第一章 第三話 プロローグ 〈格闘技能確認〉
【死肉喰らい(スカベンジャー)】共が囲んでいた対象である彼が、突然自分達に無造作に歩を進めてきた事実に若干躊躇したが、【グリーンハイエナ】が十頭程と、黒い羽根が見事な【黒烏】が凡そ20羽程で構成された、臨時の【死肉喰らい(スカベンジャー)】共に因る包囲網は、一斉に彼に対して包囲網を縮める形で飛び掛かる!
それに対して彼は特に気負う様子も見せずに、自然体のまま【死肉喰らい(スカベンジャー)】共に因る包囲網の中心部に立つと、迫りくる【死肉喰らい(スカベンジャー)】共の攻撃に敢えて身を晒し、奴等の攻撃に対してカウンターを放つ!
【グリーンハイエナ】がその牙と爪で襲いかかるのに対し、手首や足刀で其れ等をいなし、あるいは逸らしつつ、そのまま手刀や爪先そして肘打ちで、【グリーンハイエナ】の脛骨や心臓に打撃や尖撃を叩き込み、容赦無くその生命を絶って行く。
次に空中から襲い掛かる【黒烏】には、その嘴と爪から身を躱しざま、簡単に足刀と手刀でもって頸を落として、地面に叩き落として行った・・・。
其れ等に掛かった時間は凡そ8秒程で、正に瞬く間に決着が着いたのだが、彼は決着が着いた後も体の動きや使用した格闘技術の検証を繰り返した。
(・・・やはりな・・・、俺の肉体は頭に肝心の記憶が無かったとしても、身体記憶とでも呼ぶべき鍛錬してきた技術を繰り出す事に何の違和感もなく、自然自然に最適解の技を使用する訳だ・・・)
そう、彼は先程の戦いで敢えて思考を手放て、勝手に身体が動くに任せて迎撃させてみたのだった。
すると、まるで当たり前の様に、身体は自動で動きつつ、確実に敵の生命を奪う行動を取ったのだった。
其のことから、此の肉体はかなりの修練や鍛錬を熟してきた肉体だと確信し、殆ど意識せず身体の動くままに躍動する状態に任せてみると、肉体は突然飛翔するかの如く樹木に向かって跳躍し、そのまま幹を駆け上ると、太い枝に片足を掛けると、その撓みを利用して更に虚空に跳躍した!
そのまま森林の遥か高みに達し、足下に森林を置いた上で、森林全体を見渡せる高い樹木の先端に立った。
特に意識しての事では無かったが、図らずも周囲を遠望出来る状態に至った事で、彼はマスク越しに森林どころか見渡せる周囲一帯を遠景した。
森林は凡そ周囲1キロ程で終わっている事から、それ程極端に大きなものでは無い事が判ると同時に、かなり近くに大きな河川が有る事が遠景する事で判り、彼はこのまま森林に居ても、それ程状況が変化する訳が無い事から、様々な情報を得るべく河川を目指す事にした。
彼は河川を目指す行動をおこす前に、【死肉喰らい(スカベンジャー)】共の処理を行うべく、幸い切り開かれた空き地が出来ているので、死骸を集めた上で倒木や灌木等の枯れた樹木を集めて、木を擦り合わせる事で火を熾してやや大きな焚き火を作り、【死肉喰らい(スカベンジャー)】共の死骸を放り込む事にした。
その際に【死肉喰らい(スカベンジャー)】共の死骸と 【灼熱熊】の死骸から得られるだけの情報を収集した。
基本的にはそれ程特殊な情報は得られなかったが、【灼熱熊】の死骸からはその大きな爪が非常に硬い所為か、【死肉喰らい(スカベンジャー)】共からも避けられていたので、武器として使用できると考え、【灼熱熊】の死骸の硬い表皮を鞣す事で臨時で作った革袋に入れて置き、他には何だか全ての死骸から取れた心臓に融合していた宝石らしき物も革袋に入れて置いた。
革袋を作るついでに作った腰蓑っぽい皮パンを下半身に纏い、同時に作った皮で作った靴を履き、しっかりと焚き火に死骸を放り込むと、延焼が起きないことを確認して、予定通り河川を目指すべく歩き始めた。
獣道らしき細い道を選んで進み、極力余計なトラブルが起きない様に注意を払いながら行動していると、やがて拓けた空間が見えて来たので、観察しながら近付くと、どうやら炭焼小屋の様な家屋が見えて来た。
立ち止まって茂みからその家屋を観察すると、どうやらかなり年季の入った炭焼小屋らしく、恐らくは暫く誰も使用して居ないのだろう様子が見て取れた。
(・・・どうやら、石材や土を利用した家屋を作り、炭を使用して暖を取る文明を持つ存在が居る事が確認出来たな・・・、なるべくなら此の文明を持つ存在とは良好な関係を構築したいものだ・・・)
あまり建付けが良くなさそうなので、ガタつく炭焼小屋の入口を壊さない様に開けて、室内に徐ろに入ると、室内に立ち込める黴臭い臭いが彼の鼻腔を擽った。
あまり気分の良い臭いでは無いので、入口と一つだけ有る木で蓋をしている窓らしき穴を開け放つと、5分程すると臭いがかなり薄らいだ。
その間も彼は炭焼小屋を物色し、様々な情報収集を図った。
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