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12/22

12. 前方の友、後方の過去

 チュンチュン

 チュンチュン


 みんな、おはよう。

 俺はいつも通り小鳥のさえずりで目を覚ます。

 そういえばこの世界にもスズメやカラスなどはいるのだろうか。


 イリスのおかげで魔法剣と魔力探知を使えるようになった。

 いやー、イリスのレッスンは本当にすごかったな。

 なにかに目覚めそうになった。

 俺はロリコンではない。

 とまあ昨日の出来事のおかげで前と比べて格段に自信がついた俺だが...。


 お金が無い。

 そう、お金が無いんです。

 昨日使った額は魔法剣(金貨1枚)、サンドウィッチ代(銅貨1枚)、宿代(銅貨3枚)。

 今の手持ちは銀貨6枚と銅貨6枚。

 金がねぇ。


 次の目的地である港町のヴェルマリーナまでの資金調達も兼ねて依頼でも受けるか。

 朝の身支度を済ませ、いつも通りの朝食であるパンとスープをいただく。

 さあ、ギルドへ行くぞ!


 ギルドに到着した。

 辺りを見渡すとそこには...フロストがいるじゃないか。ちょうどいい。この前、討伐依頼を受けようとしたところダンジョンに行くことになったんだよな。

 なら、今日フロストを誘って討伐依頼を受けることにしよう。


 「フロストさん、おはようございます」

 「ああ、ユージさんですね。こんなに朝早くにどうしたんですか?」

 「フロストさんこそなんでここに居るんですか?」

 「私はパーティの皆さんのためにお金稼ぎでもしようと思ってですね」

 「なら丁度いいです。この前、討伐依頼を受けられませんでしたよね。なら今日一緒に行きませんか?」

 「いいですね。どの依頼にしますか?」


 フッフッフ。こいつは俺が今どれだけ強くなったのか知らないのだろう。

 きっと驚くだろうな。一晩で魔法剣や魔力探知が使えるようになってんだから。魔力探知はフロストには及ばないだろうが。


 「ゴブリンの群れとかいいんじゃないですか?ユージさんはEランク、私がDランクなので丁度良い難易度だと思いますよ。まあ私が本気を出せばEランクなんて私1人で倒せますけどね」


 今の俺なら一人でEランクの魔物を倒せるぐらいの実力があるんじゃないのか?まあ、試してから判断しよう。今調子に乗ってるといずれ痛い目見るからな。


 「生息地は森ですね。ユージさん、Eランクの依頼だからって決して油断しないように。森にはCランクのオーガが潜んでいる場合もあるみたいです。まあ、死ぬほど運が悪くなければ大丈夫ですよ」


 こうして、俺とフロストはスィートピィの街の外れにある森へと向かうことになった。



 森では木の葉が生い茂っており、天井からは僅かな太陽の光がジメジメとした土を照らしている。

 あまりにもこの森が生い茂りすぎているせいでほぼダンジョン内みたいになっている。日光がほぼ入ってこないせいか少し肌寒い。ここは魔物の住処にピッタリな場所のようだ。


 「よくあるんですよ、こういう森。この木は繁殖力が強い種類なので葉がこんなにも生い茂っているのです。一気に葉を綺麗に整えられたらいいんですけどね。ユージさん、放火はダメですよ。」


 フロストに魔法剣を見せたかったんだけどな。森で火を使うのはさすがにダメか?いや、逆にジメジメしすぎているから大丈夫だろう。


 「ところでユージさん。その剣は魔法剣ですよね。どこかで購入したのですか?」


 「イリスとの取引で金貨1枚で買うことにしました」

 「イリス...?」


 フロストは少し時間を置いた後、全てを察したようだった。


 「ユージさんはイリスさんと相当仲が良くなった見たいですね」


 未だにイリスに名前を覚えられていないフロント。可哀想に。俺はイリスとあんなことやこんなことまでしたからな。そういう面では俺の方が上かも。ちなみに俺はロリコンではない。

 「そういえば、私との会話もタメ口でいいんですよ」


 マジか!

 やっとフロストに敬語使わなくて良くなる!

 お言葉に甘えて!これは素晴らしい進展だ!


