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私が月になる  作者: 琴音
40/42

40. 二人で

まだ小雨に雪が混じったりして、寒い日が続いているが春はそこまで来ている。

冬のあいだ、枯草にしか見えなかった花壇にムスカリの蕾が顔を出していた。

もうすぐ、辺り一面が紫に染まるだろう。

ディスカウントショップで花を落としたムスカリの鉢植えを、値下げの札に釣られて百円で買った。

アパートの通路の片隅に植えたら、次の年に綺麗な花を咲かせた。

大した手入れもしないのに、年々増え続けている。

薄暗かった通路を、紫の祭壇のように華やかに飾ってみせた。

紫色が好きな大家は自慢の花壇だと言って、毎年楽しみにしている。


換気で開けておいた窓を閉めながら、お昼に食べたいものを聞いた。

「焼きうどんでいい?」

「トッピングに目玉焼き、お願い」

要望を聞くと、意外と具体的に答えてくれるので作るほうは楽でいい。

なんでもいいと言われると、作る気が失せる。


食べ終わって、皿を片付けてる時だった。

「あのさ、婚姻届を出そうと思ってる。うちの親父も学生結婚だし、もう一緒に住んでるんだから問題ないでしょ。これから先は長いよ。大学卒業しても専門研修とかのプログラム終わるまで7年もあるんだよ。形式上の紙切れだと思うけど、中途半端にしたくない。ゆりっちのとこにも挨拶に行って、ちゃんとしよう」

「カイがそう思うなら、そうしよう」

「まだ、迷ってるとかじゃないよね」

「カイって大人なんだなっと思って。色々なことキチンと考えてる。私ね、いつも自分の気持ちをないがしろにして来た。周りに合わせて笑っても、何が可笑しいの?って俯瞰フカンしている自分がいた。親から抱きしめてもらったことがなかったから、自分をオトシめて生きてる価値もないって思ってた。自分の存在さえも認めることができなかったんだ。大袈裟かもしれないけど、生きてていいんだ、幸せになっていいんだって、カイが教えてくれたんだよ」

「ゆりっちを幸せにするのが、俺の役目」


たぶん、感の鋭いカイは私の家庭の事情を察してたと思う。

家族のことを話したがらないので、あえて強要することもなかった。

でも今回は事情が違う。

結婚となれば、顔合わせは必然である。

「日程とか聞いておくね。別に喧嘩してるとかじゃないから心配しないで」

「わかった、いよいよ具体的になってくると、ちょっと緊張するね」


時計が動き出している感覚。

しっかり時を刻む音が聞こえる。

二人で歩幅を合わせて、一緒に歩み出そう。


楽しいことは2倍にして、

悲しいこと、悔しいことは半分にして

二人で分かち合っていこうね。

私たちの描いた夢は無限で、色鮮やかに彩られていた。


つづく

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