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私が月になる  作者: 琴音
7/42

7. アップルパイ

頂いた紅玉でアップルパイを焼いた。

引っ越しの日にウーバーイーツでアップルパイを頼んでいたので、

甘いものは嫌いじゃないはず。

薄い壁に感謝。

料理は得意だ。ただ才能を発揮する機会がないだけ。

隣人の在宅は確認済。洗濯機を回して鼻歌を口ずさんでいた。

ご機嫌なのは好都合、ぞんざいな扱いを受けると心が折れる。


ピンポーーーン

キョトンとした顔も可愛い。

「あれ、お隣の綺麗なおねえさん」

いえいえ、正しくは優しいおねえさんですよね。

「頂いた林檎でアップルパイを焼いたので、いかがかと思って」

「うそっ、うそ、好き!好き、アップルパイ好きです」

お姉さんは好きという言葉に免疫がありません。

やたら連発するのはやめてください。心の臓によろしくない。

「いま、紅茶入れます。あがってください」

上がる前提ですか、ほかに選択肢はないのでしょうか。


仕方なく案内されたテーブルについた。

こじんまりした丸テーブルに2客の椅子。

必要最低限の数を揃えているらしい食器が棚に並んでいた。

小さな冷蔵庫に電子レンジ。

奥の部屋には”人をダメにするクッション”が鎮座していた。

「ダージリンとアールグレイ、どっちにしますか」

「ダージリンで」

即答してしまった。が、この顔面と向き合うのはムリ。

ましてや、狭い部屋で同じテーブルで何かを頂くなんてムリに決まってる。

「ごめんなさい。用事を思い出しました」

いつも冷静な隣人が驚いて、皿にセットしたフォークを落とした。

「そんなに急ぎの用事なの、今すぐじゃなきゃダメなの」

ああ、優しいお姉さんに、そんな声で甘えるのはご法度です。

かなり余裕がありません。身震いが止まりません。

「じゃあ、急いで食べます」

彼のお褒めの言葉も、ダージリンもパイの味もわからなかった。

いたたまれなくて、早送りでやり過ごしたけど、

出来ることなら巻き戻したいくらいの幸せな時間だった。

甘いアップルパイに<レベル85>

続きます


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