう。
「ミント、ここでお別れだな。俺はお金を稼がなきゃ」
「いや待って、見過ごすわけにはいかないよ!」
こんな情けない俺の事を見過ごすわけにはいかないってどんだけ優しいんだこのケモミミ!今すぐモフモフしたい!
ひとまず俺たちは船乗り場から離れ、港にある広場で途方に暮れることになった。
「金貨50枚なんて大金、どうやって稼げばいいんだ。相当時間が掛かるな。すぐにお金を稼ぐ方法、無いのかなぁ...」
「あ!そういえばここの町でもうすぐ料理大会が開かれるらしいよ!なんと優勝賞金は金貨50枚!どう?ユージ、参加してみない?」
料理大会か、料理に自信はないが、金貨50枚となると参加せずには居られない。てか、前の世界の料理を作るのもありか?日本の料理となると何があるのだろう。寿司か?唐揚げか?カツ丼か?
ともあれここの人達が経験したことのないような料理を提供する必要がある。料理大会、参加するか。
「ああ!参加してみることにするよ!ミント、ありがとう!」
「へへ、どういたしまして!ユージの料理楽しみだな。何を作るんだろう」
と話していると、広場の一角がやけに騒がしく、人だかりができている事に気づいた。
そこには手枷や首輪を付けられ、薄汚れた格好をした様々な種族がいた。獣人が多い。
競売人のような男が、『商品』として紹介する声が響く。
「あれって...もしかして...」
隣をみると、さっきまで元気良く話していたミントが、耳を垂らし、悲しげな表情でその光景を見つめていた。




