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此れ以上、一人で悶悶とするのは性に合わない


ログハウス喫茶店(カフェ)に飛んで帰える途中

はつねは手にする 携帯電話(スマホ)で、くろじを呼び出していた


くろじの経営する サーフショップは連日、開店休業中

はつね(の呼び出し)の為なら浮き浮きで出向くのも(いと)わない


んが(しか)し、嫌な予感しかしない


声の調子(トーン)といい

喫茶店(カフェ)に来て欲しい」と いう、一方的な会話といい

実際、挨拶もなく此の一文(いちぶん)のみだった


みやちゃんの事も

すずめちゃんの事も、(問題)解決は()()だ 先の事だろう


其れでも鼻歌交じり

サーフブランドのロゴを硝子(ガラス)一面に貼り付けた

店内扉を施錠する、くろじに拒否権(笑)は ない


「まあまあまあ、なんとかなるっしょ?」


奮起なのか「余裕余裕」と、口にする

くろじの 目の端に商店街の道路を挟んで向かい側

(偶偶)自身の店先にハンガーラック(可動式)を並べ始めた

古着屋店主の姿が インする


此方も(くろじに)気付き、右手を挙げて朝の挨拶をした

古着屋店主に くろじは「保険って 大事」と、にんまりと笑って

目の前の(商店街の)道路を(また)いでいく


「みやちゃんの「知り合い(男)」って いう子が来てる」


低い口調で事実のみを伝える

はつねは ログハウス喫茶店(カフェ)の厨房内を縦横無尽に動き回る


「、何処に?」


「嫌な予感」は取越苦労だったが

「保険(古着屋店主)」のお陰(?)で取り乱す事なく 聞き返えす


実際、取り乱す事は建設的じゃない

如何見ても 破壊的だ


だが 一抹の不安もある


此の はつねさん

冷静になれば なる程、怒りを内側(胸)に溜め込んでいく (タイプ)


故に其れ等が一気に解放(爆発ともいう)されれば

バーサーカー状態(モード)で手に負えない


瓦斯(ガス)抜き程度に怒る分には

逆に平和で良いんだよなあ、と くろじの胸中は穏やかではない


そんなくろじの心情 (など)、我関せず

ログハウス喫茶店(カフェ)カウンター席の片隅、年季が入る ジュークボックス

八十年代洋楽五十曲を見入る古着屋店主が「小銭、ある?」等と()かす


途端「解約だ、解約」と (ぼや)

其れでも道連れにした手前、ズボンの後ポケットを(さぐ)りながら 向かう

くろじの背中に はつねが呟やく


「(取り敢えず)私達の部屋にいる」


危うく聞き逃す所だった

腕を組み 吟味中の古着屋店主の手を取り((受)手、出しとけや←くろじ)

小銭を手渡す(なり)、元居たカウンター席に蜻蛉(とんぼ)返りする


「?!へ、へや?!」


なんだ、どういうことだ?

と、ふためく くろじの背後で古着屋店主も一応、興味ある顔を向ける


女の機嫌を損ねる事 (ほど)

恐ろしいものはない、と くろじとはつねの関係から知っていた


「、じ じゃあ今(俺達の)部屋には」

「すずめちゃんと、みやちゃんの「知り合い(男)」が 二人っきりに?!」


おいおい?

危険察知能力、低過ぎんだろ?


すずめちゃんが、すずめちゃんじゃなくて

「知り合い(男)」が「俺(軟派男)」だったらお前、発狂もんだろ?


流石に言えずに

口をぱくぱくするだけの くろじには目も呉れず


「「知り合い(男)」の「知り合い(男)」がもう一人」

「その「知り合い(男)」の「知り合い(男)」の、彼女さん?」


付け足すも


作業の手を止めて

(和)寝間着姿の 少女を思い浮かべて

其の 少女を食い入るように見る、すずめの姿を思い浮かべて 独言する


「、みやちゃんの、」


以降、口を閉じる

はつねの様子を(いぶか)しながらも

取り敢えず「知り合い(男)」の他に「知り合い(男)」と彼女さん?が いるらしい?

