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私が月になる  作者: 琴音
18/42

18. 詐欺師

雲一つない青空だったのに、雲行きが怪しくなってきた。

掃除機をかけてる私に代わって、カイが洗濯物を取り込んでくれた。

畳みながら、クスクス笑ってるので、理由を聞いてみた。

「なんで、パンティとブラジャーが全部バラバラなんだよ。色までちげぇし」

コイツ、喧嘩を売ってるのか、特売で買うとそうなるんだよ。

上下セットは勝負の時しか着ないんだよ。

そんな風に言葉には出さなかったが、優しく諭してあげた。

「あのね、みんながみんなセットで着ているわけではないんだよ」

「へぇ~そうなんだ、ぜんぜん気が付かなかった」

経験値で判断するな、おばさんはビジュアルより中身で勝負です。

と、言いたかったが自信もないので黙っていた。

そこへ誰かが訪ねてきた。

俺が出ると、ドアを開けに行ったカイが押し黙ったままだ。

ズカズカと男が乗り込んできた。


「誰?元カレ?」

「幼馴染み」

「詐欺師」


私の言葉に「じゃあ、通報しなきゃ」カイがスマホを取り出した。

坂出との親密なスナップ写真を見たカイに、お金を持ち逃げされたことは話したことがある。

坂出晃サカイデ コウ、元幼馴染で150万をかっさらって消えた詐欺師である。

「あ、待って誤解だから」

「で、なんの用」

「金、返しに来た」

「あっそう、お金置いてさっさと出て行って」

「さっき、詐欺師って」

「有り金全部巻き上げて5年も音信不通で、よく幼馴染なんて言えたね」

「悪いとは思ったけど、絶対返すつもりだったし」

「もういい、言い訳はいいわ、さようなら」

「ちょっといい、すんごく気になっちゃうのよ、誰?、弟はいなかったし、まさか隠し子って、、、わけないか」

指を差すな、指を。カイが見たこともない表情で詐欺師を睨んでます。

「恋人です、結婚を前提で同棲させてもらってます」

おいおい、プロポーズも同棲もしてないぞ。さてはマウント取ったな。

「グッ、・・・させてもらってますって」

「なに!なんか文句あるの!」

「こっちの方が犯罪じゃないかと・・・」

「もう二十歳はたちだから大丈夫です」

「えっえーーーー、おまえ正気か、俺と1コ違いだから42だぞ、こんなイケメンたらし込んで、何かあやかしの術とか使ったの」

「おじさんは、ゆりっちのことが好きなんですか」

「急になんだよ、おじさんって、ゆりっちって、まっいいか。そうだよ~ぼくちゃんの生まれる前から、ずっと一緒でずっと両想いでさぁ~」

「じゃぁ、なんで5年も放っといたの?」

「・・・」

「あんたに言う必要があるの?大人の事情だよ、大人の」

「知りたいですよ、恋人なんだから」

「知ってどうすんの」

「・・・」

「お前みたいなガキにはわかんないかもだけど、カネ、、、金を好きな女に、好きな女に金を借りるって、死ぬほど恥ずかしいんだよ。こいつが俺のことを好きだって知ってたし。いつか、いつかって先延ばしにして、あっという間に5年が経っちゃった。放っといたわけじゃねえよ、毎日、夢の中でこいつが優しく微笑むんだ。いつだって我儘を許してくれて、こんな俺を好きでいてくれる」

「おじさんの妄想は夢のなかだけにしてください。5年間の、、、5年間もあなたを待ち続けた百合さんの大切な時間、いまだって、あなたを許してるし、僕が許せないのはその優しさに、あなたが甘えているからだよ」

「許すとか許さないとか関係ないんだよ。百合は俺のこと忘れないよ。初めての男は忘れられないって言うだろ。一生の刻印なんだよ。わかったか、坊主」

「みっともないですよ、そんなことでマウント取ったつもりなんですか。いつまでも過去に執着して、おれはその刻印とやらに上書きする。これからもずっと、変わらずにずっとだ。おれの上に俺を、上書きして上書きして、だからあんたの名前なんか、とっくに消えてるんだよ」

「カイ、もういい、もういいから、私が惨めになっちゃうから」

「・・・ごめん」

「やらしいガキだな、まったく!」捨て台詞を残して坂出は出て行った。

カイ、あなたが謝る必要なんてないよ。

いまね、確信したことがある。

お金はくれてやったつもりでいたから、どうでも良い。

このアパートを出なかったのは、このロクでもないヤツを待ってたんじゃない。

カイを待ってたんだって。

声が震えていたよ。いつもカッコいいけど、もっともっとカッコよかった。

真っ直ぐな愛、ちゃんと受け取ったよ、ありがとう。

<レベル100>ついに満点出ました


つづく

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