14. ケモ耳娘、ミントとの邂逅
そういえば今使える魔法は「ファイアボール」の「ウォーターボール」だけだが、もしかして今の俺ならほかのも使えるのか?
少し悩んだ末、そもそもほかの魔法をほとんど知らなかったことを思い出す。
俺が使えるのは火と水、つまり…。
「プロミネンス」だ!
あれが確か火属性!
…王級魔法を使えるわけないだろ…。
そんなことを考えていると俺の魔力探知に何かが反応する。
1体だけか。
まぁちゃちゃっと倒して早く行こう。
茂みを分け、木の裏を見るとそこには人型で緑色、そして豚のように肥えた腹を持つ魔物がいた。
うん、これゴブリンじゃないね。
これ、オークだ。
オークってDランクだよな…。
終わった、勝てるわけが無い。
エルダの話を思い返す。
確かオークはDランクパーティが組んで勝てる、Cランクがギリ単独で勝てる位だったはず。
スチールリリーの3人は華麗な連携で倒してたけど、俺1人じゃ無理だ。
よし、逃げよう。
『パキッ』
え?
足元を見れば、木の枝を踏んでいた。
さっきの音は折れた音ということだ。
これってつまり…。
振り返ると、オークと目が合った。
俺の存在に気がついたオークは獲物を見つけたかのようにこちらへ来る。
これは戦うしかない…!
剣を抜き、構える。
出し惜しみはなしだ、こいつを倒してかつちゃんと魔力が残るように…。
魔力を込める。
あの時教わった感覚。
魔法剣自体も自分の武器だと思え。
オークが腕を振り上げ、こちらに振り下ろしてくる。
「喰らえ!」
オークの腕に攻撃を合わせる。
燃え盛る剣がオークの腕を斬り裂きながら弧を描く。
行ける!この剣の斬れ味なら勝てる!
イリスのゴーレムをちょっと斬れるこの斬れ味なら!
と思ったら剣の炎が消えた。
やべ、調節ミスった。
もう片方の腕を大きく振り上げるオーク。
受け止めるしかない…!
重い一撃が全身にかかる。
これはちょっとまずいな。
魔法剣に魔力を込めすぎて魔力も少ない。
てかそもそも押し返せない。
神様、また会いましょうね…。
「そのまま耐えて!」
背後から声が聞こえてくる。
女性の声?
誰か確認したいが、動けない。
耐えるので精一杯だ。
そう思っていると視界に青い髪、そして耳やしっぽが映る。
次の瞬間、オークのかけていた重圧が軽くなる。
どうやら援軍と認識して良さそうだ。
「トドメお願い!」
その声と同時にオークの顔面に蹴りが飛んでくる。
そして、オークの体が大きく仰け反る。
…え、俺がトドメ刺すの?
いや、大丈夫だ。
残りの魔力を全部詰め込んでいい。
今ならぶっ倒れても大丈夫だ。
魔力を込めろ。
「これで、トドメだ!」
振り下ろした火を帯びた剣がオークの腹を斬る。
返り血を浴びつつも、オークが動かないことを確認。
た、助かった…。
「君、大丈夫?」
そう声をかけながら手を差し出してくる。
その方を見れば青い髪に頭には耳、背後にはゆらゆらと揺れるしっぽが見えていた。
もしかして…獣人!?
初めて人間以外の種族を見たが、こんな感じなのか…。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
感謝をしながら手を取る。
オークの方をちらっと見たが、アキレス腱が綺麗に斬られている。
多分、この人がやったんだろう。
「タメ口でいいよ。私はミント」
ミントはそういいながらさっき使ったであろう短剣の血を拭う。
彼女の武器はそれなのか、ということは職業はシーフとかか?
「えっと…とりあえずタメ口で、俺はユージ。Dランク冒険者」
「Dランクかぁ。災難だったね、私が来れてよかった」
オークの素材を取りつつ、軽く自己紹介をする。
本当に助けてくれて助かった。
多分1人だったら死んでたし。
というか後ろでずっと待ってるけど、俺なんかした?