事実に 胸を撫で下ろす


「、じゃあじゃあじゃあ 大丈夫だろ!」


然うして

口よりも忙しく手を動かす はつねに訊ねる


「で、お前は何してんの?」


入店時に確認したが

ログハウス喫茶店(カフェ)の木製出入口扉には

「開店」ではなく「閉店」の札が吊り下がっていた筈だが?


(ざる)に並ぶ

油揚げに湯を掛け 油抜きをする、はつねが唇を尖らす


「何かしてないと気が紛れないから」


「で、稲荷寿司?」

(きつね(蕎麦or饂飩)という可能性もあるが)


「手間が掛かって丁度良い」


「ああ、まあそうね」


共感するも カウンターテーブルに頬杖を突く

くろじは「みやちゃんの事 思い出して苛苛してそう」とも 思う



自信作の稲荷寿司にしても()のログハウス喫茶店(カフェ)には合わず

売れ行きは今一つで品書(メニュー)から消えたが

今は(ただ)()の「弟」(もど)きの為だけに作っている日日(ひび)



弟 擬き失踪(笑)後は(いや、笑い事じゃねえな)

敬遠していたが元元、(はつねの)自信作だし

作らずにはいられなくなっちゃったんだろうなあ、と 可愛い行動に盗み笑う


まあ、なんだ


陰膳(かげぜん)的に続ければ

案外 ひょっこり帰って来るかもしれないよな、みやちゃん


瞬間、「閉店」の札を吊り下げる

ログハウス喫茶店(カフェ)の木製出入口扉の 開閉する音に一同、振り向く


「、はつねさん(!)」


すずめの姿を見る(なり)

満面の笑みを浮かべる はつねに(なら)って

くろじも古着屋店主も笑顔で迎えるが

(すずめ)の背後に控える「人物」達の存在に固まる


つんつん頭から

先の尖った ごつごつの作業員(エンジニア)深靴(ブーツ)まで

全身 黒尽くめの、パンクファッション


が 一人

もう 一人は


金髪の長髪にブレイズヘアを(ほどこ)

黒眼鏡(サングラス)姿の ダボダボコーデの男性が佇んでいる


当然、くろじも古着屋店主も

他人様の嗜好(服装)に口を出すつもりもない


其れはいい

其れはいいが、尋常じゃない程の 顔面だ


特に


ブレイズヘアの「人物」の溜め息が出るような

「此の世の枠の外」以外、形容し難い顔面に言葉も出ない


「何処ぞの 貴族(リッチ)だろ、あれ?」


古着屋店主が独り言ちる

其の言葉に「みやちゃん御令息説」が愈愈、濃厚になってきたが


「待て待て待て」


と、手を挙げる

くろじは連れの つんつん頭(黒狐)の存在も無視出来ないとばかり


「あれ(つんつん頭)は ホストだろ?」

「でもって、あれ(ブレイズヘア)は カリスマ(ホスト)店長だろ?」


(など) 言いたい放題の

くろじと古着屋店主を一瞥するも何も言わず

はつねは カウンター越し、すずめと向かい合う


「大丈夫?」

「何かあった?」(寝室の扉の凹み以外)


