第95話 ホームレス、白状する
―イブール王国・王室専用の別荘―
俺たちは、部屋の中で食事を済ませる。
良い雰囲気は続いていた。
そして、そこにひとつだけ怖さを感じている俺もいた。
はっきり言ってしまえば、俺の能力は苦労して得たものではない。たしかに、前世の歴史知識はあるが、戦闘能力は妖精の加護のおかげだ。いわば、他人の力によって強くなっている。
それを隠して、英雄として祭り上げられるのはいかがなのものか。罪悪感がないといえばウソになる。
ここら辺が潮時なのかもしれないな。
「(なぁ、ターニャ……お前の存在をウィリーに紹介しちゃダメか?)」
俺は心の中の妖精に相談した。ターニャは自分の存在のことを隠せとかは言ってなかった。実際、妖精から人間モードになって、買い物をしているくらいだからこちらの世界に干渉しても大丈夫なのだろう。俺は、どこに敵がいるのかわからなかったからあえて、ターニャの存在はあえて隠していた。
でも、ウィリーやアルフレッド、クリスタ、リーニャになら話しても大丈夫だと思う。
むしろ、このメンバーには隠し事なしでいきたい。
「(センパイ、覚悟はできていますか?)」
今まで聞いたことがないくらい低い声で妖精は警告した。
「(覚悟?)」
「(センパイの知識は、この世界に置き換えれば数百年後のものです。その知識だけでも、世界を変えるほど危険なものですよ。でも、知識だけなら限界がありますよね。そこで、私の加護の力が出てくるわけですが……)」
少しずつ彼女が言いたいこともわかってきた。
「(わたしの力があれば、本来ならばこの時代では限界である次元を超えていろんなことが実現してしまうんです。そんなことをすれば、この時代はセンパイの思惑を超えて暴走する危険性だってある。暴走してしまえば、ゲームマスターすら抑えることはできなくなる)」
「(ローザンブルク皇帝が言っていたことと同じだな)」
※
「しかし、キミは大事なことを忘れているのではないかな?」
「大事なことですか?」
「まだ、思いつかないならいい。だが、キミの持つ知性は諸刃の剣にもなるんだよ。すぐれた知性はそれだけで、持ち主の手すらも傷つけるかもしれない。我が甥のニコライ=ローザンブルクがはまったようにな?」
「ご忠告ありがとうございます。気をつけます」
※
「(ええ、私の存在を公にしてしまえば、その軍事革命の流れは加速します。センパイは空中戦という軍事革命を起こしたばかりです。私の加護を使えば数千人規模の航空戦力を実現することだって可能なんですよ? その力は先輩だけが独占した方が、あなたのためになります。私はそう思うんです)」
「(だけど、俺はこれ以上、隠し事はしたくない)」
「(センパイは、優しいですからね。私も何度もその優しさに救われました)」
「(何度も? お前には、助けてもらってばっかりだった気がするが……)」
「(そうでしたね。まだ、言うべきことじゃなかった。失言でした。判断は、センパイにお任せします)」
そう言って彼女との会話は終わった。
そして、俺は女王陛下に大事な話を伝える。




