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真犯人

読んでくださってありがとうございます!

 「パルド、犯人はお前だったんだね」

 

 「え!?」

 

 「え、なんですか?」

 

 おっとっと。ラムの衝撃発言に、つい声を上げてしまった。でも、ちょっと話が急すぎないか?納屋で見つかった死体がどうのこうのと話していたはずなのに、何でいきなり犯人がわかったの?しかも、ラムの身近なやつが犯人だったなんて、意味がわからない。

 

 「ごめん。続けてくれ」

 

 だが、犯人がわかったなら、俺からボロが出る前にさっさと事件を終わらせてもらった方がいい。というわけで、厳かな雰囲気を醸し出しながらラムを促した。

 

 「そうさせてもらいます」

 

 「だ、代表!話をつづけるも何も、私は犯人ではありません!」

 

 パルドは必死の抵抗を見せる。犯人であろうとなかろうと、疑われればたいてい否定から入る。おやつ泥棒の疑いをかけられたときには、俺だってそうする。たとえ本当におやつ泥棒だったとしても。


 そういう意味で、パルドの反応はごくごく自然なものだった。犯人っぽいし、犯人っぽくないとも言える。さて、ラムはこれからどんな証拠を突きつけようというのか。

 

 「ここ最近のお前は、様子がおかしかった。だからー、私はずーっとお前を試してたんだー」

 

 試していたとは何とも曖昧な言葉だ。しかし、説明されなくともどういうことかはわかる。ファルなんとかを使い、パルドの言葉の真偽を確かめ続けていたのだろう。疑わしいと思ったその日から。

 

 「た、試していた?……っどういうことですか!?」

 

 意味がわからない、とパルドは説明を求める姿勢。顔からは焦りが見て取れる。ここまでは典型的な反応を続けているな。犯人でも犯人じゃなくても同じようなことを言いそうだ。


 ラムの方はといえば、いつもの話し方が戻ってきているところからして、落ち着いているのかもしれない。部下を断罪する覚悟ができたということなのだろうか。

 

 「これでもー、最後まで信じてたんだよー?」

 

 最後まで信じていた。最後までということは、もうすでに最後を迎えたということ。ラムとパルドの長きにわたる関係の最後が。それを言い切るだけの自信や覚悟がどれほどのものなのか、計り知れない。

 

 「だったら、信じてください!私はやっていません!」

 

 パルドは泣きながら叫んだ。これが演技なら、相当な演技派だ。王国の劇場で何かしら役をもらえるかもしれない。

 

 一方ラムは、今のパルドの言葉を聞いて表情から光が消えていた。何を考えているのか読み取れない。もしこれが演技ならば、王国の劇場で主役を張れるだろう。舞台が終われば拍手喝采間違いなしの名演技だ。

 

 だが、演技ではない。ラムにはわかるからだ。パルドのやっていませんという言葉が嘘であることが。パルドが犯人であることが。

 

 「じゃあ、パルド。さっきから何でそんなに嘘ばかりついているの?」 

 

 ラムの声は酷く冷たいものだった。部下が罪を犯したことへの悲しみなども一切感じられない。ただ事実を突きつけるだけの音の塊だった。

 

 パルドは何も答えない。ただ唾を飲み込むだけだった。このとき、ついに俺も悟った。犯人は間違いなくこいつだと。今のパルドの姿が、元上司に徹底的に詰められたときの俺に似ていたからだ。もう何も言えなくなった人間だけがかく汗をかいていた。俺にはわかる。

 

 「う、嘘などついておりません……」

 

 なおもパルドは抵抗を続けた。しかし、どれだけ嘘に嘘を重ねても、ファルなんとかを持つラムの前では無力だ。

 

 「それも嘘だね」

 

 完全に終わった。何がどうしてこうなったのかはわからないが、とにかく終わった。これで砦に帰れる。そう安堵したときだった

 

 「犯人は、パルドさんではありませんよ」

 

 その場の全員が声の方を向いた。そっちを向くまでもなくわかっていたが、声はやはりシルヴィエのものだった。

 

 いったいどういうことなんだ。ラムがファルなんとかを使ってパルドを試し続けた結果、嘘だらけのパルドが犯人だという結論に至ったのではなかったのか。少なくとも、俺の頭の中ではそういう理解だった。シルヴィエの目には何が見えていると言うんだ。

 

 「嘘が多いからと言って、パルドさんが犯人だとするのは早計です」

 

 シルヴィエは落ち着き払った様子で言った。たしかにそうだが、犯人じゃないならこの場で嘘をつく必要はなおさらないではないか。にもかかわらず、嘘をつき続けるパルドが怪しまれるのは自然なはずだ。

 

 それに何と言っても、やっていないという言葉が嘘なのは明らかなのだから、やったのが本当なはずなのだ。パルドがどうあがいても、シルヴィエが何と言おうとも、状況からして目の前のこの男が犯人なのは間違いないはずだというのに、俺の胸はざわめきが止まらない。

 

 翻って、シルヴィエは堂々としていた。自分の言葉に絶対の自信を持っているように見えた。この状況下で、パルド以外が犯人だと言えるだけの証拠を持っているというのか。いや、証拠を持っていなければ、これだけ堂々としていられるはずがない。

 

 「シルヴィエさんは、本当の犯人がわかっているんですか?」

 

 ラムはシルヴィエに厳しい視線を向けながら言った。仮にシルヴィエが間違っていたら、ラムの覚悟への冒涜だ。ラムがあんな顔をするのもわかる。

 

 「ええ、お兄様が多大なヒントを与えてくださいましたから」

 

 それでもシルヴィエは飄々としていた。しかもシルヴィエ曰く、俺がヒントを出していたらしい。何もやった覚えはないんですが……

 

 「犯人は、あなたですね」

 

 そう言ってシルヴィエは、彼女が信じる真犯人を指さした。

 

 「あ、頭おかしくなっちゃったんですか!?」

 

 シルヴィエが真犯人を指さした直後、ラムは絶叫した。混乱しているらしい。

 

 「ど、どういうことですか?」

 

 アレクも大混乱しているようだった。

 

 俺も呆気にとられ過ぎて何も言えなかった。それくらいシルヴィエの行動は、意外というか何というか、理解に苦しむものだった。


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