第39話 ホームレスと妖精(しっとりイチャイチャ)
俺たちは食事を済ませて、また散歩に戻る。衣装は違えど、ここの人たちも普通に生きているんだよな。なんだか、少しずつこの世界で生きている実感がわいてきてしまった。
最初は、ゲーム世界で自分が生きているなんてなんだか現実感なかったんだよな。
あれよこれよといつの間にか、神父様に拾われて、異世界から来た英雄に祭り上げられて、軍事大学の学生になっていたよ。
とはいっても、ヴォルフスブルク王国が絶体絶命の状況には変わりはない。ザルツ公国との国境紛争は未然に防げたので、多少の余裕はできたが、常に滅亡寸前だ。
『そうですよ。それにセンパイは、国内では異世界から来た救世主です。いくら大尉という身分でも、軍事的に中心人物になりますからね。責任重大ですよ?』
「そうプレッシャーをかけるなよ」
『でも、私は信じていますよ。あなたならきっとこの困難も、乗り越えることができると……』
「どうして、そんなに俺を信用しているんだ? お前は??」
ずっと疑問に思っていた。前世での俺は、どちらかといえば周囲の信頼を裏切ってばかりだったダメ男なのに。
『私とあなたは、ここに来てからずっと繋がっているんですよ。すべてわかっています。だからですよ』
いつもとは違ってまるで聖女のような声になっていた。
「じゃあ、どうして俺を選んだ? もっと聖人みたいな人の方が良かったんじゃ?」
『どうでしょうね? 私はよくわからないんですよ。どうして、私が生まれたのかも……どうして、この世界とつながっていたのかも……たしかに、人間の思いが何度も転生みたいなリサイクルを繰り返すダンボールに宿ったのはわかるんですけど……そもそも、なぜ私のような人格になったのか。異世界とのリンクを可能になっていたのかも。それはすべて、神のみぞが知るってやつで』
「なら、他の人でもよかったんだよな?」
『それは、そうなんですけどね。センパイしかいないと思ったんです。たぶん直感なんですけどね。この世界のことを多分一番よく知っている人だったし。それに……』
「それに?」
『やっぱり、恥ずかしいから言えません。もう少し、時間をください。でも、あなたじゃないとダメだと思ったんです。いえ、あなたしかいないと……ダメだったんですよ。それだけはわかってくださいね』
「ああ、ありがとう。そう言ってくれるのは、ターニャだけだよ」
『どうでしょうね? センパイの好きなライトノベルのように、ハーレム作るつもりじゃないんですか』
ちょっとだけ、むくれる自称"後輩"を俺は、頼もしく思っていた。
たぶん、こいつと一緒なら大丈夫だ。
俺たちはこの世界を変えていく。