第一章 第十三話 人質奪還作戦①
「ところで、先行している【忍び】とは何処で合流するんだい?」
そう【権六】が【今井商会】の頭取に聞くと、「この先にある村にある旅籠で合流します」と答えた。
俺達と共に来てくれている壮年の男、名を【守吉】と云うそうだが、本人は頭取という【今井商会】における事務方のトップであると自己紹介した割には、我々【冒険者】の救出作戦に同行するという、とてもアグレッシブな行動をする男だと感じた。
「嗚呼、見えて来ましたよ、あの村です」
そう【守吉】が声を上げたので、俺はそちらに視線を向けると、結構大きな村が見えてきた。
村で唯一の旅籠に、此の作戦チームに参加している全員が逗留して、此れからの旅路に必要な物品を買い揃えるべく、買い出し組が村にある雑貨屋に向かうと言うので、まだまだ此の世界の知識が不足していると思っている俺は、率先して参加した。
そして向かった雑貨屋で、必要だと思われる小物を買い揃えて行く買い出し組に、その小物が何故必要なのか教えられて、俺は非常に満足して旅籠に戻ると、先行していた【忍び】とやらが数人合流していた。
【忍び】と言われていたので、きっと特殊な格好をしていると考えていたのだが、彼等は其処らに居る一般人と何ら変わらない格好をしていて、誰が見ても彼等が【忍び】と判別つかないだろうと思った。
俺が【権六】を始めとした皆に、自分はどうも記憶喪失となっていて、様々な常識を弁えていないと思われるので、なるべく此の国を始めとして当たり前と思われる常識でも、詳細に状況を教授して貰いたいと説明すると、【権六】は笑いながら「判った」と答えてくれて、親切に説明してくれた。
都市防衛隊員の【源蔵】からも聞いていたが、此の国の名前は【日ノ本国】と云う島国。
そして俺達が所属している交易都市の名称は、【日ノ本国】を治める足利将軍が直轄地として領する【播磨】と云う地方にある主要都市【明石】なんだそうだ。
元々は此の【日ノ本国】は島国であるが故に、大陸とは違いそれ程外国人が流入するには、外海が障害となりあまり訪れる外国人は少なかった。
その状況が変わったのは、凡そ150年前にやって来た【耶蘇教】と呼ばれる宗教を信じる一団が、九州と呼ばれる南方の地方に渡来した事から、此の【日ノ本国】は激変していったそうだ。
それまでは、魔力を使用する手段は【陰陽術】と呼ばれる技術以外には仏教由来の治療術しか存在しなかった【日ノ本国】だったのに、【耶蘇教】と呼ばれる宗教を信じる一団には、魔術と云う【陰陽術】と治療術と系統とは全く違う技術が有り、非常に使い勝手が良い技術だったので、あっという間に民間にまで波及していったそうだ。
例えば、現在【権六】が所属する【冒険者ギルド】と連携をしている【魔術師ギルド】は、此の魔術を教え広めて行く組織であり、此の作戦に参加してくれている一級魔術師の【詩奈】を始めとした協力魔術師2人も、【冒険者ギルド】に所属すると同時に【魔術師ギルド】に所属していて、それが当たり前の常識ならしい。
因みに【耶蘇教】を特に信奉していない、紅毛人や南蛮人である商人も多数【日ノ本国】にやって来ていて、既に約500万人もの人口が此の島国に済んでいる上に、かなりの混血児やクオーターが生まれていて、言葉も外来語が普及していて、ドンドンと昔の常識が切り替わっているのが今の【日ノ本国】なそうだ。
此れから人質奪還作戦として潜入する河族の棲家にも、恐らく魔術を使用する傭兵崩れ等も居ると推測されるそうだ。
何故なら数日前に此の交易都市を襲ってきた河族の中に、火球を始めとした攻撃魔法が使用する者がいて、其奴等は後方に居た船から魔法を使用していて、一切地上に上がらずにそのまま退却して行ったからだ。
其奴らが今回の人質奪還作戦には最大の障壁と考えられるので、其奴らからの強大な魔法を阻止したり場合によっては討つ為にも、【魔術師ギルド】は優れた【魔術師】を貸し出してくれたというのが、先の【冒険者ギルド】内の応接室での話し合いだった。
そうやって細かく現状俺を取り巻く諸々を説明してくれる【権六】に感謝し、先程雑貨屋で買ってきた小物の使い道や、人質奪還作戦における合い言葉などの符丁の確認を行い、旅籠の大部屋で男共はそれぞれの【冒険者チーム】で纏まって布団を敷き、女性陣も別の中部屋で就寝して此の夜は過ぎた。
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