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空と海の境界線
水平線の遥か、ひかめく朝日を背にする
白狐は
一旦、戻ろう
一旦、すずめの元に戻ろう
人形に姿を変えるも項垂れたまま
共に、ひばりを探すと
ちどり (+ひく先輩)を失い
親 (+しゃこ)を失い、家を失いながらも
共に、ひばりを探すと
すずめは言ってくれたのに今や 媒体としての用を成さない
ひばりこそ「本物」
故に 巻き込む訳にはいかない
故に 連れて行く訳にはいかない
分かっていたのに
仮初の巫女 だと分かっていたのに
途端、髪を掻き毟りたい衝動に駆られるも寸前で思い留まる
「下らん」と 吐き捨て
其れでも一旦、すずめの元へと一歩 足を踏み出した瞬間
(自身の)短髪の黒髪が飛禽が羽搏くが如く、一気に広がる
顔に被る
腕に掛かる (本来の)白髪を繁繁 見詰めて、笑みで唇を歪める
強大なる「闇」の気配に「人間」の振り等 到底、無理なのだ
牙を剥く 其の顎が獣のように音を立てる
其れ程か?
何れ程か?
「ならば 此の身を呉れてやる」
上も下もない 漆黒の中
其処だけ
此の部屋だけ
僅かな光が差し込む 箱庭のように存在する
多少、強張る身体で寝台から起き上がる
少女を(自身の)尻尾で支えつつ
頭突き(え?)で漆黒の仏蘭西窓を押し開ければ
延延、漆黒の庭が広がる
何故、庭だと思うのか
其処には庭(闇)を眺めるには丁度いい(笑) 四阿があるからだ
然うして
縁台に腰掛ける 傍ら
白狐は少女の寝間着の肩に持参した白装束を羽織らせる
斯ういっては何だが
(獣の)毛皮の何処から取り出したのか? と、首を傾げる
少女の死角から其の背中を(白狐の)尻尾が とんとんっと叩く
当然 振り返える少女の背後には「闇」しかない
多少なり眉を顰めるも何事もなかったように正面の「闇」に向きなおる
傍ら「お座り」して素知らぬ振りを装い 心の中で微笑う
白狐が再度、とんとん しようとした瞬間「待ってました!」と ばかり
少女の手が幾つにも分かれる(白狐の)尻尾の一つを掴み上げる
「ヤッタ!」と いう表情の少女と
「ヤラレタ!」と いう表情の白狐が顔を見合わせた結果、爆笑する
ふさふさの毛皮同様
ふさふさの尻尾を胸に抱き けらけら笑う
幼き日のように甘えてしまう
幼き日のように甘えてしまうのは 白狐の所為だとばかり
ひばりは、けらけら笑っている
実際、此の状況では空元気だ
未だ ふらつく少女自身、分かっている
両手で抱き抱える
尻尾に顔面を埋める少女は瞼を閉じる
みや狐は変わらない
幼き日のように
幼き日の 自分を守るように此処にいるのだ
「昔」も
「今」も、此の「先」も
其れは 変わらない
其れは 変わらないのだ
其れでも
みや狐を待っている
みや狐を待っている「巫女」がいるのだ
然して 当たり前だが
自分 (ひばり)の思考は
自分 (ひばり)の感情は
自分 (ひばり)の行動は筒抜けなのだ
軈て (気)力を振り絞って立ち上がる
心 許ない足取りで(漆黒の洋館の)仏蘭西窓へと引き返えす
少女の後ろ姿を追えばいいものを 如何にも追う事が出来ない
出来ないけれど
其の 後ろ姿を見詰める白狐の眼が 少女を出迎える「影」の姿態を捉える
思わず(自身の)眼を凝らす白狐が立ち上がり掛けた
次の瞬間「 うけけ〜! 」と、第三眼の(耳障りな)哄笑が闇に木霊する
姿 なき声に四方八方、眼光を飛ばすも
何時の間にか自身(白狐)の前に悠悠、少年が和かに佇む
「ごめんなさい」
「覗きは 僕の趣味なんだ」
真逆 (まさか)、彼の場面で第三眼が笑うとか予想外
心底、場都合悪るく謝罪(?)を述べる 少年を余所に
「 悪趣味でごめんね〜 」
と、悪びれない第三眼は笑いが止まらない
「 打明、其処に「愛」はないのね〜 」
身も蓋もない 言葉に
抑、あったのかも疑問だ、と 後悔する
抑、是が非でもすずめを始末しなかったのか、と 後悔する
溜息すら出ない 少年が
前傾姿勢で、戦闘態勢を取る白狐と対峙する
「すずめじゃないと、駄目なの?」
全身の毛(皮)が逆立つ
怒りを表わす白狐が口元を吊り上げ一歩、前に出る
当然、迎え撃つ
少年も退く処か一歩、前に出る
「すずめの「珠」だけは絶対、嫌だよ」
途端、剥き出しの牙を鳴らす
白狐が顔を歪めて 眼の前の少年に問い質す
「其れ程」
「其れ程、白紙にしたい「願い」を何故 口にした?」
然う 問われても
少年自身、口にした覚えはないのだから答えようがない
答えようがないが
「僕も 幼かったからね」
幼さ故の 失敗
幼さ故の 失態、と 少年は自嘲気味の笑みを浮かべる
知ったことか とばかり
「ない」
「白紙に出来る「願い事」等、ない」
一刀両断する
白狐の言葉に眼玉を丸くする 第三眼が引き笑いを披露する
釣られる白狐も大口を開けて笑いだす
唯 一人、面白くもない少年が 其の首根っ子に食らいつく
「化かそうが」
「誑かそうが お前の勝手だけど」
「「神狐」が嘘を吐くなんて 滑稽だね」
「其れ程、」後の言葉は
少年が意図的に濁したが白狐には確と聞こえた
(すずめを救いたいの?)
