第57話 ホームレス、計画する
「クニカズ、大丈夫か?」
アルフレッドの声で目が覚める。白い天井が見えた。さっきまで屋上にいたはずなのに……
ここは医務室か。どうやら、誰かが運んでくれたらしい。
「大丈夫だ、アルフレッド。敵の攻撃は!? 俺は何時間寝ていた?」
緊張が解けて、倒れ込むように眠りについた記憶だけはあった。
「だいたい6時間くらいだ。敵の攻撃は一度止んでいる。要塞の前面に陣取っているがな、しかし、あれだけの魔力を使ったんだ。どこかに痛みや動かないところはないのか??」
たしかに、この世界に来てからは初めて無理をした。でも、手足は問題なく動くし、頭の痛みもない。視力も聴力も問題なさそうだ。
「ああ、どこにも痛みはない。疲れも寝たら吹っ飛んだぜ」
「信じられない。あれほどの魔力による弾幕を作ったんだぞ。それもひとりで。1週間から1か月は動けなくなるのが普通なのに」
「でも、こんな感じでいけるぜ! さあ、司令官室で情報を確認しよう。俺たちの計画の第一段階は完了したんだ」
俺がしっかりとした足取りを見せると、アルフレッドは少しあきれていた。
※
廊下ではリーニャ少佐が待っていた。
「クニカズ少佐!! 大丈夫なんですか。どうして歩けるんですか!?」
どうやら心配して様子を見に来てくれたんだろうな。
「ああ、なんか寝たら回復したよ。心配ありがとうな」
「いや、心配なんかしていませんでしたけど……だって、クニカズ少佐はイレギュラーですから。そうだってわかってましたよ。でも……」
おや、いつもは冷静な彼女が珍しく取り乱しておられる。
「よかった。あなたが無理をして倒れたと聞いて、やっぱり心配したんですよ?」
それも、俺を心配してくれてのことだからな。なんだか、申し訳なくなる。
「もう大丈夫だ。少佐が心配してくれたおかげだよ」
そう言って、俺は彼女の頭をわしゃわしゃとなでた。
「えっ……」
彼女はとても恥ずかしそうにうつむく。そのゆっくりとした動作は、まるで少女のようだった。少佐もこんな女の子みたいな仕草できるんだな。
たしかに、ちょっと失礼かもしれない。だが、彼女は大事な仲間だ。
俺を心配してくれていた仲間にはちゃんとお礼を言いたい。
「リーニャ少佐とは最初は同学年のライバルとして競ってきたけどさ、今となっては最高の相棒だよ。今回の作戦だって、きみがいないと成立しなかった。心配かけてごめんな。でも、今回はリーニャのためにも、勝つよ」
「最強の陸軍国家にですか?」
「ああ、アルフレッドだっている。こんなに優秀な人たちに支えられたら負けるわけないだろ。作戦を次のステージに進めよう」




