第47話 ホームレス、陰謀に巻き込まれる
―ヴォルフスブルク王国 王都(ポール大佐視点)―
「よく来てくれた。ポール大佐」
「はっ!!」
私は、とある要人に招集されてここに来た。政府の要人がよく使う会員制のカフェだ。ここに呼びだされたということは、今回は重要な話らしいな。
「前回の軍事学校でおこなわれた机上演習の件は、話を聞いたよ。あの自称"異世界から来た英雄という名のペテン師"にうまくやられたらしいな」
「も、申し訳ございません。閣下に期待されておりながら、あのような怪しい者に敗れてしまい申し開きもありません」
「うむ。お主は、ヴォルフスブルクの戦略の最高権威という名声にあぐらをかき、油断したうえであのような一方的な屈辱を受けた。顔に泥を塗るようなことをされて、わしも怒りに震えておったところだ」
そういうと、彼は私の顔をにらみつけて威嚇する。
「ひぃ」
「すでに、お主の作戦課長更迭は決まっている。どこの部隊に配属されたいかな? 学生に下克上された作戦の権威などが欲しがる部隊がいると思うか? お主の経歴は、あの一瞬ですべて灰になったんだ」
その言葉は、私を絶望の淵に叩き落すのに十分だった。
今まで同期の中でも一番早く昇進し、エリートコースを歩んできた自分のキャリアが音ともに崩れ落ちていく。
いやだ。
あんな奴のために終わりたくない。
「閣下。どうか、もう一度、ご慈悲を……いままで国家のために尽くしてきたのです。一度の……それも、ただの演習での失敗を理由にすべてを奪われるのは、あまりにもひどすぎます。戦場で大きな失敗をしたのなら武人として、死をもって責任を取りますが。このような不名誉なままでは、死んでも死にきれません」
泣きつきながら私は閣下に許しを請う。プライドはすべて投げ捨てて、彼に泣きつく。
「ああ、今回のお主の更迭は、女王陛下が考えたことだ。わしもそれは国家の功労者であるポール大佐には行き過ぎた賞罰のように思う」
「な、ならば……」
ひとつの灯りが見えた。必死にそれをたぐり寄せる。
「ああ、だからお主は、女王陛下ではなく、わしに忠誠を誓え。わしの手足となって働くのであれば、次回の人事異動で中央に戻してやる」
「あ、ありがとうございます!! 閣下――私は、宰相閣下にすべてをささげます。たった今から私はあなたの家臣です」
私がそう言うと、宰相閣下は「うむ、それでいい」と笑った。
「では、私はいったい何をすればいいのでしょうか?」
「うむ。まずは、我らが共通の敵を倒すために、準備を整えよう。クニカズ・ヤマダを排除するために動き始めるのじゃ」




