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何度目かの会議

 もう夜も深く、続きは明日――もう日は跨いでいるけど――ということになった。フェイロンは昨日と同様に一般の仮眠室へと向かったようだ。

 

 この部屋の隣にある副長官専用の仮眠室を使わせようかとも思ったんだが、それを言う前にフェイロンはいなくなっていた。お前、普段からそんなスピードで移動しているのか。

 

 俺は簡素なベッドに横になった。簡素と言っても、一般の仮眠室のものよりは上等なものである。地面でも寝れる俺からしたら、上等すぎるくらい上等だ。

 

 明日、目覚めたらアネモネのところへ行って、話し合いをしなければならない。それを思うと、少し憂鬱な気分になった。俺の質問によってアネモネが気分を悪くしていたのは確かなので、どんな顔をして会えばいいかわからないのだ。

 

 「まあ、俺が上司であいつが部下なんだから、気にするのはよそう」

 

 最低な独り言を呟き、俺はひとまず身体を休めることに専念した。

 

 朝の会議室には、俺、フェイロン、アネモネ、アルバートを始めとする調査隊が集まっていた。つまり、この前と同じメンバーだ。

 

 懸念していたアネモネとの話し合いの場だが、アネモネはいつも通りに見えた。俺が意識しすぎていただけなのかもしれない。自意識過剰で恥ずかしい。

 

 「あの後、何か尋問に進展はあったか?」

 

 「はい。拷問、じゃなくて尋問ですが、かなりの収穫があったので、まずはそれからご報告させていただきと思います」

 

 アネモネに尋ねると、実に事務的な口調で答えてくれた。俺がせっかく尋問って言ったのに、わざわざ拷問って言ってた。もう言い間違いとかじゃなくて、完全に拷問してるじゃん。周りもちょっとざわついてるよ?

 

 自分でもちょっとまずいと思ったのか、アネモネはすかさず報告に移った。

 

 「まず、この場で知らない方々にお伝えしておくと、解毒方法が見つかりました」

 

 アネモネは最初にそう断言した。フェイロンは解毒できる可能性があるという程度に言っていただけなのに、慎重派のアネモネがきっぱりと言い切ったのだから、そこには何かしら根拠があるに違いない。

 

 解毒の可能性があることを知らなかったアルバートたちは、アネモネから衝撃の事実を聞かされて、拷問のことなんか忘れている様子である。アネモネの作戦は成功したみたいだ。

 

 「証拠はあるのか?」

 

 『黒の刃』に攻撃を仕掛ける上で、解毒方法の存在が確かでなければ、完全なる骨折り損になりかねない。ゆえに、証拠は非常に重要である。

 

 「あります。ご、尋問中に、構成員に《悪魔の塩》を投与したのですが、そんなに焦った様子がなかったのです。そこで、解毒方法があるのか?と質問してみると、知らないという答えが返ってきて、それがファルサ・ウェリタスに引っ掛かったため、解毒方法の存在を確信しました。その後、色々ありまして、アーティファクトで解毒が可能であることを突き止めました」

 

 拷問の「ご」が聞こえてきた気がするけど、聞かなかったことにしよう。そう決意した直後、捕虜に《悪魔の塩》を投与するという明らかな拷問行為をしていることが明かされたため、軽く引いた。その後にあったという色々に何が含まれているのかは、想像しただけでも恐ろしい。

 

 でもこれで、フェイロンの話と合わせて、鈴型の無効化アーティファクトによる解毒というのが真実味を帯びてきた。

 

 「それで副長官、どのような作戦をお考えなのでしょう?」

 

 アネモネに話を振られる。解毒方法があるということがわかって会議室内は温まっているため、話しやすい環境が出来上がっていた。よし、満を持して発表させてもらおうではないか。

 

 「『黒の刃』に正面から攻撃を仕掛ける」

 

 「ええ!?」

 

 「本気ですか?」

 

 「そんな……」

 

 「無茶ですよ!」

 

 隊員たちからは非難轟轟。全然満を持せていなかったようだ。温まっていた場は、一気に極寒の地へと変貌した。そもそも冬真っ盛りで寒いんだから、会議室の雰囲気をこんなに冷ましちゃったら死人が出るレベル。

 

 この場をどう収拾しようかと頭を悩ませていると、口を開いたのは我らがアネモネだった。

 

 「攻撃を仕掛けるとして、それで何がどうなるんですか?」

 

 助け舟を出してくれるのかと思いきや、詰められている。口調的には、詰められているというよりも、責められていると言った方がいいかもしれない。

 

 だが、焦ってはいけない。この作戦はフェイロンと一晩掛けて考えた作戦なのだ。しっかり説明すれば、みんなもわかってくれるはずだ。

 

 「攻撃を仕掛ければ、いずれボスが出てくる。そして、ボスに対して使われるだろう無効化アーティファクトを奪い取り、解毒に利用するんだ」

 

 「目的あっての攻撃であることは理解しましたが、それでも大規模な犯罪組織である『黒の刃』に対して、我々だけで戦いを挑むことが可能でしょうか?」

 

 目的あっての攻撃って、俺は目的もなく攻撃を仕掛けるほど馬鹿じゃないし、そもそもそんな度胸もない。いや、そうじゃなくて――

 

 「俺は可能だと考えている」

 

 俺は質問に正面から答えた。アネモネは身体ごと向き直って、再度質問してくる。

 

 「長官はいないものとしてもですか?」

 

 なぜここで長官の話が出てくるのか。いつも酒を飲んでいるか、寝ているかの長官なんて、いつもいないようなもんだろうに。

 

 「もちろん、長官がいなくても可能だ」

 

 「その根拠は?」

 

 獲物にトドメを刺すかのような眼光。どうやらここが正念場らしい。俺は畳みかけた。

 

 「砦に新兵器を配備する」

 

 「新兵器……?」

 

 新兵器というのは予想外だったようで、一気に気の抜けた表情を晒すアネモネ。噛みつかれると思っていたので、こちらとしても拍子抜けだ。しかし、ここでペースを落としてはならない。相手が弱っている今がチャンスだ。渾身の一撃を放つ。

 

 「平原一面を焼き払う大魔法を千発撃てる兵器だ」

 

 「は?」

 

 アネモネの口が見たことないくらい開いていた。


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世界一適当なサブタイトル。

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