 「じゃあお言葉に甘えてそうする。フロストは俺に対して敬語のままでいいのか?」

 「全然大丈夫ですよ。むしろこっちの方が人と話しやすいんです」

 「そうだフロント、昨日イリスに魔法剣の使い方と魔力探知を教わったんだ」

 「それは凄いですね。一晩で?」

 「ああ」

 「ユージさんって意外と魔法の才能があるんじゃないですか?剣と魔法のハイブリッド、かっこいいと思います」


 こいつが言うと何故か馬鹿にされている感じがする。


 「では魔力探知を使ってゴブリンを見つけてみますか?」

 「そうだな」


 魔力を感じろ。体で感じるんだ。


 感じる。ゴブリン並の弱い魔力。

 前方約50m先に5体のゴブリンの魔力を感じる。

 てか、俺の魔力探知は半径50mが限界のようだ。まだまだだな、俺。


 「フロスト、frontにゴブリンの群れが」

 「分かりました。早速倒しに行きますか」

 「いや、ここはユージさんが1人で戦うべきでは?その魔法剣とやらを見せてくださいよ」


 そうだな。俺の実力を見せる時が来た。魔法剣。昨日イリスに教えてもらった。剣に火を宿らせる。


 「ユージさん、火を使うんですか?まあ木に火が移っても私がすぐ水魔法で消化するので大丈夫ですよ。気にせずやっちゃってください。ユージさんの実力を試す、ということで私は少し離れた場所から見守ってますね」


 こうして、俺は1人でゴブリンの群れを討伐することになった。これが終わったら一応依頼は完了だ。1人だけでゴブリン5体を相手するのは何気に初だな。頑張ろう。

 

 流石に1対5では少し怖かったので奇襲を仕掛けることにした。草むらからこっそりと。こっそり、こっそり。


 今だ!

 俺は草むらから飛び出し、魔法剣に火を宿らせゴブリンの肉をぶった斬る。

 火の影響もあり、いつもよりスっと斬ることができる。

 5体のゴブリンのうち、1体を倒すことができた。が、この後残された4人は完全に戦闘態勢に入り俺のことを睨みつけてくる。


 次の瞬間、4体のゴブリンが一斉に俺を目掛けて走ってくる!なんかキモイ!


 とりあえずそれっぽい動きをすれば倒せそうな感じだった。


 「回転斬りィ!」


 俺は火属性の魔法剣で回転斬りをする。

 火がゴブリンたちの肉を焼き切り、スムーズに4体一気に斬ることができた。少し焦げたような匂いがする。ゴブリンの肉って食べれるのだろうか。いや、まだ依頼が終わっていないのに意味不明な話はするべきでは無い。お家に帰るまでが依頼なの!って、帰る家ありませんでした。


 ゴブリンの群れを倒すと、少し離れた場所から俺のことを見守ってくれたフロストが俺目がけて走ってきた。さっきのゴブリンと走り方が同じだ。


 「ユージさん!やりますねぇ!」

 「いやーそれほどでもぉ」

 「ユージさんはもう私と同じぐらいの実力があるのでは?Dランク冒険者になるのは近いですね。まあ、中級魔法を覚えていないユージさんはまだ私には及ばないでしょうけどね」


 ぐっ....

 悔しい。

 魔法に関しては何も言い返すことが出来ない。でも俺はその分剣が使える。フロストが握ることも出来ない剣を俺は使うことが出来る。そう考えると悪い気はしないな。お互いライバルって感じでいいな。


 そう考えていたら、予想だにしないことが起こった。


 「ユージさん!強大な魔物がこちらへ全速力で向かってきています!」


 生い茂る葉がザワザワと音を立てる。


 もう既に目の前に来ていた。

 脅威度C、オーガ。


 「私達では勝てるはずがありません!ユージさん!逃げますよ!」


 「ユージさん?!」


 足がすくんで動かない。目の前にこんな大きな魔物が来たら怖いに決まっている。


 怖い。怖い。怖い。死にたくない。


 「ユージ!」


 フロストに名前を呼ばれると同時に杖で頭をそこそこ強い力で叩かれる。

 我に返った気がした。

 そうだ、命は一度きりしかない。

 俺は、生きるんだ。


 「ウォーターボール!」


 俺はオーガの顔面にウォーターボールを命中させる。ダメージはないようだが、目眩しにはなる。


 「ユージさん、ナイスです!」

 「次は私の番ですね!アースリクイド!」


 オーガの足元に泥沼が生成される。


 「アイシクルランス!」


 泥沼+氷のガッチガチの足止め。長くは持たなそうだが。


 「ユージさん!今のうちに逃げますよ!」


 俺とフロストは全速力で走った。無我夢中で死ぬほど走ったからなのかオーガはもう追ってきていなかった。

 しかし、どうしたものか。


 「ユージさん、私達は遭難してしまったようですね」


 俺達はただオーガから逃げることを考えて走ったため、どの方向から来たのか全く分からなくなってしまった。

 日は落ちかけ、もう夕方だ。


 「今日はもうこのまま夜を迎えることになるでしょう。幸い、私が結界魔法を使えるので寝ている間は安心です。あとはどうやってスィートピィに帰るかですね。それは明日の朝考えましょうか」

