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エッセイ

歴史転換期の「なろう」で書き続ける意味とは?

作者: シサマ


 皆様今晩は! シサマという者です。



 去る11月20日夜、「なろう」最大のコンテストとして名高い第11回ネット小説大賞、通称「ネトコン11」が2次選考を終了。

 

 今回のネトコンは応募作品が小粒だったのか、それとも出版不況から協賛企業が相当に慎重姿勢だったのか、2次選考突破作品はかなり絞られていましたね。

 私の代表作『バンドー』も1次選考こそ突破したものの、2次選考ではふるい落とされてしまいました。


 

 ……え!? 1次選考突破していたの!?

 そう驚かれた方も多いのではないでしょうか。


 無理もありません。

 

 『バンドー』は137万文字できっちり完結している作品ではありますが、1話あたりの平均文字数が16000以上あり、冒頭から長い世界観説明が繰り広げられます。

 更には主人公のパーティーが揃うまでに110000文字を要し、その後には300000文字をかけてトーナメントの1試合すら省略しない完全版武闘大会がある(笑)、トンデモ作品なのですからね。


 私はこの作品が1次選考を突破した事実を知って、自分の代表作が認められた嬉しさとともに、一抹の不安を覚えました。

 有名な作者の高ポイント作品もいくつか落選していただけに、内容ではなく、ネタ的な意味で『バンドー』が面白おかしく取り上げられただけなのではないか、と……。



 そこで私は、『バンドー』が正当な評価を得て1次選考を突破したのか、独自の調査を開始。

 早速ネトコン期間中の本作PVと、部分別データの収集に取りかかります。


 『バンドー』はただでさえ読みにくい文字数で、しかも完結済みとは言え獲得ポイントは400程度。

 従って、完結後のPVは1日平均ひとケタ、新規読者様の来訪も1週間にひとり……というレベルでした。


 つまり、ネトコン期間中に新規読者様からのPVがあれば、それはほぼ2分の1の確率で下読み審査員の方なのです。

 下読み審査員の方々が、いち読者様として普通に来るのか? という疑問を持つ方もおられるでしょうが、「なろう」はそこに特別なシステムを用いて、余計な費用をかけるサイトではないと信じております。(←この発言は、「なろう」をリスペクトしているからこそ出来るのだ!)


 

 ……おっ、ありましたありました!

 10月10日前後、ひとりの読者様による、連休を活かしたまとめ読みが確認出来ました!


 この『バンドー』 は余りに特異な作品であるため、読者様の90%は第1話の22000文字責めに耐えきれずにブラバします(笑)。

 残る10%の讃えられるべき読者様は、読み進める苦労からブクマを入れて一時的に離脱するか、アプリを使って全話をダウンロードし、その後の評価ポイントや感想は保証されません。


 すなわち、ブクマやポイント、いいねを入れず、時間を無駄にした怒りの感想も入れず、まさかダウンロードすらせずにひたすら読み続ける読者様は、この作業を仕事でやっているに違いないのです!(←この発言は、「なろう」と下読み審査員様をリスペクトしているからこそ出来るのだ!)


 その読書時間、12時間連続✕2日間!

 部分別データも、長すぎる300000文字武闘大会を端折っている以外は(笑)、ほぼ全編に目を通してくれているではありませんか!


 誰だ!? 公募はあらすじと第1話しか読まないなんて言ったのは!

 誰だ!? 1000ポイント未満の作品は足切りされるなんて言ったのは!?



 ……更に加えて、『バンドー』は2次選考結果発表の2日前にも、12時間連続で読まれていた事実が判明しています。

 既に2次選考落選が決まっていただろうにもかかわらず、最後まで推して可能性を探ってくれた審査員様が! もしいたとすれば! これは作者冥利に尽きると言わなければならないでしょう。


 勿論、2次選考での落選は残念ではありましたが、36時間かけて熟読していただいた審査員様から、


「すまん、パーティー揃うの遅すぎ。武闘大会長すぎ。これでは商業化は無理だ。だって1巻が売れないと2巻が出せないんだから」


 ……と言われたら、ガチでぐぅの音も出ません(笑)。



 以上の調査結果から、私は今回のネトコンには大満足しました。

 誰に何と言われようと貫き通してきた道に、審査員の方も本気で付き合ってくれた事で、自己満足では終わらない手応えを得たからです。


 しかしながら、私は今回の結果を「序盤から分かりやすい面白さを提示すれば、2次選考突破の可能性が広がる」と評価されたとは思っていません。

 むしろその真逆で、「いかに努力をしようが、あなたに2次選考突破の可能性は1%もありません。ですが、そのまま書き続けて欲しいです」と言われたと認識しました。



 『バンドー』の最終回は、わざと3ヶ月の時間軸を空白にしてあります。

 主人公のパーティーにとって最後の花道である武闘大会に備えて、鍛錬の旅をしてきた経緯が過去形で語られており、私はいずれこの部分を番外編として執筆するつもりだったのです。


