第62話 ホームレス、大戦果を挙げる
俺たちは夜の奇襲を終えて、無事に要塞に帰還する。
「クニカズ少佐!! アルフレッド閣下! みなさん、ご無事ですか?」
リーニャ少佐が俺たちをすぐに出迎えてくれた。要塞も夜間攻撃は、発生していないようだな。よかった。
「ああ。20人誰もかけていないぞ。すべてうまくいった」
「ああ、完璧な作戦だったな。すべてはクニカズのおかげだよ」
アルフレッドは満足そうにうなずいた。
こちらの被害はゼロ。それに対して、敵は総攻撃用に用意していて物資の大部分を失ったはずだ。
俺たちの作戦は、夜間に隠れて空中から補給基地に近づいて、火炎魔力ですべてを焼き払うシンプルな作戦だ。
そして、今回は敵の人的な被害よりも物質的な被害がでるように企画していた。
物資を失えば、ローザンブルクの戦略は完全に崩壊する。
火力で要塞を無効化し、物量で押し切れなくなれば、チェックメイトだ。
近世くらいの文明力なら大軍を動かすのに一番の問題は補給関係だ。
高速で移動できる列車や航空機、トラックは使えない。最速の移動手段は馬で、馬車で輸送できる物資の総量は機械と比べると限りがある。
だから、物資を喪失すれば、兵力を失う以上に立て直しが難しくなる。
産業革命が起きていない世界だから、砲弾の量産は限界があるからな。
おそらく、昨夜の攻撃で第2回総攻撃のために用意された物資の半数は喪失したとみていいだろう。
それも敵軍にすれば、空中浮遊魔力によって空から奇襲されるとは考えていない。
まるで、天から降り注ぐ光によってすべてを奪われたとか神の怒りとか思っているんだろう。
「アルフレッド、今夜も一気に攻撃してしまおう。4大補給基地をすべて無力化すれば、向こうも外交のテーブルに出てくるしかない」
「ああ、俺たちがどうやって攻撃しているかまだ分かっていないだろうからな。対策を立てる時間を与えずに一気に物資を葬り去る」
俺たちは、第2波攻撃を決意した。これがうまくいけば、戦争は終わる。
俺たちの勝ちだ。
「すごいです、クニカズ少佐は……航空戦力による敵国内部の防御が弱い補給基地への奇襲攻撃。こんな作戦を立案して実行に移せるのはあなたにしかできない。この"神の戦鎚"作戦は、たぶん歴史に残ります。軍事の歴史を数百年縮めましたね」
俺はそんなに褒められると恐縮してしまうけどね。アルフレッドもいたずらっ子のように同意する。
「リーニャ少佐……ここでは終わらないぞ。たぶん、クニカズの頭の中にはもっとアイディアや知識があるんだ。まさに、知の泉そのものだ」