もしかしてオークの素材寄越せってこと?
オークの素材を取り終えるとミントが話しかけてきた。
「じゃあ行こっか」
「え?どこに?」
そう言い返すと後ろから商人らしき人が走ってくる。
「こ、困りますよミントさん!護衛の依頼しっかりしてるんですから!」
なるほど、話がだいたい読めてきた。
ミントは護衛をしていたところ、俺がオークに苦戦しているところを発見。
依頼をほっぽり出してきてくれたのだ。
俺にとっては凄くありがたい。
商人はこちらを見ると少し考えた末、話しかけてくる。
「えっと、あなたも冒険者の方ですか?」
「そうですよ。ユージです」
「ちょうど良かった!報酬は払うので、良ければ護衛をお願いできませんか?この方…ミントさんだけだと不安で…」
たしかに、依頼をほっぽり出してこっちに来るレベルだ。
そんな人に任せるのはちょっと怖いだろう。
報酬が貰えるならこちらとしても非常に嬉しい。
「一応行き先を聞いてもいいですか?」
「港町、ヴェルマリーナです。今そこに届ける内陸の食糧を運んでいるところで」
それは好都合だ。
俺もヴェルマリーナに行く予定だし、報酬まで貰えるなら御の字だ。
しかもミントが居る。
1人で行くより遥かに安全だろう。
「その依頼、お受けします!」
ということで依頼を受けることに。
依頼自体は護衛と簡単なもので、魔物が馬車を襲ってこない限りは基本スルー。
素材が取れないのはちょっともったいない気はするが、報酬が出るし我慢しよう。
「ねぇねぇユージ。ユージはヴェルマリーナまで行って何するの?」
集中力が早速切れたのか、ミントが話しかけてくる。
護衛だから話さない方がいいのか?
ちらっと商人の方を見るが、特に気にしていないらしい。
ちゃんと護衛すればいいってことか。
「船に乗って大陸渡って、ゼファーノスに行く予定だよ」
そう伝えるとミントは耳をピコピコする。
なんか嬉しいことでもあったのか?
「私も船に乗ろうって思ってたんだ。しばらく一緒だね」
そういうとニコッと微笑んできた。
もしかして俺のこと好きか?
と思ったが、そんなことは無さそうだ。
なぜなら商人とも同じ感じで話していたから。
俺じゃなかったら惚れてたね。
日が傾いてきたため野営の用意を始める。
ミントはかなり慣れてるのか素早く用意を終えていた。
簡易結界は商人が持っていた魔道具で貼ってくれ、なんならご飯までくれた。
え、もしかして俺ってお荷物?
見張り番をミントと交代でやりつつ、無事朝を迎える。
交代と言っても途中からミントが「私が見てるから、寝てていいよ?」と言ってくれたため甘えることにした。
もしかしなくても俺ってお荷物?
商人が起き、支度を済ませて馬車に乗る。
ミントと雑談をしながら依頼をこなす。
道中ゴブリンだったりが襲ってきたが、ミントが思っていたより強く俺は何もすることがなかった。
速いってだけで相当な武器になるんだな…。
そんなこんなで魔物が姿を見せなくなり、街が見えてくる。
塩の匂いがする。
ヴェルマリーナ、他の街との貿易が盛んな港町。
商人を指定場所まで送り届け、報酬を受け取る。
なんと銀貨5枚!
ご飯も貰って馬車に乗せて貰って、俺何もしてないのにこんな貰っていいんですか?
とりあえず、この町を見て回ろう!
そう思っているとミントが話しかけてきた。
「良かったら一緒にご飯、食べに行かない?」
確かにお腹が減った。
まずは腹ごしらえだ!
そうしてミントと共に海沿いの料理屋へと向かう。
重大な問題が発生するとは知らずに…。