 今回の結果を受けて再び創作意欲が湧いてきた私は、この作品を悔いなく完全燃焼させる道を選びました。

 たいしたポイントもブクマもなく、これからPVを稼ぐ事もない作品ではありますが、それが私自身のためだけでなく、この「なろう」のためにもなると、全く根拠のない確信をしているのですね。



 現在私は、Web小説界隈が歴史の転換期に差しかかっていると感じています。

 

 「なろう」が生まれた頃は、アマチュアイズムを思う存分発揮する場所として繁栄を始めた小説投稿サイト。

 やがてそこが巨大な産業になり、出版社が経営に加わってインセンティブが動く様になると、これまでは「不確かな近未来の夢」だけだった作者のモチベーションに「目先の利益」が加わりました。


 しかしながら、小説投稿サイトのトップランナーであるはずの「なろう」が商業路線に加担していないため、不確かな近未来の夢だけでは満足出来ない作者や、「なろう」では浮上出来ない作品の可能性を模索する作者の「なろう」離れが進んでいます。


 とは言うものの、これだけWeb小説の成功様式が確立してしまった現在、他のサイトでヒットを飛ばす作品も、「なろう」で受けている作品の影響からは逃れられません。

 Web小説を含む、ライトノベルの市場はまだ可能性があると思いますが、それはあくまで出版社が「様々なサイトやコンテストから生まれた、優れたなろう系作品の当たり年」を待つという事とイコールでしょう。


 種をまき、育てて実らせる農業型ではなく、流れに身を任せ、今日は不漁でも明日はいい日になるだろうという、養殖すら行えなくなった漁業型ですね。



 インセンティブや、応援検索システムに工夫をこらそうとしている他サイトと比較すると、「なろう」は既に来る者を拒まず、去る者も追わない姿勢の徹底に舵を切りました。

 最近の書籍化宣伝、リンク貼りの自由度強化にもその姿勢は表れており、仮にユーザーが大量離脱した場合には、創立当初のアマチュアイズム発表の場へと戻る事を厭わないでしょう。


 そんな歴史転換期の「なろう」で、これからも書き続ける意味とは、いったい何なのでしょうか?

 それは近未来の夢にも、目先の利益にも左右されない、「自分が今、書きたいものを書き残す事」だと思います。


 

 現在、「なろう」から離れて他サイトでの活動が主体になっているユーザーも、ネトコンに代表される賞レースへの参加や、スコッパーの方からの意外な推し活に備えて、「なろう」に作品を残しているはず。

 そして、現在は創作活動をしていないユーザーも、誹謗中傷などで心を折られたのではなく、仕事や家庭、体調による離脱であれば、「なろう」に作品を残していますよね。


 流行り廃りに支配されがちで、ユーザーからの不満が絶えない「なろう」。

 しかし長い目で見ると、「なろう」に打ち勝つべく商業路線を強化する他サイトよりも、サイトの多様性を維持している……私はそう確信しました。


 私はこれからも「なろう」で、流行り廃りにも、近未来の夢にも、目先の利益にも左右されない「自分が今、書きたいもの」を書き残します。

 これからのWeb小説を作るのは、サイトや出版社ではなく、私達ひとりひとりのユーザーなのです。



 

 ……最後にひとつだけ。


 実は、ネトコンの下読み審査員様と前後して、同じくらい熱心に『バンドー』を読んでくれた読者様がいました。

 その読者様は感想こそ書かないものの、『バンドー』が1次選考を突破した直後に、お祝いの意味も込めてくれたのか、満点評価を入れてくれたのです。


 人気のない作品に許された最高の贅沢。

 それは注意を怠らなければ、読者の顔がはっきりと分かる事。


 ただの負け惜しみかも知れませんが、最も美しい負け惜しみですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エッセイ拝読しました。 ネトコン参加、お疲れ様でした。 今はウェブ小説サイトが数多くあり、私自身、他のサイトにも興味を持ったりもしています。 そんな中、「書きたいものを書き残す」という強い…
[良い点] おっしゃる通りヽ(=´▽`=)ノ よくぞ書いてくださいました〜(*´艸`*) ……と感動したのですが、それだけしっかり下読みされた上で一次通過出来ないことのダメージがボディブローのように…
[一言] 後続のざまぁがこけたのが痛い。 利害関係者間の場合はざまぁにならないんだよねぇ。 成立するのは恩とか義の場合だけだって……
2023/11/27 18:29 通りすがり
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