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王国の生命線

読んでくださってありがとうございます!


 どうも、エル・マラキアンです。所属は国境警備隊ソーン砦。一応、副長官をやってます。副長官と言っても名ばかりで、仕事はほとんど一般隊員と変わりません。名誉職みたいなものです。

 

 我が国境警備隊は窓際部署として名高く、残念ながら軍の中での落ちこぼれが多いです。もちろん、副長官である私も例に漏れず落ちこぼれです。

 

 そんな私が、国の存亡を懸けた作戦の立案を任されています。これはいったいどういうことなのでしょう。私に仕事を任せた上司は、上手くいくと思ってるんですかね?あの、無理ですよ?あなたの決断が国を滅ぼしますよ?悪いのは私じゃないですよ?

 

 私にこの仕事を与えたのは、上司である中佐です。彼はその仕事ぶりが評価されて、平民ながら中佐にまで成り上がりました。冷静に考えて、あなたが考えた方がよくないですか?そうでなくとも、せめて少しくらい協力してくださいよ。本当に国が滅んじゃいますって。 

 

 こんな現実逃避をしたところで、事態が悪くなることはあれど、よくなることはありません。そんなことはわかっています。でも、考えたところでなーんにも思いつかないんですよね。

 

 「で、打開策は?」

 

 はい、来ました。中佐からの催促。締め切りが間近も間近なので、こう何度も催促されるのも仕方ありません。それでも何も思いつかないんです。

 

「さっき何か言いかけていたな。それを聞かせてみろ」

 

 何か言ってたっけ?いつも適当なことばかり言ってるから、自分の言ったことでも覚えていないことの方が多いんだよな。

 

 「さっきはブレスのせいで中断されてしまったが」

 

 ああ、思い出した。剣が通らないとき、取れる行動は二択ですって言ったな。そのとき、ちょうど呪龍が石化ブレスを吐こうとしていたせいで中断されたんだった。

 

 二択ですって言ったのも適当だからなあ。本当は三つですって言いたかったけど、三つも思いつけなさそうだったから適当に二択って言ったんだよなあ。だが、ここまで催促されて何も話さないわけにもいかない。

 

 「そうですね。先ほども申し上げましたように、取れる行動は二択です」

 

 内心はバックバクでも、全力で冷静なフリをする。えーっと、剣が通らないときに取れる行動は……

 

 「剣が通る場所を探すこと、魔法を使うことの二つです」

 

 「当たり前だな」

 

 うぐっ、止めてくれ。その即答は俺に効く。自分の中では、短時間のうちによく絞り出したものだと内心では自画自賛していたのに。

 

 「で、剣が通る場所はどこで、魔法を使うならどんな魔法を使うんだ?」

 

 展開が早いって。人の話を最後まで聞くということ教わらなかったのか、この人は。

 

 「ええっとですね、目や口なら剣が通ると考えます。口は噛みつかれたり、ブレスを正面から食らったりする可能性があるので、目を狙うのが無難かと」

 

 中佐からの質問に何とか食らいつく。

 

 「ほう」

 

 とりあえず、中佐から叱責の言葉はない。この調子でいこう。

 

 「魔法の方ですが、現在は魔術師が一人しかいないため、攻撃に回すのは難しいと考えます」

 

 「そうだな。浅い部分もあるが、私の考えとそこまで変わらない」

 

 あれ?口ぶりから察するに、中佐はすでに打開策を思いついていたのか?俺、弄ばれてた?……ひどい、本気だったのに!

 

 「さて、最善は応援の魔術師が来るまでにケリをつけることだ。その上で、私とお前の見解は一致している。剣によって目を潰すことだ」

 

 弄ばれていたことを悔しがる暇もなく、話は次に移っていた。が、方向性は中佐が示してくれたので、これで一段落だ。

 

 「はっ」

 

 話が一段落ついたことに安堵し、元気に返事をした。

 

 「目を潰すと言っても、それだけではやつを殺すことはできない。目から脳まで剣を貫通させなければな」

 

 中佐はそう付け加えた。たしかに、目を潰すだけでは致命傷になり得ない。目を狙うのは、あくまでそこが剣の通る柔らかい部分だからだと考えられるからだ。

 

 「それに関して問題がある」

 

 少し間を空けて中佐が言った。

 

 「どのような問題でしょうか?」

 

 あれだけ大きい的だ。中佐ならば簡単に貫けるだろうから、不思議に思って尋ねた。

 

 「ふむ。あれと至近距離で対峙すればわかるが、あんな姿をしていながら隙がない。目から脳まで貫くなら、相当接近する必要がある」

 

 「なるほど。しかし、中佐ならば可能なんですよね?」

 

 「可能だ」

 

 即答だった。さすがは中佐だ。なんて頼もしい上司なんだ。

 

 「では、囮を頼んだぞ」

 

 ……え!?囮!?

 

 抵抗する暇もなく、俺を囮にした作戦が決行されることになった。作戦は作戦と言い難いほどシンプルで、俺とアレクが囮になり、シルヴィエがブレスを制御し、隙を見て中佐が目から脳まで剣を届かせるというものだ。

 

 シルヴィエと作戦の話をしていたら、いつの間にかアレクも中佐から囮の役目を授かっていた。囮は窓際部署のやつにやらせておけ、ということなんだろうか。クソ、全然頼もしい上司なんかじゃねえ。

 

 「副長官のことは自分が守ります!」

 

 作戦決行数分前、似合わないガッツポーズをしてアレクが言った。そんな細い腕で俺を守るとかよく言ったもんだ。

 

 「お前の役目は俺を守ることじゃない。中佐が斬り込みやすい隙を作ることだ」

 

 作戦の目的を忘れないよう、一応釘を刺しておいた。

 

 「そ、そうですね!」

 

 そう答えたアレクの顔は少し赤かった。こいつ、冗談じゃなくて本気で言ってたのか?で、俺に図星を突かれて焦っているとか。じゃなきゃ、このタイミングで顔が赤くなるわけがない。まあ、守ってもらえるなら守ってもらいたいけどね、死にたくないから。

 

 中佐は俺とアレクのやり取りには興味がないようで、見向きもしない。その視線は呪龍に注がれ、絶えず動きを窺っている。そして、中佐は静かに言った。

 

 「作戦開始だ」

 

 ロウマンド王国の生命線を握った作戦が始まった。


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全然気づいていなかったのですが、初めて「いいね」がついていました。ありがとうございます!

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