11. ギルドマスターと魔法の基礎
訓練場まで来たが、ぶっちゃけこの広さでAランクの魔法に耐えられるのか?とも思う。
「じゃあ、待ってて。準備するから」
そう言うとイリスは地面から岩のゴーレムを作り出したり、何かの機械を置いたりしていた。
「今置いたのってなんですか?」
「結界を張るやつ。結界魔法苦手だから、私」
驚いた。
たしかに人には向き不向きがあるが、まさかAランクでも苦手なものがあるのか。
「あと、タメ口でいいよ。堅苦しいから、敬語。ユージの方が上でしょ?年齢。16だし、私」
確かに、Aランクだから敬語使ってたけど、年齢的には俺の方が年上なのか。
とはいえ相手はギルドマスターだし…。
いや、そのギルドマスターが言うんだ。
敬語はやめた方がいいな。
「じゃあ、遠慮なく」
満足したのかイリスはゴーレムの方を向く。
「じゃあ、始めよう。とりあえず見せるね」
え?何を?
「王級魔法を」
え?は?
「プロミネンス」
そういいながら片手をゴーレムに向ける。
その手からは炎が現れ、鞭のようにまとまる。
幾本ものそれが先程作っていたゴーレムを粉々に引き裂いた。
えぐすぎる、これを喰らったであろうダンジョンマスターは本当に可哀想だ。
粉々になったゴーレムの断面を見れば赤く焼け爛れている。
再びゴーレムを作り出し、イリスはこちらに向き直る。
「じゃあ、やって」
…今のをやれと?
いやいやいや、無理だろ。
何だよ今の、誰が真似できんだよ。
てかこれに耐えれる結界すごいな。
「...すみません先生、できません...技術というか、練度的なあれで...」
イリスは首を傾げる。
いやわかるだろ、俺Eランクだぞ。
「じゃあ、何しに来たの?」
エルダよ、なぜこの人に紹介したのだ。
もう少し段階を踏ませてくれよ。
いきなりAランクに教わるのは無理だって。
そう思いながら剣をゴーレムに向ける。
頼む神様、今だけ地獄の炎、ヘルフレイムレベルにしてくれ。
「ファイアボール!」
剣先に形成された火の弾がゴーレムへと向かい、儚く散った。
そりゃね...Aランクの作ったゴーレムだもん...。
鼻で笑われてもおかしくない。
フロストのせいで失敗が怖いよ…。
「ユージは間違ってる、認識を。魔力は身体。道具じゃない」
そう言うとイリスは手を握ってきた。
え?モテ期?でも俺はロリコンじゃなくて…。
と思ったが、手のひらから何かが流れてくるような感覚がする。
これって...。
「流してる、魔力。感じる?」
温かくて、心地が良い。
手のひらから感じる。
これが魔力?
魔法を使ったとき変に疲れる感覚はあったが、魔力が外に出ていたからか。
「魔力は身体の一部。流すのも、外に出すのも、身体を動かすのと一緒。目を瞑って、もっと感じて」
なんかエッチだな...。
イリスから流れてくる温かい魔力が全身に渡る。
体が少し軽くなった気がする、多分。
「魔力が詰まってた。もしかして初めて?魔力流し。普通は親とやる、幼いとき」
それを言われて納得。
転生してきた俺はその魔力流しをやってない。
いや神様、そのくらいサービスしてよ。
「良かったね、初めてが私で」
だからなんかエッチだって。
「おじさん...エルダだった、私は。魔力が雑、あの人。だから痛かった。ユージは痛くないでしょ?」
なるほどそういうことか。
俺は自分が恥ずかしいよ...。
待てよ?エルダは独身って言ってたよな。
でも、魔力流しは親とやるものだろ?
「普通は親とやるんじゃないのか?」
少しの沈黙。
もしかして地雷踏み抜いた?
イリスは手を離す。
「ゴーレム、壊せたら話す」
話したくないのか、話したいのか、よく分からない。
誰かに聞いて欲しいのか?
いや、壊せないと思って言ってるのか?
でも、今なら壊せる気がする。
「ファイアボール!」
先程より何倍もの大きさの炎ができ、それを放つ。
これが初級魔法?もしかして、俺才能ある?
と思ったけどあれか、さっきイリスから魔力を受け取ったから…。
イリスの方に向き直ると、ポツポツと話し始めた。
「両親は、もう居ない」
やっぱり、話すつもりだったのか。
聞いて欲しかったのか?
「死んじゃった、生まれた時か1歳の時か。だから拾ってもらった、オジサンに」
なるほど、エルダは独身と言っていたし、そういうことなら納得ができる。
まぁエルダが人攫いの可能性…はないか、俺も良くしてもらったし。
「隣の国、フローディアにいたの、元々は。両親が死んで、エルダとこっちに来た」
だから2人は知り合いだったのか。
エルダが親代わりだったから紹介とかもできたと。
というかエルダは先に言っといてよ。
「次はユージの番。してよ、元の世界の話」
なんで知ってるの?
