13. 港町へ出発
イリスに発見され、ギルドに戻った後、俺はギルド内でしばらく休憩していた。
フロストはパーティメンバーにものすごく心配されたという。まあ、元はといえば俺が討伐依頼に誘ったのが原因なのだが…そのことは全く気にしていない様子だった。フロストは本当に優しいな。
それにしても本当に疲れた。やはり森は危険だな。
そんな事を考えていたら、ギルドの受付嬢に呼ばれた。
「ギルドマスター様がお呼びです!」
とのこと。また何かあるのか? と思いながら奥の部屋に入っていった。
「ユージ、きた」
勿論そこにはイリスがいた。
「話がある。だから呼んだ」
「話ってなんだ?」
「冒険者ランクをDにする。特別推薦。魔法の手際良かったから」
「本当か?」
「本当。ユージはDでもやっていける。あと、海を超えるんでしょ?」
「ああ、何故それを?」
「おじいさんから聞いた、資料館の。Dランクじゃないと、船に乗れない、危険だから」
そうだったのか、まあ海って色んな魔物がいそうだし、納得である。
「貸して、冒険者カード。手続きをする」
「わかった」
そう言って冒険者カードを手渡すと、イリスは部屋から出ていった。
しばらく待っていると、イリスが戻ってきた。
「はい。Dランクにしてきた」
返された冒険者カードを見ると、しっかりとDランクと上書きされている事がわかった。ようやく一人前に慣れた気分で少し嬉しい。
そして俺は思い出したかのようにイリスに提案した。
「海を越えて、王都から戻ってきたら…俺と一緒にフローディアへ旅しないか…?」
フローディア。イリスとエルダの出身である国。シンプルに雪景色が見たいのもあるが、何よりも、イリスとエルダの過去について知りたい。そう思った。
「旅…」
「ダメか?」
いや、よく考えたら結構ヤバいことしてないか? 成人男性が結構年下の女の子と二人で旅をしようと誘うって…決してロリコンってわけじゃない。ただ、色んな話が聞きたいだけだ。決してな。
「わかった、いいよ」
イリスは少し笑っていた。イリスが表情を変えるのは初めてみたような気がする。この世界に来て一番のいい景色かもしれない。
「ありがとう!」
「でも、仕事が忙しいから。時間がかかる、準備。帰ってきたときに終わってなかったらごめんね」
「大丈夫だ!」
「ありがと」
イリスはどことなく嬉しそうだった。おそらく、初めて旅に誘われたんだろう。まあこんな幼いギルドマスターを誘おうなんて思うやつはそもそもいないだろうが…
何はともあれ、これでこの街ともお別れだ。いい意味でも悪い意味でも色々あった。でも楽しかった!
俺は街を出る前に、2日分の非常食を銅貨6枚、そして一晩過ごせる用の簡易結界を貼れる魔道具2つを銀貨2枚で購入した。これで準備はバッチリだろう。
街を出ようとした瞬間、見覚えのある3人組の姿が見えた。スチールリリーのみんなだ。
「ユージ!港町に向かうんだって?」
「ああ」
「俺らはまだこの街に残るが、魔物には気をつけろよ!」
「ユージさん、応援してますよ!」
「みんな…」
…やっぱりこの街に来てよかった。色んな人と出会えた。この街を紹介してくれたエルダに感謝だな。
「いってきます!」
そう元気に挨拶をして、俺はスィートピィを出た。
久々の一人旅だ。まあ一週間程度しか経ってないが。というかイシュリアから出たときもほぼ4人行動だったもんな。魔物とも出会わなかったし。
今となってはいい思い出だ。まだ思い出に浸っているのかと思われるかもしれないが、旅というのはそういうものだろう。
あの頃とは違って、魔法剣や魔法も複数扱えるようになっている。そこらへんの魔物なんかに負けたりしないぜ!
そんなことを考えながら歩いていくと、早速ゴブリンが3匹ほどこちらに近づいてきた。
「ファイアボール!」
早速腕の見せ所。一匹のゴブリンに命中。俺はそのまま残りのゴブリンめがけて走り出し、思いっきり剣を振り下ろした。残った一匹もそのまま剣でぶった斬ってやった。今更ゴブリンくらいなんともないな。属性剣は消費魔力が激しいのでゴブリン程度には使えない。
ゴブリンの素材は一応回収しておいた。少額だが得れば金になる。
大した魔物も現れないまま、数時間くらい歩いただろうか。そろそろお腹が空いてきたので、非常食を食べる。相変わらずの味だが、生活魔法のファイアで少しだけ焼くと風味だけ出ることに気付いた。ちなみに一回やりすぎて焦がした。一応食べましたよ。不味かったけど。
道中にはスライムなんてのもいた。正直ゴブリンと変わらないような気もするが、剣が当たりにくい分やりにくかった。しばらく戦っていくうちに、水魔法で溶けることに気付いたので、それで対処している。スライムの素材は魔石だけ回収している。ゴブリンよりは希少らしい。
うーん、まだまだ先は長いな。




