第十三話「では次に情報を共有しましょう」
俺は今奴隷に持ち物を検査されています。
「まずご主人様の服装は我が家にあった燕尾服、ステータスにあった鞭、それとナイフが腰に装備されていますね、杖はリュックの中ですか?」
「杖はまだ使ったことない」
「ではこの荷物の中に……これは?」
リュックの中を開くと、中にいたマーチャンが発見される。
アヤメの手のひらに乗せられて、おとなしいボールの状態だ。
「まぁ、これが隷属者の中に記載されていた彼ですね。最初生命石を見たとき誰かと思いました。モンスターを隷属させる人がいることは知っていましたが、これが……」
「ま……」
「マーチャンだ。俺たちの大切な家族みたいなものだから、仲良くしてくれ」
「もちろんです、よろしくお願いしますね、マーチャン」
「まー……」
マーチャンは大人しい。下手なことはしないという意思が伝わる。
マーチャン ♂ 0歳 ユイに隷属
Lv4
*能力
危険探知
索敵
飛行
「レベルは四……しかも危険感知があるんですね」
「その能力わかるのか?」
「危険感知は探索の際にはとても便利ですよ。寝ていても敵が近づいているとわかると目を覚まして知らせてくれます。あとは確か、悪意に対してとても敏感になり、敵と味方の見極めもできるそうです」
アヤメは唇の下にひとさし指を当てて記憶を手繰りながらつぶやく。
情報を共有できる奴隷は異世界でかなり重要かもしれない。
マーチャンはポイされて俺の頭の上に収まる。
「あとは鍋水筒、塩、手ぬぐいと本当に最低限のものですね。これだとテントと歯ブラシが今後必要になると思います。あとは指針盤も。あら、これはメモ用紙と……ペン、ですか?」
「ボールペンは珍しいか?」
「見たことないタイプの筆ですね。細工が施されています。あとリュックに入っているのは、大量の生命石ですね、あとで換金させましょう」
ちなみにブリンの生命石だけは自分のポッケに入れてある。
本当は何かちゃんとしたものに入れたいのだが。
アヤメは生命石を一瞥した後で、部屋のベッドに腰かける。
細い指を俺の腹に這わせたと思ったら、こちらの生命石に触れた。
ユイ ♂ 18歳
魔法使いLv8 操獣士Lv5
*能力
意思疎通
隷属契約
隷属能力強化
隷属成長強化
鞭術
魔法(火/風/水/土/契)
*スキル
スマッシュ(皮の鞭)
アツア(火種のナイフ)
マシルド(土守りの杖)
*隷属者
アヤメ
マーチャン
「では次に情報を共有しましょう。操獣士というジョブはなんですか?」
「えっと、俺も詳しくわからない」
「なぜジョブが二つもあるのですか、基礎能力の補正は二つともかかっていますか?」
「その辺も全然。一応身体能力は上がってるから、補正は二つあると思う。魔法使いじゃ身体能力は上がらないんだろ?」
「ご主人様にとってその辺りのものは当たり前だったから疑問にも思わなかったと。私の視点から言います、操獣士というジョブは知りません。これでもそれなりに知識を得ている私でも知らない。わかりますか?」
アヤメが眉を吊り上げ、自信をもって知らないという。
それだけ自尊心があるなら、操獣士は本当に知られてないジョブだろう。
「でもモンスターを操るジョブは存在するんだろ?」
「魔物使いや調教師ですね。ただ隷属契約以外の能力は聞いたこともありません。鞭術は様々なジョブに備えられています」
「つまり俺のジョブはアヤメでもわからないと」
「申し訳ありません。でもジョブが二つもあって訳の分からないジョブをつけているご主人様もご主人様です」
「俺が悪いのか」
俺はずっと部屋で立っていたが、喋るなら座ってもいいかなと思い始める。
どこに座ろうかと考えて、アヤメの隣は駄目だろうか。
いや流石にそれは、でもご主人様だし。
「……ご主人様はききたいことありますか?」
「そう、だな。アヤメのジョブについていくつか」
俺はアヤメよりちょっと離れてベッドに座る。
アヤメはじとっとと俺を見た後で、スカートをまくり生命石を触れさせた。
たまたま触れなきゃいけない状況になっただけだぞ。
アヤメ ♀ 18歳 ユイに隷属
戦士Lv3
*能力
剣術
弓術
審美眼
「貴族から降ろされたから今は戦士のジョブだっていうのはわかる。剣術と弓術が戦士の基本なのか?」
「いいえ、戦士のジョブになった後、その人に才能のある武器がそのまま能力に反映されます。人によっては斧や槍術の場合もあります。もちろん、素質が無くても鍛錬で習得できます」
「なるほど、じゃあ審美眼は?」
「私が貴族のジョブを持っていた時に得意とした能力です。本人にその能力の素質が十分にあれば、他のジョブに移っても反映される能力があります。審美眼はその目で見たものの価値がある程度わかります」
ジョブは同じでも本人の素質で左右されるのはまあよくあるやつだ。
アヤメは品定めをするように俺を一瞥した後で、立ち上がる。
「では、情報を共有したところで次は買い物ですね。必要な装備を買い足しましょう。サリー商会には歩いていきますよ。他に疑問はありますか?」
「……また思いついたら聞く」
俺はマーチャンをリュックの中に入れて背負う。
荷物持ちをやれとは言わないが、こう並ぶと俺のほうが従者みたいだ。
アヤメは久しぶりの自室にもあまり未練を見せず、扉を開けて出て行った。
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