「絶対」はない
「絶対」は此の世には ない
背に腹はかえられぬ
少年も
白狐も 百も承知二百も合点
「夢話 だ」
少年の 黒目勝ちというよりも
漆黒の闇の如く 覆われた眼を覗き込む
白狐が動じず 続ける
「誰も彼もが 耳にしたが」
「誰も彼もが 眼にした事はない」
「其の意味が 分かるか?」
「子ども扱いしないでよ」と 言いつつ
首を傾げ考える少年を余所に 其の額に陣取る
第三眼が眼球を ぐるりと引っ繰り返えす
何となしに見遣る 白狐の目の前で
揶揄っているのか?と 疑う程、繰り返えし引っ繰り返える
少年は少年で第三眼の所業に
気付いてないのか
気付いていても然程、興味がないのか
延延、白狐の「問い」の 答えを探している様子だった
事「願い事の無効(or白紙撤回)」に関して
少年は頗る 自制がなくなる
彼の夜の
掻き上げる頭髪を勢いよく 引き千切る
雄叫びのような笑い声を上げ続ける 少年の姿を思い浮かべる
だが
此れ程迄に 幼かったか?
此れ程迄に 此の少年は幼かったか?
「 うけけ… 」
唐突の 予期せぬ第三眼の笑い声に
不覚にも余所事を考えていた白狐は 本筋を思い出す
「喩え 真だろうが」
「「白紙」になる事はない」
少年も思い出したように白狐との会話に首ではなく 耳を傾ける
「彼方此方」
「歪んでいても其れは其れで お前は納得するしかない」
其(白狐)の 翡翠色の眼が艶めく
「お前の 失った「モノ」が」
「多少、歪んでいても構わないのなら 試してみるがいい」
又しても 魅入られそうになるも
白狐の言葉に釈然としない 少年が(自身の)唇を尖らせる
子どものような 反応を眺める
嘸や 悔しいだろう
嘸や 歯痒いだろう
ならば 此の「神狐」様が妙策に導いてやろう
翡翠色の眼が ぎろりと少年を射貫く
「件の「神狐」に願え」
一瞬で噴きだす 第三眼をフル無視で
白狐の鼻先に
自身の鼻先を被せる勢いで前のめる 少年が無言で食い付く
「其れが確実で」
「其れが単純で「珠」を必要としない 問題ない遣り方だ」
贋だろうが
真だろうが
頭の中で繰り返される
言葉に うんざりしながら少年が吐き捨てる
「、何十年」
「、何百年、探しても見付けられない相手なのに」
僕だって
探さない筈 ないじゃん?
真っ先に探さない筈 ないじゃん?
「、如何やって?」と 訊ねるのも面倒くさい
徐に 白狐の鼻先から顔を遠ざける
少年が其(白狐)の鼻口部に顎を乗せて 此の提案の答えを考える
生憎、真偽の程は分からないが
生憎、他の方法は難しい
拒否れば此の(白)狐、死んじゃいそうだし?
徐徐に 白狐の顎の上で項垂れる
少年の思考を共有するも
少年の思考を支持出来ない 第三眼が辛抱たまらず忠告する
「 此の狐、生粋の「神狐」じゃねえな 」
悲しい哉
白狐は元より 肝心の少年自体、反応してくれない
仕方なく(?) 第三眼は語気を強める
「 ぷんぷん臭うぞ! 」
「 下手したら化かされるぞ、狐… 」
言い終わる前に
白狐の 幾つにも分かれる全ての尻尾が第三眼の目ん玉目掛け、飛び掛かる
間一髪、項垂れたままの少年の身体が 頭上の闇に吸い込まれる
然し
丸で 傀儡の如き動きで闇を移動する
少年に 第三眼が喚き散らす
「 おい!、避けろって! 」
「 おい!」
如何やら「跳んだ」のは 第三眼の火事場の馬鹿力(?)の結果 らしい
「 おい! 」
「 おい!、狐鬼! 」
腹を立てる 第三眼の呼び掛けにも
其の 手足をぷらぷらするだけの少年を仰ぎ見る
「返答は 如何に?!」
白狐が咆哮さながら迫るも
頭を揺らす 少年は仰け反りながら「きゃはは」と、声を上げて笑うだけだった
何の脈絡もないんですけど
鉛筆で程程、文字を書けるようになる迄は
箸の(持ち方)練習はしない方がいいと個人的には思います
多分
何の関係もないとは思いますけど
ギターを始めて思うのは圧倒的に指の力が弱いという事
ストローク等、弾こうものなら弦に負けて? ピックが何処かに飛んでいく
まあ、そういう事です(は?)