第37話 ホームレスの休日(イチャイチャ回)
「ポール大佐の件、聞いたか?」
「ああ、あの異世界から来た英雄に大敗したんだろう?」
「うん。机上演習で指揮官まで失うほどの判定を受けたらしい」
「それ、だいじょうぶなのかよ……」
「大丈夫なわけないだろう。大佐は、演習前に『本当の戦いを教えてやる』とか言っていたらしいぜ? それなのに、自慢の騎兵隊を壊滅させられて……」
「もう、職を辞すしかないだろうなァ」
「精神的にも追い詰められていてずっと家に閉じこもっているらしい」
※
「すごいな。あのクニカズ大尉のチーム……これで机上演習10連勝だぞ!?」
「アルフレッド大佐が作った連勝記録が8連勝だよな。それですら、無理といわれていたのに、安々と記録を塗り替えやがった」
「俺たちみたいな凡人じゃ、あの人と同じ領域にすら立てない」
「いったい、何年俺たちよりも進んでいるんだ?」
「それにさ、リーニャ大尉はまだしも、アリーナやクリスタは正直、下から数えたほうがいいくらの成績だったじゃないか!? なのに、今のふたりはまるで別人だ。おそろしくなるほど、クニカズ大尉は人を使うのがうまい」
※
「って、みんな先輩のことをほめていましたよ!!」
ダンボールの妖精は、俺と精神でつながっているらしい。だから、胸ポケットに隠れていても、脳に直接声を届けることができる。
今日は講義の休みの日。学生は日曜日だけは、自由に外出が許されているので、俺はベンルの街を散策していた。
「あんまり恥ずかしいことを言うな。にやけちゃうだろ」
「え~センパイ、きもーい」
ちなみに、ターニャは本当は人型で一緒に歩きたかったそうだが、俺が断固拒否した。知り合いがうろついているなかで、かわいい女の子と一緒に散歩なんかしていたら一瞬でうわさが広まってしまう。
「えっ、センパイ……今、私のことをかわいいって?」
しまった。こいつと俺の精神は(以下略)。だから、どんなことを考えているのかすぐに伝わる。
「ま、まぁ、普通に考えたら、ターニャって美少女だし。俺は当たり前のことを言っているだけだ……」
「う、ううう。そんなにストレートにほめてもらえるなんて思わなかったから、すごく恥ずかしいです」
「俺だって恥ずかしいよ。なんだよ、この罰ゲームみたいなものは」
「じゃあ、罰ゲームついでに、デ、デートしませんか。あそこのレストランは個室があるから目立たないし、おいしいデザートが評判なんですよ。センパイも初給料が出たんだし、いいじゃないですか?」
「どこで知った情報だよ、それ。まぁいいけど」
「やった!! ちなみに、さっきの誘い方はセンパイが好きなラノベのセリフをパクりました」
「だから、そんなに胸に響くのかよ」
※
「(センパイとデートしたいから、頑張って調べてこっちに誘導したなんて、恥ずかしすぎていえるわけないじゃないですか)」