第66話 ホームレス、魔剣を召喚する
その妖精の声に導かれて、俺は少しずつ力を解放した。
『センパイはどうしたいんですか? この世界でなにをしたいんですか?』
そんなこと決まっているだろ。俺は……
「向こうの世界ではずっと後悔をしながら生きてきた。ずっとあの時こうしておけばよかったって……別の道を歩けばよかったってさ……その結果が家族にまで見放されて、ホームレスだった。だから……」
『だから?』
こっちの世界に来てからのことが走馬灯のように流れていく。
※
『いまから、あなたを大好きなゲームの世界にご招待します。山田邦和さん! そして、大活躍してくださいね』
「どうしたんだい、少年? なにか苦しいのかい?」
「がんばりましょうね、センパイ! 私のことはとりあえずターニャとでも呼んでください」
「アルフレッド! 俺の撃ち漏らした敵を頼むぜ!」
「了解」
「ありがとう、クニカズ様。そう言ってもらえると救われた気分になるわ。ずっと悩んでいたのよ。私みたいな小娘が国の頂点になったままでいいのかなって」
「ええ、ぜひとも。もしよろしければ、私の寝室でも構いませんよ?」
「クニカズ大尉、うまくいきましたね!」
「ああ、すごいよ、大尉は輸送系の天才だな!」
「開けてください。夜に女が男の部屋に入るのは失礼だとは承知していますが、あなたに大事な話があるんです。私の気持ちを伝えたいんです」
「すばらしい戦略眼だ、クニカズ大尉」
「まさに、我が国の救世主ということだな」
※
この国の皆は俺なんかに期待をかけてくれていた。今までならその期待の重さに俺は逃げていたかもしれない。
だけど、俺はヴォルフスブルクの救世主なんだ。ここで逃げたら一生後悔する。生まれ変わってまで、転生してまで、逃げ続ける人生は送りたくない!!
「俺はここで仲間たちと生き続けたい!!」
そう思った瞬間、俺の目の前にダンボールでできた剣が現れた。
「なんだこれは?」
そのダンボールの剣は、まるで吸い付くように俺の手になじんだ。
「そのような1本の紙の剣で何ができる!! 死ね、異界の英雄よ」
ニコライ=ローザンブルク。
あんたは本物の英雄だよ。家柄も良くて、若い時から将来を嘱望される才能があって、大国の将軍としてみんなから尊敬を集めている。
それに比べて、俺は出来損ないさ。
でもさ、俺がここで負けたらお前らはすぐにヴォルフスブルクみたいな小国踏みつぶすんだろ?
そんなことは許さない。
俺の居場所を、みんなとの絆を、守り切る!
偽物が本物に勝てないなんて決めつけていたのは俺自身なんだよ!
「なんだ、あの紙の剣からとてつもない魔力と光が……私の知らない魔力だとでもいうのか!?」
「さあな。俺でもわからないよ。でも、俺はここでお前を止める」
ニコライの立派な剣と俺のダンボールの剣はぶつかり合う。周囲には、魔力による衝撃波が発生していた。
「まさか、皇族に伝わる聖剣が……押されているだと!?」
「英雄、俺はお前を超えていく!!」