 「本当に災難だったな」

 「そうですね。ましてや基本FかEランクしか生息していない森にCランクがいるとは。こんなこと私も初めてですよ」


 はぁ、疲れた。

 今日は野宿だな。


 完全に日が落ち、辺り一面真っ暗になる。

 フロストが結界魔法を張り、そこら辺にあった木の棒で焚き火を作る。


 「ユージさん、私達は何も持ってきていないので土の上で寝ることになりますよ」

 「そうだな」


 土の上で寝ることになるのか。まじで嫌だ。

 いや、いざ横になってみると意外と心地いい。

 土はヒンヤリとしていて、思ったより硬くない。

 フロストは俺の真横で横になっている。


 沈黙が続く。眠い。


 寝そうになったタイミングでフロストが口を開く。


 「私の出身地は王都ゼファーノスです。私には17歳の妹がいて、王都の王立魔法学校へ通っています」


 フロストに妹がいるなんて意外だ。王立魔法学校へ通わせてもらえる家庭とか相当良い家庭なんじゃないか?貴族とかか?


 「フロストも魔法学校に行ったんだよな?どんな事を学んだんだ?」

 「いえ、私は行っていませんよ」


 なんか地雷を踏んだ気がする...


 「私の家庭は魔法に関して本当に英才教育でして。生まれた時から適性属性検査をするんです。私が2属性持ちだってことは知っているでしょう?私が5歳の時、妹が産まれました。妹は3属性持ちでした。どうやらそこから私は家庭内での兄弟の格差というものを感じるようになっていきました。私の父と母は出来損ないには何もしてくれませんでした。まあ、これに関しては私が悪いというか」


 フロストの過去は壮絶なものだった。いままで馬鹿にしてごめん。


 「いや、フロストは悪くない。どんな親でも平等に育てるのが親だ。」


 「・・・・・・・・・・・・」


 沈黙が続く。

 「私が18歳の時に妹が魔法学校に入学することが決定し、私は要らない人間だ、ということで追い出されてしまいました。自分でも魔法学校には行けないと分かっていたので、家で独学で水魔法と土魔法の練習をずっとしていました。まぁ、それでも両方とも中級までしか使えませんけどね。これが才能ってやつですよ。路頭に迷った私は、このまま王都でうろうろしてると家柄の名誉に関わると思い、船に乗り、スィートピィへ行くことにしました。そこでクレイブさんに拾われたんです。クレイブさんは魔力を持たない状態で生まれたそうですが、それでも頑張ってCランク冒険者になった立派な人ですよ」

 「ほえー、フロストも苦労してるんだな」

「それで、私は今のスチールリリーに参加することになったんです」


 今のフロストには打ち明けられる気がする。

 俺が地球から異世界に来たこと。

 言い換えると俺が異世界からこの世界に来たこと。つまり転生者だということ。

 信じてもらえるとは思っていないが、フロストはもう一夜を共にする仲だから言うことにした。


 「フロスト、俺実は異世界からこの世界に来たんだ。前の世界で死んで、この世界に転生したんだ」


 信じてもらう必要はない。誰かに伝えたかった。

 今、最も身近にいる人に伝えたかった。


 フロストは真剣な顔をしてこう言った。


 「ユージさんも苦労してるんですね。困った時はお互い様ですよね。何かできることがあれば協力しますよ!」


 あぁ、フロスト。俺はお前のことが好きになってしまうよ。

 なんて言っているうちにいつの間にか寝てた。寝落ちしてたわ。



 ツンツン、ツンツン、と何かに体をつつかれる。

 目を開くとそこには可愛らしい少女が。もしかして天国?俺は死んだのか。

 って!イリスじゃん!


 「イリス!?」

 「おはよう、ユージ、フロント」

 「イリスさん?何故ここに?」


 辺りはすっかり明るくなっている。もう朝か。

 ところでイリスは俺達のことを助けに来てくれたのか?


 「捜索届けが出てたの、スチールリリーの2人から。だからきた。居場所はすぐ分かったよ、魔力探知で。」


 イリスの魔力探知、どんだけ広いんだよ。あのオーガのことも瞬殺したのだろう。

 ともあれ、助かった。本当に良かった。


 こうして俺達はギルドへ戻ることになり、ゴブリン5体分の報酬である銀貨5枚を受け取る。

 フロストに「報酬は分割でいいよ」と言ったが、「このゴブリン達はあなたが倒したんですよ」と言って受け取るのを断られた。


 銀貨5枚か...。ショボい気がするが、今回の討伐依頼は本当に良い経験になった気がする。フロストとも更に絆が深まった気がするし。


 現在の所持金は銀貨12枚と銅貨6枚。これからどうするか。

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― 新着の感想 ―
フロスト過去重すぎて泣いた…… 3属性妹に負けて家追い出されるとか、馬鹿にしてた分罪悪感やばい
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