本音を言えば

此の状況を一から十まで(全て) 話して欲しいが

其れでも はつねははつねで怪我をしていた少女の事が気掛かりだった


()して


すずめもすずめで

何時の間にか姿を消してしまった はつねの事が気掛かりだった


「今は静かに休んで欲しくて、あの」

「色色、ありがとうございます」


なのに 自分は何も話せない

「いいのいいの」と、頬笑む はつねに何も話せない


「狐鬼」やら

「神狐」やら到底、信じられない話だけど、



ログハウス喫茶店(カフェ)の木製出入口扉を跨いだ瞬間(とき)から

はつねをガン見する 自分(黒狐)を観察する

くろじと古着屋店主の視線に好い加減 舌打ちし交互に()め付ける


刹那、蛇に見込まれた蛙の(ごと)く 竦んでしまう

くろじと古着屋店主相手に 更に「圧」を掛けようとするが


「さ狐」


名を呼ばれ

金狐に(たしな)められるも内心、黒狐には別の意図があった


然うだ

「人間」ならば男だろうが 女だろうが

斯うした反応になる筈なんだ


なのに

なのに眼の前の 此の女 (はつね)は違う



「、あの」

「、あの、ですね」


話して、いいのかな?

話しても、いいのかな?


口籠もり 次の言葉が出てこない

すずめに


「ん?、なになに?」


努めて明るく

はつねも(うなが)すが一向に 会話が進まない

様子に 金狐が(内容違いの)助け舟を出す


「甘味で小腹を満たしたいのだが」


「ああ」と 頷く

屋外(テラス)席を興味津津に眺める 金狐に向き合う

はつねが「どうぞ」と カウンターテーブルに置く、品書(メニュー)を手渡す


此処ぞとばかり

金狐の素性を見定める様子の はつねの胡桃色の目が

金狐の琥珀色の 眼と()ち合う


其れは 時間としては短いが

其れは 体感時間としては長かったのだろう


其れは「矢張り 此の女可怪しい」

と、黒狐が確信するには十分過ぎるくらいには 長かった


金狐も金狐で

琥珀色の眼差しの奥、月影の如き白銀(しろがね)の光で はつねを捉える


今の今迄

己(金狐)を直視出来る「神狐」は多くない


或る者は 恐れ

或る者は 気味悪がる(笑)


だが 眼の前の女 (はつね)は「人間」でありながら「(特)別 (の)物」だ

今も尚、己(金狐)を見詰め返してくる


此れだから「人間」は面白い と、心中 感嘆する

金狐が笑みを浮かべて 呟やく


丙午(ひのえうま)か」


其(金狐)の言葉に反応する

黒狐が「道理で」と、吐き捨てた


「丙午」とは 六十年に一度 やってくる、干支の一つ


此の年には火災が多く

又、此の年生まれの「女」は夫を殺すという

俗説がある程、気が強い女性 (らしい)


二人(金狐と黒狐)の様子に「なに?」と 聞き返えす

はつねから品書(メニュー)を受け取り 丁寧に礼を述べる

金狐は、いそいそ屋外(テラス)席 木製両開き扉を()け広げて 出て行く


何とも引っ掛かるが

何とも言わずに金狐の背中を見送る

はつねの前を 黒狐が何食わぬ顔で通り過ぎて行く


瞬間、(これ)見よがしに鼻を鳴らす

相手(黒狐)に打ち切れる寸前の はつねにすずめが慌てて謝まる


「、ごめんなさい」


(黒狐の為に?)頭を下げようとする

すずめを()めて、はつねは笑顔を(たた)えて 頭を振った


「いいのよ」


、はつねさん


「いいのよ」

「みやちゃんの「友達」なんでしょう」


すずめは「知り合い」と 言ったが

如何 見ても「友達」以外の 何者でもない


第一印象(外見)も

第二印象(内面)も

第三印象(雰囲気)も 白狐(みやちゃん)同様、浮世離れしてる


其れが はつねの見解だ


然して何故か

(黒狐の)徹頭徹尾、胸糞悪い態度も段段 癖になってきた(気もする、笑)


然うして


「みやちゃんの「友達」なら」


「私」

「大歓迎だから(多分)」


(しか)し はつね自身

知らず知らず我慢しているのか


拳を握り締める爪は 手の平(の皮膚)に食い込み

()()観察()れば、はつねの目は笑っていなかった


(はつねさん、ごめんなさい!)

バンバイアハンターD とか

魔界学園 とか、もうもう大好物でし(た)

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