あぁ、エルダの手紙に書いてあったのか。
いや普通に書かないでよ…。
そこから俺は自分のことを話した。
元の世界に興味があるらしく、それについても聞かれた。
興味があるのはこの世界でもほとんど旅をしたことがないからとの事。
16歳という年齢でギルドマスターになった裏では、多分相当過酷な訓練をしていたのだろう。
また、話している間にも魔力を受け取って放つ、魔力を受け取って放つ…と魔力を流すのに順応するトレーニングを続けた。
何発も撃ってて思ったのだが、まじでイリスの魔力量が半端ない。
多分俺1人だったら気絶してる位は撃った。
話が一段落ついた頃、イリスが口を開く。
「慣れたでしょ、そろそろ。次の教える」
次…ということは魔法剣か?
イリスはゴーレムに剣を持ってこさせ、それを手に取る。
俺も魔法剣を手に持つ。
「魔力流しの応用。剣に魔力を流す。そうすると、適性属性が出る」
そういいながら剣を前に出す。
剣が白い雷をまとい、パチパチと音を鳴らす。
雷…つまりイリスは雷属性も持っているのか。
ゴーレムの土?岩?と、プロミネンスの火、それに雷まで…。
フロストと違って本当の天才なんだろう。
「ただの剣に流すのは難しい。できるのは私とか、Aランクレベル。けど、魔法剣なら簡単。ユージでもできる。魔力を渡す感覚」
何となくわかった。
さっきまでの感覚。
魔力を込める。
すると、剣が燃え出す。
これが魔法剣…!
「ちっちゃいね、火。もっと込めていいよ」
無茶言わないでよ、初めてなんだって。
そう思いつつもイリスはできると思ってるんだろう。
つまり、頑張ればできるということ。
込めるぞ…俺のありったけを!
そして、ぶっ倒れた。
これ沢山込めようとしたら魔力すぐ枯渇するくね?
てか魔力消費おかしくね?
「あ、ごめん。そっか。私基準で話してた」
ふざけんな。
全員が全員化け物だと思うなよ。
イリスに魔力をまた渡してもらい、再度挑戦。
少しづつ、やりすぎないように。
最初と同じくらいの火に抑えることに成功。
調節はかなりできそうだな。
「それを維持しながら、振ってみて」
俺は魔力を込めながらゴーレムを切りつけた。
魔法剣はゴーレムにくい込み、抜けなくなる。
え、詰んだ?
イリスがゴーレムを解除してくれて剣は事なきを得た。
でも、あのゴーレムを少しとはいえ斬ることが出来た。
「わかる?切れ味もあがったの」
イリスの言う通り、魔力を込めると属性が付与される他、切れ味も上がるみたいだ。
「素振り、もう少ししてみて」
剣を振る度に何となく魔力を流すコツがわかる。
剣が凄いのか?
これを金貨1枚って相当破格だな…。
「じゃあ次の教えるね」
え、まだ教えて貰えるの?
「魔力探知。できる?」
魔力探知…あぁ、リリアがオーガを察知してたあれか。
当然ながら、俺にはできない。
そう伝えるとまぁそうだろと言った顔をしながら少し考える素振りをする。
「わかった、しよう。かくれんぼ」
かくれんぼって…かくれんぼ?
ダメだ、分からなすぎて考えがまとまらん。
イリスにちゃんと聞くと、子供が魔力探知を練習する際にするものらしい。
なんか、子供がやることを今やってるってのがすごく心にくる。
イリスは俺を後ろに向かせると30秒数えてと言ってきた。
その直後地面が揺れたりバカでかい音が鳴ったりしていて怖かったが、無事30秒数えられた。
振り返ると、地形が変わっていた。
やばい、規模が違う。
王級魔法といい、なぜこうも規模がやばいのか。
「イリス?探すぞ?」
返事は無い。
そりゃそうか、返事したら場所がすぐわかっちゃうしな。
とりあえずがむしゃらに探したが、全然見つからない。
土の中に隠れてるとかの可能性もあるのか?
ってことは、魔力探知をしなきゃいけない。
いやコツ教えてから始めてよ。
まぁ文句を言ってもしょうがない。
さて、どうするか。
そう思っているとあることを思い出す。
リリアは強い魔力が近づいていると言っていた。
そして、イリスの魔力はさっき受け取った。
あの魔力を探すだけ…。
…これって…後ろ?
「正解」
後ろを振り返ろうとする前にイリスが声をかけてきた。
めちゃくちゃびっくりした。
てか心読めてるの?
怖いんだけど…。
「ずっと後ろにいたのか?」
「うん、雷身流っていうスキルの応用。ずっといたよ」
魔力が多いイリスだから気がついたけど、これ普通の魔物だと無理じゃね?
と思ったが、一度経験したからかなり感覚として覚えられたらしい。
イリスが他の場所に隠していた魔道具も意外とあっさり見つけることが出来た。
イリス曰く俺は「器用貧乏」らしい。
やかましいわ。
そんなこんなで日が暮れてきた。
イリスは訓練場を元に戻すと、結界を張っていた機械を手に取り、こちらに来る。
「じゃあ終わり。また教わりたかったら来て」
そういうと彼女はギルドへと戻って行った。
正直今日だけでかなりいい収穫ができた。
これならDランクにもなれるのでは?
とりあえず、初めてのことを沢山したからか体がだるい。
今日はゆっくり休むとしよう。




