第一章 第三十九話 【阿倍野ダンジョン】最下層での戦い④
「おう、凄いじゃないか! 【大鬼】4頭を全て倒すとは大したものだよ!」
そう言葉を掛けてくれたのは【朝倉宗滴】殿だったが、彼自身は自分達の状況に非常に不満で、逆に殊勲ものの戦果を上げた俺達に対して素直な評価をして、此れを機に戦況を変えたいとの意図が有るらしく、一旦【忍び】達に偵察を任せて、攻撃部隊である他の面々と後退して【大百足】の防御壁の後ろで相談を始める。
何故彼が不満かと言うと、例の敵である今回の事件の首謀者達は、何と【魔法的古代遺物】と呼ばれる非常に希少価値の高い代物を使用し、完全な魔法的防御壁を生み出してしまい、外部からの一切の干渉を受け付けない状態で、魔法陣を使用した儀式をしていたのだった。
如何に【朝倉宗滴】殿の率いる【冒険者チーム】が特級クラスの【九十九】であろうと、流石に【魔法的古代遺物】が作り出す完全な魔法的防御壁を突破する手段は持ち合わせてはいなかったので、歯噛みして見守るしか無かったのであった。
そう説明されて今後の相談をされても、2級冒険者の俺達では経験も足りないし、都合の良く対抗できる【魔法的古代遺物】など所持していない。
なので、奴ら自身が儀式を終えて魔法的防御壁を解除した際に、仕掛ける段取りと対処方を協議するしか無かった。
それぞれの【冒険者チーム】が相談した上で決めたポジションに着き、奴らの儀式の終了を待っていると、凡そ30分後に儀式に使用している魔法陣が紫に発光し始める。
俺達としては、いよいよ終わるのかと緊張していたのだが、何やら首謀者達は突然焦り始めたらしく、儀式内容にそぐわなさそうな大声を喚き始めた。
然も、その言葉は明らかに此の【日ノ本国】で使用されている大和言葉では無く、明らかに外国人が使用している南蛮語が使用されている。
(やはり外国勢力が関わっているのか・・・)
焦り始めた奴らの何人かは、焦りの為か頭を覆っていたフードから飛び出してきた赤髪や青髪、更には非常に珍しい銀髪や金髪を晒しながら言い争いすら始めている。
俺達は事態の急変に、些か戸惑っていたのだが、もしかすると此方にとって良い方向に事態が動くかも? と都合良く思っていると、そんな我々の想定を越える事態が発生してしまった!
先ず儀式に使用していた魔法陣が、紫に発光していたのを突然止めて、黒く発光し始めたのだ!
否、厳密には黒く発光する物を排出し始めたと言った方が良いであろう。
その黒く発光する物とは、奇怪にウネウネと動き回る触手であった。
魔法陣からゆっくりと出現した触手は、暫くの間、奇怪にウネウネと動き回っていたのだが、やがて動かなくなると、触手は細かく分裂して魔法陣の周囲に居た首謀者達である外国人の口に取り付いた!
彼らが口を塞がれて全員其の場で藻掻き始めたのだが、かなり触手の力は細かく分裂しても強いらしく、彼等が必死の形相で触手が口に入ろうとするのを阻止しようとしているのに、それ程抵抗も出来ずに彼等の口から触手は潜り込んだ。
そして外国人共は、暫くの間ビクリビクリと身体を痙攣させていたが、やがてそれも終わり、急に一切の動きを止めて、スックと全員が立ち上がった。
俺達はあまりの事態に、只ひたすらに注視するしか無かった。
その後外国人共は、奇妙に操られた者独特の動きで、次々と魔法陣の中央に何時の間にか空いた大穴に向かい飛び込んでいった・・・。
あまりと言えばあまりの状況に俺達は咳き一つ上げずに状況を見守っていたのだが、最後の外国人が魔法陣の中央に空いた大穴に飛び込むと、そのタイミングで【魔法的古代遺物】で作られた魔法的防御壁は解除され、俺達は慌ててその魔法陣の中央に空いた大穴の淵に立ち、大穴を覗き込んだ。
その大穴は途轍も無く深い代物らしく、唯一人居る【九十九】チームの魔法使いが大穴の中を見ようと、【光】の魔法を穴に投じたのだが、光源が穴の底を照らすことは叶わず、永遠で有るかのように落下し続ける・・・。
暫く経ちやがて大穴は魔法陣から消滅し、魔法陣には空いていた大穴はまるで最初から存在しなかったかのように痕跡すら留めずに無くなった。
此の場にいる仲間の全員が、開いた口が塞がらない状態で呆然としていたが、其の後は特に変化は無さそうなので、気持ちを切り替えて事件の首謀者である外国人の奴らが、残した様々な物品と魔法陣などの儀式に使用したらしい状況証拠を押収した。
全てを押収し、此の最下層の奥部屋にある【ダンジョンコア】の安定化を確認し、此処に来るには特殊な鍵を使用しなければ入れないようにして、俺達全員は地上に一瞬で戻れる特殊なアイテムを使用して、地上で後片付けしていた仲間と合流し、【大百足】に取り憑く事で大きな戦力になってくれた【芙蓉】殿には、【大百足】だけを【不二宮】に帰還させ、改めて【冒険者ギルド】に来てくれる様に依頼し了承を得た。
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