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第85話 ホームレス酒を飲む

 俺はグレタ産ウィスキーのコルクを開ける。

 この時代は瓶なんてものはないから、陶器で栓はコルク。歴史を感じるな。


 向こうではニートだがウィスキーは好きでいつも飲んでいた。

 

 俺の時代は、ブランデッドウィスキーとシングルモルトという2つの種類があった。

 ブランデッドとはそのままの意味で、複数の蒸留所が作ったウィスキーを混ぜ合わせて作るものだ。あと味を整えるためにモルト=大麦のウィスキーと、グレーン=トウモロコシや小麦などウィスキーを混ぜる。この製法なら、味は均一になって安価で美味しいウィスキーを作ることができる。


 だが、このブランデッドウィスキーは19世紀前後に完成された技術で、実はこの世界にはまだない発想だ。


 つまり、俺の目の前にあるのは「シングルモルト」ウィスキー。

 現代なら超高級品だぜ!


 シングルモルトとは簡単に言ってしまえば、一つの蒸留所のみで蒸留した大麦だけのウィスキーのことだ。これは製造も大変だし、一つの蒸留所だけのウィスキーしか使わないから大量生産には向かない。必然的に高級になるってわけだ。


 ウィスキーを寝かせるタルの状態や蒸留所の気候などによって味も違うため、個性が出やすいウィスキーになる。


 その蒸留所で特に美味しいというものが出てくるんだよ。

 飲むのが楽しみすぎる。


「センパイは、ストレートですか!! 相変わらずお酒強いですね。ローザンブルク皇帝とも強いカクテルとウォッカ飲み干してましたし」


「あの後は2日酔いがやばかったけどな」


「私は見て大笑いしていましたけどね」


「おいっ!!」


「あっ、このカクテル甘くて美味しいですね。オレンジジュースみたいでいくらでも飲めちゃう」

 本来ならこんな高級品で作るのには、もったいないんだけど喜んで貰えて嬉しいからツッコむのはやめておこう。まあ、こんなことを考えると伝わっちゃうんだけどな。


 俺はすべてをごまかすために、ストレートウィスキーを口に含む。


「うわ、安物とは全然違うな」


 香りはとても豊かで、強い度数なのにしっかり寝かせているからとげとげしさはほとんどない。むしろ、甘い。香りもフルーツや森林みたいな感じだ。


「やっぱり、12年物は違うでしょ? 仲良くなった酒屋のおじさん一押しの品ですよ!」


「うん! こんなうまいウィスキー初めてのんだよ。高かったんだろ?」


「おじさんが私のかわいさのおかげでおまけしてくれたから、大丈夫ですよ。センパイはヴォルフスブルクを代表とする軍人なんですから、しっかり語れるお酒くらい作っておいてくださいね。そうじゃないと、社交界で笑われちゃいますから!」


 こういう風にこいつはいつも俺のことを考えてくれるな。

 ありがたいというか、感謝しか出てこない。


「センパイはもっと私に甘えるべきです。だって、私たちは共犯者じゃないですか?」

 妖精は優しく笑う。

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