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第77話 ホームレスと皇帝が世界の今後を語り合う

「それでは乾杯!」

「乾杯」


 さわやかなカクテルが俺の口に広がる。ハーブの味によってさわやかなものになったそのカクテルは、強い度数と共に俺を心地よい気分にさせてくれる。


「良い飲みっぷりだ」


「両国の今後の友好を願ってですからね。陛下」


「それでこそ、異界の英雄だ」


 だが、あまり酔いつぶれてはいけない。俺は試されているのだからな。


「それでは陛下。本題と行きましょう」


「うむ」


「さきほどの質問はあくまで会話のきっかけに過ぎないものでしょう。陛下の中では答えが出ているように聞こえました」


 そう問い詰めると彼はふふっと笑う。


「ああ、私はニコライの状況分析を信頼している。キミは間違いなく異世界から来た男だろう」


「では、何を聞きたいのですか?」


「おそらく、お主はニコライをキミしか知り得ない知識と工夫によって破ったのだろう。ローザンブルクの最高傑作をまさか失うとは私も思っていなかった」

 その言葉には悔恨がにじんでいる。

 ああ、そうだ。前世知識がなければ、あんな怪物と正面からは戦えなかったはずだ。もちろん、妖精の加護も大きいんだが。


「そして、これからヴォルフスブルクはキミの知識を使って大きな発展を遂げるだろう。キミの頭脳はおそらく200年から300年以上先の未来を生きているのだからね。ローゼンブルクとしてはこれ以上、無理に争いたくはないよ」

 よし、大陸最強の陸軍はこれで敵に回ることはなくなった。これは大きい前進だ。


「その言葉を聞けただけで、光栄に思います」


「これで東側の安全は確保されたというわけだな。ヴォルフスブルクは、覇権を目指して動き始めるのかな?」


「我が国は、国際秩序の安定を第一に考えております。覇権などは考えておりません」


「キミは教科書通りのコメントがうまい。実に素晴らしいキレモノだ」


「ありがたき幸せ」


「しかし、キミは大事なことを忘れているのではないかな?」


「大事なことですか?」


「まだ、思いつかないならいい。だが、キミの持つ知性は諸刃(もろは)の剣にもなるんだよ。すぐれた知性はそれだけで、持ち主の手すらも傷つけるかもしれない。我が甥のニコライ=ローザンブルクがはまったようにな?」


「ご忠告ありがとうございます。気をつけます」


 実際、キレモノが原因で破滅した国家は多い。気をつけなくてはいけないな。


「うむ。だが、キミのカクテルの注文でやりたいことはわかるよ。次は、南方のマッシリアを狙うのだろう。キミの手腕に期待しているよ」

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