第83話 ホームレス、女王陛下に報告しながら旅行を提案される
そして、俺は女王陛下への報告をすませる。
「ということで、現在はまずは戦略の発展史をまとめながら、クリスタ少佐を中心に輸送計画の見直しを進めているところです」
「ええ、よくわかったわ。順調に計画が進んでいるようで、私も安心します。何か問題はありませんか?」
「軍務大臣が国立図書館の入場許可証を発行してくださると聞いているので、かなり作業スピードは向上すると思います」
実際、たくさんの資料が手に入るようになれば、かなり楽になる。
「なるほど……」
少しだけ、ムッとした表情になる女王陛下。
俺はちょっとだけ心配になる。
「いや、女王陛下にはいつもよくしていただいていますから……」
「それでも、最近はあなたに助けてもらってばかりじゃないですか。なにか力になりたいなって、思っているんですよ」
少しだけ首を横に向けて、女性的な魅力を出す彼女にドキリとする。
今は、女王と臣下だからきちんとした感じに話さないといけないのに、ウィリーは少しだけガードを弱めているように見える。
「なら、現地視察に行ってみたいんですが!!」
「現地視察?」
「はい、実際の輸送経路とかですね、港湾施設が実際どんな感じかとか!! 直接見てこないと分からないところも多くてですね。もし可能だったら視察の許可をいただきたいんですが?」
百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。
やっぱり机上の空論にならないように実際の場所を見た方が絶対に良い。
結局、それができなかったから、無謀な作戦が実施されてしまい、破滅的な被害を出すことになるんだよ。
補給路が崩壊したインパール作戦しかり、鉄道の規格が違うという基本的なミスで作戦が遅れた独ソ戦などなど。
逆に地理に詳しかったからこそ、織田信長の桶狭間の戦いや長篠の戦いはうまくいったと思う。
地理は戦争において重要なファクターだ。できる限り地形は実際に見ておいた方がいいに決まっている!!
「なるほど、婚前旅行か。悪くないですね」
「うん??」
「気にしないでください。こちらの独り言ですから」
「でも、いま……婚前旅行って」
「なんで、いつも察しないのに、そういうところだけは鋭いのよ!!」
「いや、その……」
「わかりました。ならば、私の巡幸と合わせて、あなたを随伴員に任命します。部下を選抜して、一緒に同行させなさい。港湾都市と物流の中心を一緒に確認します」
「ありがとうございます!! すぐにこちらでも準備を整えます」
「出発は1か月後とします。それまでに、確認したいところをまとめておきなさい!」
こうして、俺たちの異世界旅行が決定した。




