第一章 第四話 プロローグ 〈河川での戦い〉
日も陰って来たので炭焼小屋で一晩を明かす事にして、炭焼小屋に残っていたボロボロの炭や消し炭等を整理し、燃やせる黒炭を囲炉裏らしき物を使用して火を熾して暖を取る。
当然色々と炭焼小屋の中を物色した成果を、囲炉裏の前で暖を取りながら確認し、幾つもの役立ちそうな物を得た。
先ずは錆だらけではあるが、曲がりなりにも刃物には違い無い山刀。
古びている上にサイズの小さな粗の目立つシャツと、大き目の釣り針らしき金属片。
此れからの旅に必須と言える金属製の水筒とコップ。
此れ等を得られたのは非常に有り難い話で、彼はサイズの小さな粗の目立つシャツを一旦前後に真っ二つに裂き、補強材として先程鞣した【灼熱熊】の皮を上手く利用して、関節部分を厚くする様にして、釣り針を利用して彼に丁度良いサイズの服に作り直した。
そして裁縫する為に利用した獣道を歩いていた際に手に入れた植物で作った紐の余りを使用して、【灼熱熊】の大き目の爪を武器とする為に、お手製の手甲を作製し大き目の爪を武器として取り付けた。
最後に山刀の錆を消し炭の上澄み液と植物性の油を利用して落とし、其れ等の作業を終えてから、囲炉裏の炎を熾火にして、先程作製した補強済みの服を布団代わりに眠りについた。
◇◆◇◇◆◇
朝、特に寝ていた間に獣等の来襲は無く、要所要所に配置しておいた獣避けの罠も無駄に終わり、しっかりと休養が取れたので、水分補給と食糧の調達をする為に、河川目掛けて炭焼小屋を掃除して早々に出発した。
山刀が手に入った事で獣道も枝や草を切り開く事で楽に進めて、一時間も掛からずに河川敷に出られたので、早速喉が渇いていた事もあり、直ぐに河川に近付くと炭焼小屋で得られた金属製のコップを使用して、水を汲んで透明度と水質を簡易的に確認し、取り敢えず口に含んでみて、安全性を確かめた上で飲み干してみた。
幸い何らかの汚染状態にはなっていないらしく、問題無く飲めると確信し、コップに改めて水を2度掬って飲み干すと、彼は食材となる川魚等が居ないか? と川面を覗く。
すると、何匹かの鱒系統の川魚が見えたので、彼は徐ろに河川に入り下半身の腰辺りまでそのまま浸かる。
そして右手を振り上げると、手の平を川面に垂直に叩きつけた!
すると、彼の周囲5メートルに波紋として小波が立ち、やがて5匹の川魚が腹を川面に浮かべて来たので、素早く回収して其処らの樹木の枝を串として活用し、河川敷に簡単な焚き火を起こすと、串で貫いた川魚を遠火で焼き始めた。
やがて良い塩梅で香ばしい匂いが河川敷に立ち込め、彼は焼けた順番に川魚に手を伸ばし、ゆっくりと食べ始めた。
暫く食事を続けていると、河川に近い繁みから彼のセンサーに触れるモノがあった。
どうやら川魚を焼いた香ばしい匂いに釣られて、何らかの動物がやって来たらしい。
あまり気にせずに放って置くと、やがて繁みから山犬の様な集団が現れたので、川魚が欲しいのかと考え残っていた2匹の川魚を放ってやり、再度川魚を摂るべく河に入水して先程と同様に川魚を10匹程気絶させて、山犬の集団に腹を出して浮かんでいる川魚を蹴り上げてやった。
当初は警戒していたが、どうやら腹をすかせていたらしく、恐る恐る焼かれた川魚と気絶している川魚に近付き、一頭が口を付けてほうばり始めると、集団全員が貪るように食べ始めた。
その様子から、相当に腹をすかせている事を察し、周囲にまだいる川魚20匹程を今度は泳いでいる状態で次々と蹴り上げ、山犬の集団に放ってやった。
すると、労せずに獲物を放られて気を良くしたのか、山犬の集団は警戒をしながらも水から上がった彼に近付き、盛んに彼の匂いを嗅いできた。
彼としても特に敵対するつもりは無いので、されるがままにさせておき、身体に纏わりついた水を其処らの草で拭うと、焚き火を消して上半身は裸のまま河川敷を歩き始める。
暫くの間色々と情報収集しながら歩いていると、何故か山犬の集団が付かず離れず追って来ている事に気付いたが、別に気にする事も無く彼はまるで散策する様に歩き続けた。
やがて広場のように拓けた場所に出て、下生えしている草が踝辺りの高さしか無い状態になった瞬間。
突如として体長50センチ程の動物が、彼を囲む様に飛び出してきて、次々と襲い掛かって来た!
彼はやや意外に思いながら迎撃する事にした。
彼としても、その動物の存在には気付いていたが、そもそも体長50センチ程で山犬よりも3分の1程である事から、彼等も襲って来ないだろうと目星を付けていたのに、実際にはかなり獰猛な性格をした動物な事に驚いていたが、襲ってくるとなれば話しは別だ。
彼は頭部に鋭い角を持つ此の動物に対して、身を捻ったり手でその鋭い角を逸らしたりして回避していたが、全然彼を攻撃するのを諦めない様子に、攻撃する事を決断した。
彼は鋭い角で攻撃してくる奴等に対し、先ずは一匹の頸を掴み上げ、其奴の角の根本を掴んだまま別の個体の胴体にその角を突き刺した。
急所とおぼしき辺りを狙った突き刺しは正しかったらしく、直ぐに悶絶して地面に倒れ伏す動物を見て、やはり其処が急所かと確信した彼は、次々と襲い掛かる動物にも同様の対処をして行く。
結局30匹程居た動物は、全滅するまで彼に襲いかかり、全てが角の一刺しで殺される羽目になった。
どうやら彼に付いて来ていた山犬の集団にも、同様に何匹か襲い掛かっていたらしいが、流石に体格差もあり、山犬の集団も少々怪我を負っていたが、その牙と爪で対処出来た様だ。
(・・・あまり、先入観を持って対処するのは危険かも知れないな・・・)
そう反省して、彼は山犬の集団に近付いて行った。
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