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第89話 ホームレス、敵国のスパイを見つける

 俺は闇に向かってそう叫ぶ。これで誰もいなかったら恥ずかしいが、強い魔力の流れを感じている。

 それも敵意がある人間のものだ。


「あら、ばれてしまいましたか。さすがは、世界最強の魔術師と呼ばれるだけありますわね。クニカズ中佐?」


 女性の声だった。意外だな。てっきり男だと思っていた。闇に紛れて姿は見せていない。

 

「潜伏にばれたんだ。出ては来てくれないのかな?」


「一流のスパイはできる限り姿を見せないものです」


「女は秘密を着飾って美しくなる、か」

 名探偵アニメで言っていたセリフを俺はそのまま言ってみた。それっぽいだろ?


「それは良い言葉ですね。私も真似してみましょうか。私の目的は察しがついていらっしゃいますか、中佐?」


「一緒に酒を酌み交わすつもりはないだろうね。できることなら、さきほど将軍に渡した12年物のウィスキーを飲んで素敵な夜を過ごしたいんだけどね」


「ふふっ、ずいぶんと口説くのがお上手ですわね」


「連れないな。どうやら、振られてしまったのかな?」


「どうでしょうか。でもね、中佐。私は欲張りですので。本命になれないつらい恋はするつもりありませんよ。明らかに本命がいるであろうあなたに恋をするなんてばかげたことですもの?」


 攻撃を仕掛けてくる気配はない。俺はウィスキーの話題を出して、女がグレア側のスパイだろうとほのめかしたつもりだが、白状するつもりはないんだろうな。


 この造船所は軍事機密の塊だ。能力や侵入しやすい場所を知られてしまったら、それだけで脅威だ。

 特に、建造中や修理中の軍艦は無防備だからな。


 ドックに潜入されて魔力攻撃でも浴びれば簡単に沈没してしまう。

 実際、俺がもといた時代でも、海軍基地へのドローンや無人機攻撃の危険性はいくつも論文になっていて、ネットで無料で読めた。


 ここまで潜入されていること自体が、かなりの脅威だぞ。


「ふふ、軽い口説き文句を言っているのに、私への警戒は一切怠らないんですわね。生まれながらの戦士ですね、あなた」


 笑わせるな、俺は生まれながらのニートだぞ!?


「さすがは、我が国の宰相が見込んだだけはあります。ですが、あなたは私を捕まえることはできないのですよ。怪物的な能力者と言えども、空気には干渉できないもの」


 俺は息を止めようとしたが、地面からはガスが噴き出てきた。

 しまった、狙いは港湾施設ではなく、俺か!!


「ふふ、大型の魔獣ですらすぐに倒れる神経性のガスです。残念ですが、あなたはここまでですよ。クニカズ中佐っ!」



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