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第一章 第一話 プロローグ 〈出現〉

 突如として何処から現れたか判らない異邦者により、鬱蒼とした樹木が生い茂る森林がざわめいた!


 当然の様にその原因を探るべく、その森林を住処とする獰猛な魔獣の主が、棲家の洞窟から這い出して、何やら尋常では無いその異邦者による気配に気づいて、自身の縄張りの静寂を脅かされた怒りから、その報いを受けさせるべく異邦者に近付いて行く。


 此の魔獣の現地での名称は灼熱熊ファイヤー・ベアー


 その名称の由来となっている灼熱化する大きな爪を振るい、彼は刺々しい茂みや木々を薙ぎ倒して目的の対象目掛けて突き進んでいると、やがて目標を視認する事が出来る場所に辿り着く。


 其処は、奇妙な状態で10メートル四方に渡って切り開かれていた。


 灼熱熊ファイヤー・ベアーは、自身の縄張りであるにも関わらず、全く自身が気付かない内に10メートル四方に渡って切り開かれていた事実に、無性に腹が立った。


 (此れでは自身の餌となる獲物が、餌場に立ち寄らなくなるではないか!)


 灼熱熊ファイヤー・ベアーである彼にとって、自身の餌となる獲物の数が少なくなるのは、非常に不味い事態である。


 何故なら自身の体長4メートルに及ぶ体躯を維持するには、最低でも一日50キロもの食糧が必要であり、それを怠ると周囲の縄張りを持つ、他の魔獣が侵略をして来た際に、十分な魔力を維持できずに灼熱化する大きな爪を振るう事が不可能になるからだ。


 正直な処、以前に隣接する縄張りを持つ他の魔獣に侵略された際、灼熱化する大きな爪を武器に使用し続ける事で漸く退けた経緯があるので、最近は餌となる獲物が少なくなった事もあり、此れ以上の魔力損耗を避けたいのが本音だった・・・。


 其れ故、此の獣道を使用した餌場を崩壊せしめた切り開かれた空間を、どうやら何らかの方法で生じせしめた異邦者に対し、最初から良い印象を持っていなかった灼熱熊ファイヤー・ベアーは、視認していた何やら銀色に輝く不思議な楕円状の物体に、恐気もなく接触した。


 その銀色に輝く不思議な楕円状の物体は、特に音を発したり光を投射する事も無かったので、易易と灼熱熊ファイヤー・ベアーは近付けて、その外装となっていた薄い金属被膜を、自慢の灼熱化する大きな爪で引き裂き、中から出てきた金属製の部品を爪で破壊した。


 すると、何やら金属製の部品で覆われた中から、ジェル状のコクーンに包まれた形で人間らしき存在が見えてくる。


 それを見ても、灼熱熊ファイヤー・ベアーは特に訝しくも思わずに、そのジェル状のコクーンごと金属部品の残骸を切り裂いた!


 一気に横殴りに切り裂かれたジェル状のコクーンが、そのまま地面に液状に溢れてしまい、人間らしき代物が外気に触れる。


 その人間らしき代物目掛けて、自慢の灼熱化する大きな爪を振るい、灼熱熊ファイヤー・ベアーは人間らしき代物の胸の辺りにX状に傷を付けた!


 ジュザー!


 肉が焼け焦げながら切り裂かれる音が聞こえ、周囲に肉が焼ける匂いが漂い始め、灼熱熊ファイヤー・ベアーは自分が傷つけた対象に喰らいつこうと牙を備えた口角を広げて、人間らしき存在の腹部と思われる箇所にその巨大なあぎとを喰らいつかせる!


 ズガッ!


 奇妙なあぎとに因る咀嚼音が聞こえた。


 否っ、それは咀嚼音では無かった。


 灼熱熊ファイヤー・ベアーが口角を広げて喰らいつこうとした瞬間!


 ジェル状のコクーンから出現した人間らしき存在から、腕の様なもんが伸びて、その先端に存在する人差し指が灼熱熊ファイヤー・ベアーの左目にものの見事に突き刺さっていたのだ!


 灼熱熊ファイヤー・ベアーはその左目に生じた凄まじい痛みから、たたらを踏むようにたじろぎつつ後退し、喉から痛みを紛らわせる為なのか咆哮を上げた。


 ゴハァー!


 その血腥いまでの咆哮には、自身を傷付けた対象に対する憎しみも含まれていて、当然残された右目が向けられているのはその対象たる人間らしき存在である。


 灼光を迸らせる様に放たせた眼光で、ひと睨みで生物を軽く殺しかねない殺意を含ませながら、灼熱熊ファイヤー・ベアーは一気に人間らしき存在に殺到する。


 その勢いのまま灼熱熊ファイヤー・ベアーは、得意の灼熱化する大きな爪を振り翳し、鋭く人間らしき存在目掛けて憎しみを込めて突き込んだ!


 ズシュッ!


 何かが肉を穿つ音が聞こえた・・・。


 もし此の場に中立の立場の第三者が居れば、前後の脈絡から人間らしき存在の肉体に、灼熱熊ファイヤー・ベアーの灼熱化する大きな爪が突き刺さったと思っただろう。


 しかし、現実はその通りにならず、実際には灼熱熊ファイヤー・ベアーの喉に敵対していた人間らしき存在の鋭い手刀が突き刺さっていたのだった・・・。


 恐らく灼熱熊ファイヤー・ベアーは、自身の喉を貫いた手刀を最後まで認識出来なかったと思われた。


 何故ならば、灼熱熊ファイヤー・ベアーの喉を貫いた鋭い手刀は、その直ぐ後に喉を貫いたまま手首を返し、灼熱熊ファイヤー・ベアーの頸を螺子切り、呆気なくなるほどその頭を地面に落とし、次の瞬間には灼熱熊ファイヤー・ベアーの螺子切られた頸から、噴水の様に血流が吹き出してきて、辺りの地面を紅く染め上げた。


 そんな凄惨な血の噴水で肉体を濡らしながら、人間らしき存在は、特に気にする様子もなく悠然と立ち尽くしていた・・・。

 お読みいただき大変感謝致します!


 出来ますれば、ポイントや感想を戴けると、後の執筆活動の一助になりますので、お願い致します!

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― 新着の感想 ―
新作、楽しみにしていました!!いきなりの戦闘シーン、、そして強さと、また得意の漢字「あぎと」顎という表現でいかにも獰猛な様子が感じられます。この手の表現は流石ですね! また、楽しみが増えました!、これ…
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