第96話 ホームレスと妖精の加護
俺はすべての事実を女王陛下に告白した。
自分は妖精の加護を受けていて、それによって魔力が増強されていること。
妖精は、常に俺と一緒で不可分であること。
でも、事実を話すことで少しだけ怖くなった。
幻滅されてしまったらどうしよう。俺はここにいるべき人間ではないのは明らかだから。
また、前世のように周囲に見放されてしまったら……
家族にだって邪険に扱われてしまったんだ。家から追い出されてしまった。
こんな詐欺みたいなことをして怒らないだろうか。
それが、すごく怖い。
「これが、今まで隠していたことだ。隠していてすまなかった。幻滅したか?」
おそるおそる俺は彼女に確認した。
ウィリーの次の言葉は、俺にとっては死刑判決かもしれない。13階段を上る死刑囚はこんな感じかもしれない。
「私が、そんなことで幻滅するとでも?」
「えっ?」
女王陛下はまるで聖母のように俺に語りかけた。
「そうですか、クニカズは強いですね。そんなことがあって人生に絶望したのに、あなたは立ち上がって私たちのために尽くしてくれている。頑張っているあなたを笑う資格など、私にはありません。いえ、あなたは救国の英雄です。あなたがいてくれなかったら、この国は簡単に滅んでみんな苦しい状況になっていた。それをあなたは未然に防いでくれたのです。我々にとって、あなたは英雄であることには変わりはありません。むしろ、よくそんな大事なことを話してくれましたね。私はとても嬉しいです」
ウィリーはゆっくりうなずきながら俺の頭を撫でた。
「だけど、俺は居場所がなかったダメな男なんだぞ。今の俺はあくまで運が良かっただけで……」
「違うわ。私はあなたの性格が好きなのよ。持っている知性もとても魅力的。妖精の加護による魔力増幅は確かにすごいことだけど……それは、クニカズを構築している一部分にしかすぎないわ。その力がなかったとしても、私はあなたに側近でいてもらいたい。だから、何の負い目も持って欲しくないの。あなたはこの世界で、私が唯一対等に話せる大事な人だから、ね」
「ウィリー……」
「妖精の加護というものは、私はよくわからない。この世界の外にある理なのかもしれない。もしかしたら、私たちが神と呼んでいる存在かもしれない。でもね、そんなことはどうでもいいわ。私の近くにあなたがいてくれさえすればいい。クニカズ、私の騎士になって。私はあなたとこの世界を変えていきたい。あなたと生きていきたいのよ。だから、この手を取りなさい。一緒に世界を変えましょう」
彼女の差し出されてた手を、俺はゆっくりとつかんだ。




