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第82話 ホームレス、軍務大臣と会話をする

 俺は女王陛下に定期報告するために、玉座の間に向かった。

 面会には時間があるので、控室で待たせてもらおう。


 俺が控室に入った時、そこには軍のトップであるライツ軍務大臣も待っていた。

 大柄で温厚な熊のようなひとだ。茶色い髪を少しだけ長めにしていて、少し変わり者だが気さくな大臣らしい。アルフレッドがそう言っていた。


 ゲーム世界にもたしかいたはずなんだけどな。あんまり記憶にないんだよな、この人。

 たしか、軍務大臣として軍のトップにいる間は、兵の指揮と忠誠度を上げるスキルを持っていたはず。

 ただし、それ以外はそこまで有能じゃない。トップにいるだけで部隊は強くなるので君臨すれども統治せずみたいなお飾り大臣だったはず。


 悪い人じゃないんだよな。


「おや、クニカズ中佐ではないか。こんなところで会うとは珍しいな。陛下への定期報告か?」

 穏やかな紳士が笑いながら、俺を出迎えた。


「ハイ閣下。あと30分後に女王陛下と面会予定であります」

 俺は念のため、行儀作法通りに敬礼して答えた。


「そこまで固くならなくてもよいぞ。ここには、俺とキミの二人しかいない。ハ―ブルク戦争の英雄にいろいろ聞いてみたいこともあるのでな。どうだね、論文の方は進んでいるかね?」


「今は草案作業で、情報をまとめるのに四苦八苦しております」


「だろう。だがな、キミの論文は、士官学校や軍事大学の教官たちも期待しているんだよ。是非とも素晴らしいものを作ってくれたまえ。そうだ、国立図書館に自由に出入りすることできるように今度、パスも作っておこう」


 国立図書館は貴重な本が多いので、選ばれた者しか入ることができないんだよな。だから、俺は王宮の蔵書を使って研究を進めていた。


「ありがとうございます! それは助かります」


「うむ、優秀な若者をサポートするのが我々、老いぼれのできることだからな」


「いやそれは……」


「謙遜しなくても良い。俺はよくわかっているつもりだ。軍の指揮はアルフレッドの方がはるかに俺よりもうまい。斬新なアイデアや運用の柔軟性にはキミと比べればはるかに劣る。だからな、俺みたいな無能は軍のトップの座にふんぞり返って、『行け、そこだ! やれ』と適当に言いながら優秀な奴らに頑張ってもらうのが仕事なんだよ。キミたちみたいな優秀な若者を守るために、この座にいるのであって、キミたちが失敗しても俺みたいな無能の首が一つ飛ぶだけでいいなら、お釣りが来るものだろう?」


「はぁ」

 俺は曖昧にしか答えられなかったけど、この考えができる人は器が大きすぎる。

 組織のトップに君臨するだけで、プライドが肥大化して暴走する人も多いのに、大臣は冷静に自分の立ち位置を見極めている。


「クニカズくん、覚えておきたまえ。組織のトップは無能だってかまわないんだよ。ただ、無能なら分別をわきまえることが大事だ。そして、自分が無能な分だけ、部下に頑張ってもらえればいいんだ。俺は邪魔だけはしなければそれでいい。もし研究に足りないものがあれば、アルフレッド次官経由でもいいから、遠慮はせずに話してくれ。国家の存続はキミの肩にかかっているんだからね、期待しているよ。今度はゆっくり酒でも飲もう。では、俺はそろそろ失礼するよ」


「はい、ありがとうございました!」


 そう言ってゆっくりと紳士は部屋を出ていく。

 俺はなぜか救われた気持ちになった。


――――

人物紹介


ライツ軍務大臣(大将)


知略:67

戦闘:35

魔力:51

政治:71

スキル:大器


人格者として有名だが、能力値はピンとこない。

大器というスキルで、自軍全体の士気と忠誠、防御力を底上げするので、大臣職に就かせてあとは引きこもるだけでゲーム上は忘れ去られることが多い。


士官学校の席次は68番、大学の席次は71番。

成績からもわかるように、エリートとは言い難く、常に傍流のポストを歩んできた。

本来であれば、ギリギリ少将に上がって退役すると思われていたが、人格者で敵が少なく部下の使い方がうまかったため、必要な時には結果を残して軍のトップの座を射止める。


昼行灯(ひるあんどん)などと呼ばれている。大酒飲みでウィスキーを好む。

部下の面倒見が良くて自由にやらせるタイプなので、信頼はされている。

人間的な魅力はあるがゲーム的にはあまり評価されない将軍。

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