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第一章 第七話 河賊来襲② 〈交易都市【伊那(いな)】②〉

 「では貴方は、現在記憶を失っていると云う事で間違い無いのですね?」


 「ええ、その通りで間違い有りません」


 別に詰問している訳では無いのだが、突拍子も無い話しを聞かされてしまい、【源蔵】は戸惑ってしまって言葉の調子が問い掛ける形になってしまう。


 周りには一緒にその戦いを見ていた同僚だけが居るので、交易都市【伊那いな】の行政官達の様な何時も大商人達から袖の下を渡されて腐っている連中とは違い、此の偉丈夫を状況も判らず断罪する様な連中はいない。


 なので、本来は真実を伝えるのが仕事の報告偵察専門の部下には、行政庁に伝える戦況には敢えて此の偉丈夫の事を秘密にし、我々だけで河賊を追い散らした事を報告させた。


 此の偉丈夫を護るべく、幸い戦場を見ていた人間は都市防衛隊の連中だけであるので、人目に触れないように配慮して、【源蔵】と同僚たちの待機場所である都市防衛隊の屯所に迎え入れた。


 さて、此の偉丈夫を歓待しようじゃないか!




◇◆◇◇◆◇


 


 時間を暫く遡る


 彼は交易都市と思われる結構広大な街を見て、其処へ至る街道を進む内に多くなる人間を観察する事で、膨大な情報をドンドンと得て行き、更にはそれを高速で咀嚼した上で、情報を整理して行った。


 その情報の中で非常に有り難いと思えたのは、彼等人間と思われる存在の姿形が、ほぼ自分と同様だという事実だ。


 当初は人間と遭遇する前に道脇に生えている繁みに忍んで観察し、どうやら自分とよく似ていると判断し、かえって隠れていると何時か感の良い人間に訝しまれると考え、いっそ堂々と彼等と同様に街道を進みながら情報を得ようと行動する事にしたのだ。


 その次に助かったのは、彼等の話す言語が自分の思考に使用する言語に比較的に近く、精々のところ標準語と方言くらいの差でしか無かった事実だ。


 お陰で、彼等が様々に会話している単語を咀嚼して、地名や現在の状況を確認して行ったのだが、交易都市らしき街に近付いて行くと、どうにも物騒な気配が街の方から漂って来る。


 それに気が付いている人間は少数だったが、街の方から逃げてくる人々が現れた事で、街道を進む人々に衝撃が走る。


 逃げてくる人々が説明してくれたが、どうやら交易都市を河賊と呼ばれる賊が、川側から船を乗り付けて交易品である様々な物品を奪うために来襲しているらしい。


 お陰で交易都市は城門を閉ざして、陸側からの流入も禁止しているらしい。


 しかし、当然な話しだが、交易都市に実家が有る人々も多いし、家族を残している人も多い。


 其れ等の人々の波に乗る事で、違和感無く彼は交易都市に近付くことが出来て、彼等が街には入れないながらも集まって待機する場所まで同行し、其処でも様々な情報を得る事が出来、有益な情報を幾つも得てから彼は、交易都市に無断で侵入する事を決断した。


 どうやら交易都市に入るには、鑑札と呼ばれる許可証という物が必要らしく、そもそも自分の出身地を示す証拠が一切無く、自分の名前すら思い出せない自分では、何の証明も出来ないので鑑札を得ることは不可能に近い。


 其れ等の不利な条件を鑑みて、彼は非常手段を取る事にしたのだ。


 即ち、河賊と呼ばれる賊を退治し、交易都市の守備隊に味方を作り、其れ等の味方に便宜を図らせる為に、献身的に働いて見せるという選択だ。


 そう決断した彼は、遠目に見える交易都市でも警戒の薄い箇所を幾つか見出し、隠密の様に気配を絶って城壁に近寄り、気配どころか足音まで絶ちながら、城壁に有る小さな取っ掛かりに足先をちょっと触れさせるだけで、僅か3回その様な取っ掛かりに足先を乗せて、8メートル程の城壁を乗り越えた。


 身体能力の把握は、此の2日間程で筋肉の動き、体幹の状態などを歩きながら、戦闘をする中で徐々に把握できてきて、今では相当に己の身体の操縦に慣れてきていた。


 恐らく、50メートル程の高さから落下しようと、殆ど音も立てずに降下して次の瞬間には転がるようにして、物陰に隠れる事が出来るだろう。


 だが、城内に入れても警戒が厳しければそれも難しいと思えたのだが、どうやら陸側の警戒は厳しく無い様なので、警戒の薄い箇所を上手く縫うように戦場を目指す。


 丁度戦場では、魔法に因る爆撃が巻き起こり、他者への警戒などしていられる様な状態では無く、ひたすらに敵対する相手に向かい攻撃魔法や弓矢、そして投石による遠距離攻撃が双方に被害を与えている最中だった。


 此処までの道中で、人々の会話から魔法という非常に便利な技術の存在を知り、それは魔法レベルにもよるが、殆どの人間が魔力を持っているらしい。


 幸い背負子を背におっている男が、荷物の軽量化をする為の魔法を唱えて、実際に己の中にある魔力を使用する彼等の様子を見て、魔力の出し入れとそれを魔法として変換する作業を確認した。


 魔力の出し入れは彼自身が此の世界に出現して以来使用している、仙道における気功法の気の循環に似ていたから、直ぐに魔力の出し入れは歩きながら習得できて、魔法の唱え方が判らないので魔法は使えないながらも、魔力を体外に出したり引っ込めたりは出来た。


 なので、魔力の出し入れとして有効そうな物品として、灼熱熊ファイヤー・ベアーの遺物とでも呼ぶべき奴の爪に魔力を放出させてみた。


 すると簡単に爪は魔力の伝導体として有高に活用出来た為に、早速彼は戦場に躍り出ると、河賊から放たれた火球ファイアーボールを、空中に飛び上がり手甲の先にある爪で受け止めて雲散霧消させ、地面に降下すると同時に接近戦を行っていた双方の間に入り込み、都市防衛隊に加勢する形で戦闘に介入し、現在に至ったと云う状況である。

 お読みいただき大変感謝致します!


 出来ますれば、ポイントや感想を戴けると、後の執筆活動の一助になりますので、お願い致します!

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― 新着の感想 ―
まだ、ご本人の名前はないんですね。「偉丈夫」って、名で呼ぶのは、流石にないでしょうから(笑)さて、俺Tueee~偉丈夫さん、どうなりますか、まだまだ、序盤ですからね。次を楽しみにしています。
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