第50話 ホームレス、ベストを尽くす
「完全に中央から妨害されているな」
俺は苦笑いしながら、途方に暮れる。現状の戦力で、世界最強の陸軍を相手にしなくてはいけないと考えると絶望すらある。
今回の件が、俺の杞憂だったら最高なんだけどな。
「すまない、クニカズ。父上のせいで」
「いや、アルフレッドが謝ることはないよ。親と子供は別人格だしさ。それに俺たちが対立したり、ギクシャクしたりしたら勝てるいくさも勝てなくなる。女王陛下は、俺たちふたりを信頼してくれているんだ。全力を尽くそう。むしろ、俺たちに全権を与えてくれたんだから、中央からの援軍が来ないだけで、あと国際法の枠組みの中でという条件はつくけど、自由にさせてもらえるんだからな」
「それは、そうだが……だが本気で勝つつもりか!? 数、装備、練度、指揮官。すべてが最強の国家だぞ」
「全面戦争で勝つ必要はないんだ、アルフレッド。俺たちが、この戦闘を全面戦争にしてはいけない。勝てるわけがない。だからこそ、局地戦に抑えたうえで、負けなければいい。戦争が始まれば、女王陛下がやってくれる」
「どういうことだ?」
「俺たちは敵をここに引きつけて、あとは守っていればいい。戦闘で負けても、政治で勝てばいいんだからな。作戦は一部修正しなくてはいけないが、大筋は俺たちが練ったものを使おう。リーニャ少佐、いくつか想定しておきたい条件があるんだが……国際法上、問題がないかを確認してほしい」
「わかりました」
「アルフレッド。戦闘が始まったら、俺は魔力で要塞の守備に回る。あとは、専守防衛でいこう。まぁ、本当に戦争になると決まったわけではないけどさ」
準備が無駄に終わることを祈っている。中央の妨害があるとすれば、俺たちの思惑通りにはことが進まない可能性が高くなる。
ゲームの時は、コンピュータという理論の権化と戦っていたわけだが、生身の人間は感情に邪魔される分、複雑怪奇だぜ。
※
「将軍、よろしいのですか?」
「大丈夫だ、皇帝陛下からは許可はいただいている。今回は、指定してある箇所を爆発させる。そして、それをヴォルフスブルク側の攻撃だと偽装しておけばいいのだ。最初に攻撃をしてきたのは向こうだとすれば、大義名分はこちらにあるだろう?」
「な、なるほど。しかし、正式な調査でもおこなわれれば、我らの偽装工作だとすぐにばれる心配はありませんか」
「大丈夫だ。調査が行われる前に、ヴォルフスブルクは地図から消滅している。あとはどうにでもなる」
「わかりました、攻撃開始!」




