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閑話 シルヴィエの日記

読んでくださってありがとうございます!

閑話です。

・二四七年、十二月五日

 そろそろ、お兄様が帰って来ると思う。会うのは一か月以上ぶりだ。今からドキドキしてしまって仕方がない。ソーン砦という遠いところに行ってしまうと聞いたときはその行動が理解できなかったけど、今ならそれがよく理解できる。国境には危機が迫っていたのだ。今回のアンデッド侵攻を機に、改めてお兄様のレポートを読んだけど、恐ろしいまでの的中ぶりだった。思わず、お兄様のご慧眼を喧伝してしまった。最初はわかってくれなかったおばさまだって、ちゃんとお話すればわかってくれた。今では、王都周辺でお兄様の名を知らぬ者はいないわ。

 お兄様のレポートにあったように、おそらく今回のアンデッド侵攻は始まりに過ぎない。これから、さらに敵の攻勢は強まるはず。この敵がスイートランドなのか、竜人族なのか、神仙国なのか、はたまた北方連合なのかはわからない。二つ以上の国や組織が関わっているかもしれない。だけど、誰が相手であっても、今回の魔法陣式の兵器はきっとお兄様の助けになるはずだ。

 

 

・二四七年、十二月九日 

 お兄様が帰って来た!王宮でお兄様と目が合ったときには、説明すべきことのすべてが伝わった感覚があった。でも、魔法陣について説明したときには、お兄様は少し浮かない表情をされていた。開発した兵器の性能がお気に召せなかったのかもしれない。もっと研究に励まなければ。

 お兄様は国王陛下から新たな任務を授かっていた。お兄様なら即座に解決してしまわれるに違いない。だけど、それだと砦へのお帰りが早まってしまうのが残念だ。

 そこで、私は任務のお手伝いをすることにした。これならば、お兄様が王都にいる間中、一緒にいることができる。我ながら名案だ。

 と思っていたのに、部下のアレクさんという方と冒険者ギルドのラムさんという方までお兄様と行動を共にするという。厄介極まりない。特に、お兄様とラムさんの間には何か隠し事があるみたい。気になる。

 そして、今日一番驚くべきことは、捜査開始一日目にして犯人がわかったことだ。さすがはお兄様。しかも、その犯人は師匠だった。いや、もう師匠とは呼べない。ただの殺人犯だ。

 それにしても、お兄様の推理能力は素晴らしい。私なんかでは到底及びもしない。私やラムさんにちょこちょことヒントを出しながら、パルドさんが偽物であることとその正体がわかるように導いてくださったのだから。

 それと、知識量もすごい。呪龍の封印具なんて、私は知らなかった。自分の無知ぶりが恥ずかしくなってしまう。

 今日、犯人を取り逃してしまったのは痛かったけど、明日の夜までに捕まえれば、呪龍復活の心配はない。アレクさんがいいアイデアを出してくださったし、お兄様がいればきっと大丈夫。

 

 

・二四七年、十二月十日 

 呪龍が復活してしまったのは予想外だったけど、討伐できたからそれでいい。なぜ呪龍が復活してしまったとかは、また明日考えよう。そんなことより、お兄様が土魔法で作った階段から落ちて寝込んでいることの方が問題だ。お早いお目覚めをお祈りするしかない。

 お兄様は家で介抱することになった。私がお兄様をお着替えさせようとしたとき、アレクさんが割り込んできた。私がやると言ったのだけど、同性の自分がやると頑として聞かなかった。意外と頑固な方だった。

 お兄様、早くお目覚めください。

 

 

・二四七年、十二月十一日

 今日一日、お兄様が目を開けることはなかった。じっとしていても仕方がないので、昨日の日記に書いたように、なぜ呪龍が復活してしまったのかを調べてみた。最初に聞いた中佐のお話によると、犯人は封印具で自殺したという。おそらく、これによって復活の条件が満たされてしまったのだろう。だけど、犯人が自殺したのは朝だった。これではお兄様が言っていた、一七晩連続して一人を殺害するという条件に一致しない。

 そこで私は、王立図書館で呪龍について調べた。なかなか呪龍について書いた本が見つからなかった。ようやく見つけたのは、図書館の奥の方にある埃を被った本棚でだった。図書館にあんな場所があったなんて知らなかった。お兄様、あんなところの本まで読んでいるなんて、どこまで好奇心旺盛なのかしら。

 書いていて話が逸れてしまったけど、その本によると、条件は「十七回の太陽の隠れし時に、それぞれ一人の生贄を捧げよ。一日たりとも欠かすことなかれ」だった。お兄様は「太陽の隠れし時」を夜と解釈したようだけど、太陽が見えなければそれでよかったみたい。事実、犯人が自殺したという時刻には、分厚い黒い雲が空を覆っていたから。これはたまたまではなく、犯人が竜魔法で呼び寄せたのでしょう。自殺については、封印具に操られてなのか、自分の意思だったのかはもうわからない。別に、それを知ったところでどうしようもないけど。

 

 

・二四七年、十二月十二日 

 お兄様が目覚めた!本当によかった。またもお着替えをお手伝いできたなかったことだけが悔やまれる。

 お兄様に与えられた褒美は、正直少なすぎる。勲章だって、もう二階級くらい上のものでもいいのに。それでも満足気なお兄様って、どれだけ謙虚なんだか。まあ、そんなところが素敵なのだけれど。

 お兄様がアレクさんと王都を観光すると中佐から聞いて、慌てて駆け付けた。アレクさんって、なんだか怪しい感じがする。何が怪しいとは言えないけど、何かが怪しい。何だろう。

 コロッセウムでの試合では、怪しげな男を見た。男が怪しかったというより、使っていた魔法が怪しかった。魔力を身体に纏って、身体能力を向上させるようなものだと思うけれど……

 お兄様が家に近寄らないのは、いつも通りだった。同じ宿に泊まっているだろうアレクさんが羨ましい。

 

 

・二四七年、十二月十三日 

 お兄様が帰ってしまった。本当に短い時間だった。自分の力不足を感じさせられる日々だった。もっと魔法の訓練や研究に力を入れて、お兄様の力になりたい。今度お兄様が帰ってきたら、お兄様を驚かせるような成果を見せたい。

 そうそう、お兄様がお帰りになるとき、あのコロッセウムの男がいた。お兄様に頼んで、あの男が使った魔法について調べてもらうことになった。お兄様だったら、あの魔法を習得してしまうかもね。お兄様が次に帰って来るのが楽しみだ。

感想お待ちしております!

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ブクマ・評価ありがとうございます!


次も読むよ、という方がいらっしゃれば、ブックマークや評価をよろしくお願いします!


シルヴィエのヤンデレ味がすごくなってしまいました。

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